フィデスレディースクリニック
松本智恵子先生
滋賀医科大学卒業。京都大学医学部婦人科学産科学教室に入局後、
大津赤十字病院、洛和会音羽病院などを経て、フィデスレディースクリニックで勤務。
産婦人科専門医、日本女性医学会会員。
フィデスレディースクリニック
松本智恵子先生
滋賀医科大学卒業。京都大学医学部婦人科学産科学教室に入局後、
大津赤十字病院、洛和会音羽病院などを経て、フィデスレディースクリニックで勤務。
産婦人科専門医、日本女性医学会会員。
「ピルでニキビが治るって聞いたけど、本当?」「試してみたいけど、副作用が心配……」
このように、ニキビ治療にピルを試してみたいと考えている方もいるのではないでしょうか? 繰り返すニキビは悩みの種。どうにかしてキレイに治したいですよね。
実際に、ピルはニキビ治療にとても有効です。ホルモン剤であることから不安になる方も多いですが、正しく知れば女性にとってうれしいメリットがたくさんあるんですよ。
【ピルの効果】
一口にピルといっても実はさまざまな種類があり、「生理痛の軽減」「ニキビ治療」など、用途によって最適な種類が異なります。ニキビ治療にピルを用いる場合も、他の用途での処方と同様、婦人科で処方してもらえます(※一部のニキビ専門皮膚科でも処方可能)。
この記事では、なぜピルがニキビに効くのかを詳しく解説。また、実際にピルを使用する際の注意点も細かくお伝えしていきます。
ニキビ治療にピルを試してみたい方は、ぜひ参考にしてくださいね。
ピルは、女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が含まれたお薬で、主に以下の用途で用いられます。
【ピルの主な用途】
女性ホルモンを含んだピルを飲むことによって「妊娠中のような状態」をつくり出すため、ホルモンバランスを安定させることができます。
結果として、排卵が抑えられ、ホルモンバランスの乱れによって生じていたPMSやニキビ、肌荒れなどの諸症状の改善が目指せるのです。
ここでは、ピルでなぜニキビが治るのかについてをご説明します。
ピルによるニキビ治療の効果は高く、3カ月以内にはほとんどの方が改善するといわれます。では、なぜピルはニキビ治療に有効なのでしょうか。
まず、ニキビとは詰まった皮脂にアクネ菌が増殖し、慢性的に炎症を起こしたものです。
繰り返すニキビは多くの場合、ホルモンによって皮脂量が増えることが原因といわれます。そのため、ホルモンバランスを調整し、皮脂量を減らすことが治療につながるのです。
女性の場合、生理前になるとニキビが出やすくなる方も多いのではないでしょうか。これは、女性ホルモンのなかでも妊娠の準備をするホルモンであるプロゲステロンの分泌が増えるため。プロゲステロンには皮脂の分泌を促す作用もあるため、皮脂が増え、ニキビができやすくなるのです。
また生理前にはプロゲステロンが増えると同時にエストロゲンが減少します。
エストロゲンには肌の潤いを保ち美肌をつくる作用があるため、エストロゲンが減少すると肌が乾燥しやすくなります。乾燥しないように皮脂が過剰分泌することこれも、肌トラブルの原因になるのです。
前述したとおり、ピルの主成分はプロゲステロンとエストロゲン。この二つのホルモンを経口で摂ることで、体内のホルモンバランスを安定させることができます。
特に、ピルに含まれるエストロゲンの働きにより、皮脂の分泌を促すホルモンの活性を抑えられるといわれています。
つまり、ピルを飲むことで皮脂の分泌を抑制し、肌の乾燥も予防できるため、結果としてニキビの予防につながるということです。
【ピルによる肌への効果】
ニキビには大人ニキビや思春期ニキビなどがありますが、基本的にどんなニキビにもピルは効果があります。
【ピルが有効なニキビ】
思春期のニキビと大人ニキビでは、ニキビの原因が若干異なります。
思春期ニキビの原因ピルに含まれるエストロゲンには、アンドロゲンの活性化を抑える働きがあるため、思春期のニキビにも有効とされます。
大人ニキビの原因20代以降のニキビは、「大人ニキビ」と呼ばれます。大人ニキビは、生理前のホルモンバランスの変化によって生じます。主にあごや口の周りにできやすいことが特徴です。
これは前述したとおり、ピルによってホルモンバランスが安定することで、生理前でも肌の皮脂量・水分量などが整いやすくなり、ニキビの改善につながります。
・皮膚科での治療は対症療法
皮膚科でニキビを治療されている方も多いですが、塗り薬やレーザーなどの治療は皮膚表面だけの対症療法です。もともとの皮脂量を調整できるわけではないため、何度治療してもニキビが繰り返してしまうこともあるのです。
・ニキビ痕はピルでは治らない
注意点として、ピルで「ニキビ痕」を治すことはできません。 ただ、ピルはホルモンバランスの調整によって皮膚の皮脂量を調整できるため、そもそもニキビのできにくい肌を目指せます。
すでにできてしまったニキビ痕は治せませんが、ニキビの発生を抑えることで、新たなニキビ痕を防ぐことにつながるといえます。
ピルは直接的にニキビを治すわけではなく、ホルモンバランスを整えることで皮脂量を安定させていくものです。そのため、効果が出るまではある程度の時間がかかります。また、症状が重いニキビほど、改善には時間がかかります。
治療期間の目安を以下に示します。
【治療(服用)期間】
