「生理前になると頭痛がする…」対処法・セルフケアを紹介

公開日 2022-04-07 更新日 2022-04-07

記事監修医

島袋朋乃先生

産婦人科医師。平成28年に旭川医科大学医学部を卒業後、函館五稜郭病院、釧路赤十字病院を経て、現在は産婦人科医として市中病院で臨床経験を重ねる。総合病院やクリニックで産科、婦人科、生殖医療に携わる。日本医師会認定産業医。日本産科婦人科学会、日本産科婦人科内視鏡学会、日本生殖医学会所属。

「毎回、生理前になると頭痛がする……」「生理前の頭痛にいい対処法ってあるの?」そんなお悩みをお持ちの女性も多いはず。

生理前に頭痛が出るという女性は多く、実際に男性よりも女性のほうが、頭痛が起こりやすいことがわかっています。これは、女性ホルモンの変動が頭痛に関連しているためだと考えられます。 生理前の頭痛に対処する方法はありますが、気をつけなければならないのが、頭痛のタイプによって対処法がまったく反対になるということ。

頭痛には大きく分けて「偏頭痛」と「緊張性頭痛」の2つのタイプがあり、偏頭痛は「冷やす」が有効なのに対し、緊張性頭痛は「温める」が有効なのです。
つまり、正しく生理前の頭痛に対処するためには、自分の頭痛がどちらのタイプなのかを見極めることが大切です。

そこで、この記事では、生理前に偏頭痛と緊張性頭痛が起こるメカニズムを解説し、それぞれの特徴と対処法をわかりやすくご紹介します。
つらい頭痛に正しく対処できるよう、ぜひ参考にしてくださいね。

生理前はエストロゲンと関連した「偏頭痛」が起こりやすい

頭痛イメージ画像

まずは、女性に特に多いとされる「偏頭痛」についてご紹介します。

生理前に偏頭痛が起こるメカニズム

生理前の頭痛の多くは、偏頭痛である場合が多いです。偏頭痛は、とくに女性ホルモンとの関連が示唆されているためです。

まず、偏頭痛の有病率を男女別にみると、男性は3.6%なのに対し、女性は12.9%となっています。こうした男女差は、女性に生理がはじまる12歳前後から大きくなっていき、閉経以降は女性の有病率が下がっていくことがわかっています。
このような結果から、女性ホルモンが偏頭痛に大きく影響していると考えられているのです。

生理前に起こる偏頭痛は、「月経時偏頭痛」と呼ばれます。

生理前には女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)量の変化に伴い、脳内の神経伝達物資のバランスが変化することがわかっています。こうした神経伝達物資の変化によって、神経の炎症や脳内の血管拡張が起こり、偏頭痛につながっているのです。

偏頭痛ではドクンドクン、ズキンズキンといった脈打つような拍動性の頭痛が生じますが、これは脳の血管の拡張によって、血管まわりの神経が刺激されて起こるものと考えられています。

生理前に起こる偏頭痛の特徴

偏頭痛の特徴としては、以下があげられます。

<偏頭痛の特徴>

  • 頭の片側が痛む場合が多い(40%は両側が痛む)
  • ドクンドクンと脈打つような痛みを感じる
  • 寝込みたいほどの頭痛を感じる
  • 体を動かすと悪化する
  • 吐き気や嘔吐を伴うことが多い
  • 光や音に過敏になる

生理前のホルモン変動によって生じる偏頭痛は症状が重い場合が多く、日常生活に支障をきたしてしまうことも少なくありません。

偏頭痛が起こる期間とタイミング

偏頭痛がいつから(生理の何日前から)出るものなのか、気になる方もいるかもしれません。他の病気との見極めのためにも、偏頭痛が起こりやすいタイミングを把握しておくことは重要といえるでしょう。

偏頭痛が起こりやすいタイミングは、一般的に排卵直後と生理の2~3日前。これは、エストロゲンが急激に減少するタイミングです。このタイミングで特に偏頭痛がひどくなるようであれば、月経時偏頭痛といえるでしょう。

