生理用品の歴史を変える!婦人科医師考案、1つで2役の次世代生理用品Tampliner
生理用品は長い年月をかけて、私たちの生活とともに進化してきました。吸水ショーツや月経カップなどの女性の生活を考えた商品が次々と生まれ、多くの女性が、それぞれの生理の重さ、生活リズム、肌質などに合わせて生理用品を選べる時代になりました。
タンポンの歴史はどうでしょうか?
タンポンの場合、コットンに使われている素材がオーガニックコットン製か、そうではないかという違いくらいで、デザインや機能に大きな違いが見られません。それもそのはず。
今日私たちが使っているタンポンは、90年前のタンポンと何ら変わりがないのです。
タンポンユーザーの多くの悩み
便利な生理用品として、海外ではよく使われているタンポン。しかし、使っている人の中には「タンポンの紐をつたってできる、モレと不快感」を挙げる人もいます。経血量が多いと、タンポンの吸水が間に合わず、紐にしみ出して、下着が汚れてしまうことがあるためです。
生理中でも海やプールにも行ける便利なタンポンですが、実は使用している人の7割が、モレの心配からタンポンとおりものシートを併用しているそうです。
イギリスのCallaly(カラリー)社のTampliner(タンプライナー)は、このタンポンの長年の課題解決にチャレンジしています。Tamplinerと呼ばれるタンポンとおりものシートが一つになった革新的な生理用品を作り、経血モレの悩みに加えて、サステナブルな商品として他国にも展開中です。
最近では、米TIME誌の「2020年発明品ベスト100」を受賞したことでも注目を集めています。
この記事では、生理用品の歴史を変えるかもしれない、次世代生理用品Tamplinerをご紹介します。
タンポンは約1世紀の間なにも進化していない?
「90年前のタンポン」と言われてどんなものを想像しますか?
今よりもずっと大きくてゴワゴワしてそうなど、現在市販で売られているタンポンとは大きくかけ離れた、使いにくそうなタンポンが浮かんだ方もいるでしょうか。
出典:Would you use a razor from 90 years ago? – Currents by Callaly
タンポンは1933年にアール・ハース医師によって初めて開発されました。一般家庭で電気がまだ珍しかった時代にタンポンは生まれましたが、それからおよそ90年もの間、タンポンのデザインに大きな変化はありませんでした。
今までに、タンポンを製造する企業がコストを抑えるため、安全が保証されていない化学繊維を使用したり、見栄えをよくするために漂白や着色などが施されましたが、女性の身体を第一に考えて作られたタンポンは、90年間で生まれていません。
生理用品の安全を保証する基準の低さや生理用品のごみの多さなど、現在でも課題は残されたままです。
産婦人科を訪れてくる患者の声に着想を得たデザイン
Tamplinerはイギリスの婦人科医のAlex Hooiさんと、ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション出身で衣料の製造技術をもつEwa Radziwonさんによってつくられました。
出典:How the tampon industry is finally being disrupted, according to Callaly co-founder Thang Vo-Ta
Tamplinerを作ったきっかけについてAlexさんは、彼のクリニックを訪れる女性たちの多くが市販で売られている生理用品に不満を持っていたことだと話します。
Alexさんはイギリスで40年以上の婦人医をしてきた経験があり、これまでにたくさんの患者を見てきました。
患者の多くからは不快さ、不便さ、そしてモレやすさなどが挙げられ、寄せられた意見を参考にCallalyのTamplinerの開発が始まりました。
Callalyが現在のように世の中に知られるようになるまで、およそ10年もかかりました。イギリスだけでなく、インド、中国、オーストラリアなど世界30ヵ国でTamplinerのサンプルを配りました。
サンプルを使用した人に不満点や意見を聞きながら、ブランドの信頼性を築き、ついに2018年に現在のTamplinerが生まれたのです。
Callalyは創立当初から「優れた商品やサービスで生理がある人の生活を向上させるため、革新的な技術を取り入れる」ことを大切にしています。
タイム誌イノベーション賞を受賞したことでも話題に!