重症のニキビの場合、医療機関によってはピルだけでなく、抗男性ホルモン薬を併用することもあります。抗男性ホルモン薬の服用によって、より皮脂量を抑えられます。
ほとんどの方は、治療開始から3カ月以内には効果が現れるといわれています。
ピルを服用する前に、ピルの効果や副作用、ピルの種類などを理解しておきましょう。ここでは、ピルでニキビ治療をする前に知っておくべきことをお伝えします。
ニキビ治療には、主に「低用量ピル」が用いられます。低用量ピルは含まれるホルモン量が少なめに調整されているため、ホルモン含有量が大きい中用量ピルなどと比べて、そこまで副作用は出にくいとされています。
しかし、ホルモンバランスの変化から、飲み始めの1~2カ月ほどは以下のような副作用が現れる場合があります。
代表的な症状としては、食欲の増加、むくみ、乳房のはり、吐き気、不正出血、頭痛、下痢が挙げられます。
これらの副作用は、体が慣れてくる3カ月ころには次第に軽減していきます。
また、低用量ピルではほとんど心配ないといわれますが、まれに起こるリスクとして、「血栓症」があります。年齢の高い方、喫煙者の方などはリスクが高くなるため注意が必要です。
低用量ピルにはさまざまな種類があり、種類によってホルモン含有量に違いがあります。 そのため、思春期ニキビか大人ニキビか、症状の程度はどうかによって、適したピルを選ぶ必要があるのです。
ピルの種類によってはニキビが悪化することもありますので、必ず医師の診察を受けてから、自分に適したピルを処方してもらいましょう。
ピルは基本的に、「婦人科」のある病院で処方してもらえます。しかし、婦人科といっても、大きな病院内に設置されたもの、産科がメインの産婦人科、性病などに特化したところなど、特徴はさまざまです。
基本的には、どの婦人科でもピルを処方してもらえる場合がほとんどですが、できるだけピルの種類に詳しいクリニックを選んだほうがいいでしょう。 また、ニキビ治療専門と謳っている「皮膚科」の病院でも、ピルを処方してもらえる場合があります。
前述したように、ニキビ治療に使われる低用量ピルにはさまざまな種類があり、適したピルを選んでもらうことで、より治療効果が出やすくなります。ニキビ治療に特化した医療機関であれば、安心して任せられるでしょう。
最近ではオンラインで受診できるニキビ治療専門の医療機関もあるため、そうしたところを利用すれば、パソコンやスマホを使って自宅から気軽に受診できるようになっています。
最後に、ピル服用前のよくある疑問をお届けします。不安に思うことがあれば、事前に確認しておきましょう。
低用量ピルは1カ月分が1シートになっており、基本的にはどの種類でも1シートで2,700円程度です。ピルの処方には受診が必要になるため、ピルの代金にプラスし、受診時には診察料が1,000〜3,000円ほどかかります。
ニキビ治療のための保険適用にはなりませんが、子宮内膜症や月経困難症と診断された場合には保険適用となり、負担額は1シート800円ほどとなります。
また、重症のニキビで抗男性ホルモン療法を行う場合は、1カ月あたり3,000~1万2,000円の費用がかかります。治療に用いる薬の容量により値段は変わります。
ピルを飲むと、排卵が抑制されるため、避妊効果が得られます。これはニキビ治療としてピルを飲んでいるときにも同様です。ピルの避妊効果は99%を超えるといわれるため、避妊薬としても役立つでしょう。
ホルモンが含まれたお薬ですが、ピルを飲み続けても将来の妊娠には影響しません。妊娠を希望するときには、服用をやめることで妊娠できるようになります。
ピルには直接的に太りやすくする作用はありませんが、飲み始めにホルモンバランスが変わることにより、食欲増進やむくみの症状が出る場合があります。
この副作用は次第に落ち着いていくため、飲み始めの3カ月ほどに食べ過ぎなどを気をつければ、太る心配はありません。
ピルに含まれるホルモンの働きにより皮脂量を調整しているため、服用をやめると皮脂量が増え、ニキビが再発する可能性があります。長期に服用を続けるデメリットはほとんどないため、再発を防ぐためには、ピルを飲み続けることをおすすめします。
ピルは医薬品のため、基本的に医師による処方が必要になります。安全に使用するためにも、個人輸入などは避け、医療機関を受診しましょう。
医療機関によっては半年まとめて処方してくれたり、オンライン処方が可能であったりするところもあります。そうしたところを受診することで、必ずしも毎月受診する必要はありません。
ニキビ治療には、ホルモンを調節して皮脂量を抑える低用量ピルが効果的です。
体質によっては、どんなにスキンケアに気をつけてもニキビが治らないこともありますよね。そのようなニキビにお悩みの方は、体の内側からホルモンバランスを整えるピルを試してみてはいかがでしょうか。
ピルを試してみたいと感じた方は、ぜひお近くの病院を探してみてくださいね。
【参照】
低用量経口避妊薬(OC)の医師向け情報提供資料この記事を書いた人
三児の母・ライター。もともと教育関係の仕事に従事していたが、第三子出産を機にフリーライターとして活動開始。中学・高校の教員免許(保健体育)、幼稚園教諭免許、保育士など教育関係の資格を持つ他、メンタル心理カウンセラー資格を保持。教育や健康分野の記事執筆、絵本脚本の執筆など幅広く執筆活動を行う。
著書:「ある日突然、障害児の母となったあなたへ」