生理前に繰り返す偏頭痛への対処法・注意点

冷やすイメージ画像

偏頭痛は脳内の血管の拡張によって起こる頭痛のため、「冷やす」が正解です。冷やすことで血管の拡張を抑えられ、痛みを軽減できます。

偏頭痛が出たときはなるべく安静にし、保冷剤などで頭部を冷やしてみてください。また、血流を抑えることで痛みが軽減するため、こめかみを指で押さえてあげると痛みが軽減する場合があります。
運動や入浴などは偏頭痛を悪化させてしまうため控えましょう。

また、痛みがひどくなる前に頭痛薬を使用することも有効です。ただし、頭痛薬を用いる場合は痛みが軽度のうちに服用することがポイント。使用が遅くなると、薬が効きにくくなってしまいます。
頭痛薬の飲みすぎも薬が効かなくなる原因になるため、痛み止めの使用は月10日程度にし、頭痛を感じたら早めに飲むようにしましょう。

肩こりを伴う頭痛はPMSに関連した「緊張性頭痛」かも

次に、肩こりやストレスによって生じる「緊張性頭痛」についてご紹介します。

生理前に緊張性頭痛が起こるメカニズム

生理前には、緊張性頭痛が起こる場合もあります。 緊張性頭痛とは、肩こりなど筋肉の緊張から、首や頭蓋骨まわりの筋肉内の血管が収縮して起こる頭痛のこと。偏頭痛は脳内の血管が「拡張」して起こるのに対し、緊張性頭痛は血管が「収縮」して起こるのが大きな違いです。

生理前には女性ホルモンの変動によってPMS(月経前症候群)症状が起こることがありますが、実は「肩こり」もPMS症状のひとつ。
肩こりが悪化すれば緊張性頭痛も起こりやすくなり、PMSに伴って生理前に頭痛が起こるというわけです。

また、緊張性頭痛はストレス(緊張)によっても起こりやすいとされています。ストレスは自律神経のバランスを乱し、交感神経を優位にして筋肉を硬直化させてしまうのです。
そのため、PMDD(月経前不快気分障害)のように精神症状が強く出るタイプの方は、そこからも肩こりや頭痛につながりやすいといえるでしょう。

緊張性頭痛は筋肉の緊張が原因のため、長時間同じ姿勢でいることや、過度な疲労によっても頭痛が悪化しやすくなります。

生理前に起こる緊張性頭痛の特徴

緊張性頭痛の特徴としては、以下があげられます。

<緊張性頭痛の特徴>

  • 頭全体や首、後頭部に圧迫感を感じる
  • 頭の両側を締めつけられるような頭痛を感じる
  • 首や肩まわりのコリを感じる
  • めまいを伴うことがある

緊張性頭痛の場合は、偏頭痛のようなズキンズキンと脈打つ痛みはありません。肩まわりのコリを伴うことが多く、体を動かしても悪化しないことが特徴です。

偏頭痛と比べると頭痛の程度は軽い場合が多く、日常生活に支障をきたすことは少ないといえます。血流の悪化から、めまいを感じる場合もあります。

緊張性頭痛が起こる期間とタイミング

PMSに伴う緊張性頭痛の場合は、PMS症状が生じる期間と連動して起こる可能性が高いといえます。

一般的に、PMS症状が生じる期間は、排卵から生理がはじまるころまで。生理周期でいうと、生理開始から約2週間後が排卵日で、排卵から約2週間後に次の生理がはじまります。
つまり、生理前2週間程度が、PMS症状の出やすい期間といえます。この間には、PMSによる肩こりや精神的ストレスから、緊張性頭痛が起こりやすいといえるでしょう。

ストレスの影響で起こっている緊張性頭痛の場合だと、疲れがたまりやすい夕方以降の時間帯に痛みを感じる場合が多いです。
また緊張性頭痛は生理痛などのストレスによって、生理中も続く場合があります。

