みなさんは学校での性教育についてどのくらい覚えているでしょうか。

そのときの性教育の内容は十分だと感じましたか？
学校で学んだ性教育は、その後役立ったと思いますか？

今の性教育も、昔とはさほど変わりはないかもしれません。しかし、スマートフォンやパソコンの普及によって、インターネット上のあらゆる性の情報に触れる機会が増えました。

その結果、アダルトビデオなどに見られるような、誤った性の情報に影響されるリスクも増えています。これには暴力的なものも多く含まれます。

間違った性の情報は、性的同意、性感染症のリスク、避妊についてないがしろにしてしまうことにつながるため、安全で正しい性教育を求める教育者や保護者も少なくないようです。

この記事では、イギリスで2人の息子を育てる母親によって開発された性教育アプリ「Kama（読み：カマ）」をご紹介します。

経験やジェンダーを問わず安心して使える性教育アプリ

Kamaは、コロナ禍の2020年にイギリスで誕生した性教育アプリ。 セクシャル・プレジャー（自分の性器を刺激し気持ちよくなること）に精通した専門家たちによって監修された、豊富なチュートリアル動画が魅力です。

パートナーの有無、ジェンダー、年齢、セックスの経験に問わず、すべての人にとって役立つセクシャル・プレジャー・コンテンツがそろっています。

現在（2022年6月時点）、17歳以上であれば誰でも無料でアプリをダウンロードすることができます。動画は日本からも視聴可能です。

創設者は、ユニークな経歴をもつ母親

Kamaは、フランス出身のChloe Machintoshさんによって誕生しました。

出典：Chloe Macintosh Founder & CEO of Kama | The Dots

彼女は、イギリスの大手インテリアブランドMade.comの共同創業者としても知られ、Soho Houseのチーフクリエイティブオフィサー（CCO）を務め、建築の巨匠であるノーマン・フォスター氏と働いた経歴も持つなどのユニークな経歴を持っています。

また彼女は過去12年間以上、セクシュアリティやインティマシー（愛情行為）についての研究をし、専門家のアドバイスを求め世界中を飛びまわっていたそうです。

ロックダウン中の二人の息子との会話が開発のカギに

コロナウイルスでロックダウン中であった2020年に、Kamaアプリの開発が始まりました。

この開発にもっとも大きな影響を与えたのは、Chloeさんの2人の息子の16歳のFelixさんと14歳のEliottさんだったそう。

それまでは寄宿学校に通うため実家をはなれていた彼らも、ロックダウン中は家で過ごす時間が増えたため、親子同士の会話が増え、それがセックスポジティブな家庭環境作りにつながったようです。

Chloeさんの息子たちも、初めはセックスについて話すことをためらっていたこともありましたが、次第にChloeさんに質問をするまでになったそうです。

リアルな10代の会話をもとに作られた性教育コンテンツ

Kamaの数あるコンテンツの中でも、16歳以上の若いユーザー向けに作られた「ファースト・タイム・セックス・スターター・キット」は、Chloeさんの息子、甥っ子、息子の友人たちとの会話から生まれたアイデアだったそうです。

また、彼女は普段からメッセンジャーアプリのグループ機能を使って、彼らがセックスについて「知っておきたかったこと」または「これから知りたいこと」を彼女とシェアできる場所を作り、彼らが自由に意見を交換できる環境を提供しています。

そうして、実際の10代の声を聞きながらKamaのコンテンツ作りにつなげられていることについて、彼女は感謝し、それは「特権」だったと語ります。

Kamaを通して、信頼できる率直な性教育コンテンツを発信することによって、10代のユーザーの力になることを彼女は願っています。そして、友達のみに限らず保護者や兄弟とも、オープンかつ意識的に、セックスやプレジャーについて話してほしいと言います。

ユーザーの関心に合わせたコンテンツを提供

Kamaは、ユーザーそれぞれの悩みや関心に合わせたコンテンツを提案してくれます。

ダウンロード時に、「初体験」「オーラルセックス」「射精」「バイブレーター」などのさまざまなトピックから興味のあるトピックを3つ選択すると、選択したトピックに関連したコンテンツが表示されます。

出典：Kamaアプリ

こちらでは、Chloeさんが息子やその友人からヒントを得て制作した「ファースト・タイム・セックス・スターター・キット」についてご紹介します。

10代のセックス未経験者に向けた「ファースト・タイム・セックス・スターター・キット」

「ファースト・タイム・セックス・スターター・キット」は、10代のセックス未経験の人や経験の少ない人が、動画で正しくセックスについての知識を得ることを目的に作られています。

出典：Kamaアプリ

全16本の動画で構成され、1つの動画あたりの長さは、1〜7分程度です。

教科書に見られるような堅苦しい言葉をあえて使わずに、実際の10代の会話で使われるような言葉で、短く簡単に学ぶことができます。

「同意のとり方」「安全なセックスの方法」「処女膜についての誤った情報」「女性器の触り方」など、学校の授業では教えてくれないけれども、初体験前に知っておきたい情報ばかりです。