肩こりを伴う緊張性頭痛への対処法・注意点

ストレッチイメージ画像

緊張性頭痛の場合は、「肩まわりを温めて血行をよくする」が正しい対処法です。

首回りを蒸しタオルなどで温める、ストレッチや軽い運動をする、全身浴で温まるといった方法を取り入れてみてください。
また、ツボ押しも血流の改善に効果的です。以下のツボを、気づいたときに押してみてはいかがでしょうか。

<緊張性頭痛に役立つツボ>

●天柱(てんちゅう)
……首と頭蓋骨の付け根あたりにあるツボ。首の骨の両側にある筋肉の外側、くぼみ部分を指でじんわり押します。頭痛や目の疲れを軽減します。

●百会(ひゃくえ)
……両耳と鼻の延長線上、頭頂部にあるツボ。頭痛を軽減し、自律神経を整える効果があります。

●肩井(けんせい)
……首から肩のラインの中央、肩の筋肉の中心にあるツボ。頭痛や肩こりを軽減します。

※ツボを押すときは、指のはらで垂直に、3~7秒かけてゆっくり押します。気持ちいいと感じるくらいの強さで押しましょう。

緊張性頭痛には、痛み止めのほか筋弛緩薬(きんしかんやく)も有効です。筋弛緩薬は肩こり用として市販薬も販売されていますが、痛みがひどい場合には脳神経外科や内科に相談するといいでしょう。

ただし、頭痛と同時にPMS症状がみられる場合には、婦人科への受診をおすすめします。婦人科でも痛み止めを処方してもらえますし、PMSに対し適切な治療をすることで、頭痛も軽減できる可能性があります。

なお、ストレスが緊張性頭痛の原因となっている場合には、根本のストレスを解消することも重要です。できるだけリラックスできる時間を設け、日頃のストレスを解消するように心がけてくださいね。

生理前の頭痛はタイプを見極めて正しいケアを

生理前に起こる頭痛には「偏頭痛」「緊張性頭痛」の2つのタイプがあり、正しく対処するにはタイプの見極めが大切です。

一般的には、生理前の頭痛には偏頭痛が多いとされていますが、PMSによる精神症状などから緊張性頭痛が生じている可能性もあります。
偏頭痛の場合は、患部を冷やして安静にすることを意識しましょう。頭痛薬は痛みが軽度のうちに服用したほうが、効果が出やすくなります。
緊張性頭痛の場合は、首や肩を温めたり動かしたりして、肩まわりの血行をよくすることで痛みを軽減できます。ストレスが関与している場合には、根本のストレスにも対処しましょう。

なお、どちらの頭痛もホルモンバランスの変動に伴うものですので、日頃からホルモンバランスを整えることも大切といえるでしょう。頭痛のほか、PMS症状がつらい場合には、一度、婦人科に相談してみてくださいね。

【参考】

Sakai F, Igarashi H : Prevalence of migraine in Japan : a nationwide survey. Cephalalgia 1997;17:15-22.
Lipton RB, et al : Migraine prevalence, disease burden, and the need for preventive therapy. Neurology 2007; 68:343-349.
片頭痛|(疾患・用語編) 頭痛|神経内科の主な病気|日本神経学会
「生理前に頭痛が起こる」という人へ。月経周期と片頭痛の関係を知って早めのセルフケアを!| 痛みに効くコラム| ナロン | 大正製薬
性別や年齢と頭痛の関係|頭痛の要因を学ぼう|頭痛オンライン - 沢井製薬
頭痛を和らげるツボ|頭痛のはなし|EVE(イブ)【エスエス製薬】
片頭痛を知ろう | 神奈川県川崎市の総合病院:総合新川橋病院
肩こり・首こり | 女性の健康推進室 ヘルスケアラボ|厚生労働省研究班監修
PMSはいつから起こる? | PMS(月経前症候群)ラボ

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