動画に出演しているのは、Chloeさんの長男のFelixさんとセックスコーチのAaronさんです。

「Aaronさんなら、彼女の洋服を脱がすのを手伝いますか？それとも自分で洋服を脱いで、彼女にも自分で脱いでもらいますか？（筆者翻訳）」（Felixさん）

「もし彼女が痛みを少し感じていて、体が少し抵抗しているように見えるとき、どうしたらいいですか？（筆者翻訳）」（Felixさん）

動画内の2人はとてもリラックスした様子。さまざまな疑問をAaronさんがわかりやすく解説しています。

Kamaをおすすめする5つの理由

1.世界トップレベルの専門家たちのアドバイスを受けられる

Kamaのコンテンツの制作には、世界の有名なセックスやその他の分野の専門家たちが携わっています。

彼らの知識はセックスやトラウマ治療から婦人科の悩みまで広範にわたり、ユーザーはヒーリング、化学、教育、スキル上達法などの幅広いアドバイスを受けることができます。

2.世界の性教育に関心のある人と繋がることができる

Kamaのオンラインプラットフォームでは、性教育に前向きで、知識の豊富な人々と交流することができます。

ライブイベントや、オンラインディスカッション、ワークショップが定期的に開催され、Kamaのユーザーはどこからでも参加することができます（参加チケットは有料）。イベントを通して、世界のセックスやプレジャーに関する会話を盛り上げるムーブメントに参加できます。

3.すべての人のためにつくられた性教育コンテンツ

Kamaが提供するコミュニティとは、恋人の有無、ジェンダー、年齢、セクシュアリティに問わず、誰もが安全な環境で知識を得ることができる場所です。

また、すべてのボディタイプの人を尊重した、普遍的で包括的な性教育コンテンツが提供されています。

4.今すぐに新しい知識を得ることができる

ビデオや音声ガイドを通し、科学に基づいた情報を簡潔明瞭に解説しています。

セックスのみならず、ボディイメージ、不安感、自信、同意、バウンダリーなど、自己肯定感や相手との関係性を高めることなどに役立つトピックに出会えるはずです。

欲しい知識をすぐ得ることができ、概要の説明からいよいよ実行する段階まで適切な順序で実践にうつすことができるのです。

5.知識ある専門家たちとチャットで話すことができる

Kamaアプリ内では世界の専門家とチャットすることが可能です。 チャット内で、なかなか相談しづらい悩みや質問を話すことができるのが魅力な点です。

チャットボックスでは匿名で相談することができます。

出典：Kamaアプリ

世界の新常識「セクシュアル・プレジャーとは人権」

2019年、性の分野の国際研究者組織である性の健康世界学会（WAS）は「セクシュアル・プレジャー宣言」で、「セクシュアル・プレジャーとは、あらゆる人が生まれたときから持っている権利であるため、全ての分野の教育と実習に含まれるべきものである（筆者翻訳）」と述べています。

Kamaは、この「セクシュアル・プレジャー宣言」の公約に応えるようにつくられました。

「セクシュアル・プレジャー宣言」の主な内容とは、

「愛、セックス、インティマシーの体験をより高めよう」というミッションのもと、専門家のアドバイスに基づいた正しい性の情報を届けています。

リリースからすぐに大手メディアからも注目を集める

現在はダウンロード無料！日本からも利用可能

Kamaは現在は、無料でダウンロードすることができます。（2022年6月時点）

今後、ダウンロード数やコンテンツ数が増えれば有料になることも考えられます。 世界の進んだ性教育について興味のある人は、ぜひ今からダウンロードしてみてください。

アプリのダウンロードはこちらから

筆者から

今回の記事では、2020年にローンチされたばかりの性教育アプリKamaをご紹介しました。

早速アプリをダウンロードして驚いた点は、レベルの高いコンテンツ。日本の性教育では、せいぜい避妊方法を教えるくらいで、「セックス前の雰囲気作り」「ローションの種類」「セックス後のフィードバック」までは教えてくれません。初体験を経験するときまでに、ここまでの知識があればかなり安心だと思います。

また、アプリ全体がパステルカラーであったり、性器をモチーフとしたゆるふわなキャラクターがいるところからも、Kamaが大切にする「リラックスや幸福感」が伝わってきます。

さて、「日本の性教育は世界に比べてとても遅れている」という話を聞いたことはありますか？一生付き合っていく自分の体についてなのにあまり知らないことが多く、「学校できちんと教えてくれていたら」と考える人も少なくないそうです。

最近、そういった日本の遅れた性教育を受けて、性教育にフォーカスしたコンテンツを発信するYoutubeチャンネルも増えてきました。Youtubeを見るような感覚で、どこでも手軽に性教育が学べるKamaは魅力的です。

みなさんも、Kamaで性に関する知識をポジティブに楽しく学んでみませんか？

参考