斬新なTamplinerの登場は、世界中のメディアで多く取り上げられています。昨年は米タイム誌の「2020年発明品ベスト100」にも選出され、「A Next-Gen Tampon (次世代タンポン)」として紹介されています。
毎年世界中の発明品から「世界をより良く、スマートに、そして少し楽しくする」商品が選出さます。2020年はイギリスからは8つの商品やサービスが選出され、Tamplinerがそのうちの1つでした。
多機能なTamplinerの構造とその使い方
細部にもとことんこだわって作られたTamplinerのパーツ
出典:Organic cotton tampliners | Callaly period products
オーガニックコットン製ミニライナー
一般的なおりものシートよりは少し小さめに作られています。 従来のおりものシートのように下着に貼り付けて使うのではなく、陰唇(いんしん)に挟むように装着して、経血のモレから守ります。
「薄膜ラップ」
Tamplinerの特徴的な、薄くて通気性の高い医療用素材でできた透明フィルム。タンポン部分とミニライナーをつなぐ役割の他に、手を経血で汚れることから守る役割もあります。
挿入時は、指を清潔に保ち、外す際には、ラップがタンポン部分を包んでくれるため、指が汚れず衛生的です。薄さは人の髪の毛以下で、FDA認証を得ていることからもわかるように素材に関しても安心感が持てます。
オーガニックコットン製タンポン
オーガニックコットン製の柔らかい素材です。無着色、無香料、殺虫剤・ダイオキシンフリーで安心に使うことができます。
交換の目安は4〜6時間ですが、夜用に使う場合は最大8時間まで交換なしで使用することができます。
出典:Organic cotton tampliners | Callaly period products
Tamplinerのサイズ展開はレギュラー、スーパー、スーパープラスの3サイズです。16個入のボックスの値段は8イギリスポンドで、経血量に合わせてサイズを自由に組み合わせることが可能です。
Tamplinerの使い方
- 外袋からTampliner本体を取り出す
- 外袋から取り出したら、Tampliner本体についている透明のフィルムに包まれているタンポン部分をライナー側に向かって押し出す
- タンポン部分を膣内に入れる
- ライナーを陰唇で包むように装着したら完了!そのまま4〜6時間使用可能
- 外すときには、片方の手で陰唇を開きながらライナーに手を添えて、もう片方の手でタンポンを膣から抜く
- 抜いたタンポンはラップの中にしまい、ライナーでくるんだらそのままゴミ箱へ
タンプライナー はこんな人におすすめです
- タンポンとおりものシートを併用して生理を過ごしている人
- 化学繊維が使われた生理用品を使うとかぶれやすい人
- できるだけ環境に配慮して生理用品を買いたい人
- アウターにひびきにくい生理用品を探している人
- つい生理用品を買い忘れてしまうことが多い人
Callalyの今後の展開
現在はCallalyのTamplinerはイギリス、アイルランド、スウェーデン、オランダの4ヶ国で販売中です。今後も海外の消費者向けに販売数を増やしていく予定で、すでに中国の北京と上海で試験的に販売したところ、とても良い評価を得ているそうです。
そしてCallalyは厳しいFDAクリアランスを2度も得ているため、海外ユーザーもどんどん増えていきそうです。
(筆者撮影)
日本語サイトもあるので気になった人は、ぜひチェックしてみてください。
ウェブサイトに寄せられたレビュー
“とても快適で、自然素材を使った製品という点にも満足しています。優れた製品で、パッケージもおしゃれです。“(筆者翻訳)“タンプライナーは最初は変わった外見だなと思いましたが、今では大のお気に入りです!デザインが女性のニーズにあっているし、毎月家に届けてくれるので覚えておく必要がありません!“(筆者翻訳)
“タンポンの使い心地や安全性には不安がありました。Callalyのタンプライナー を試してみるまでは!生理用ナプキンにはもう戻れません。使ってみて本当によかったです!“(筆者翻訳)
引用:Callaly — イギリスで「爆発的な人気商品となった」タンプライナーをご紹介します
寄せられたレビューに意外にも多かったのが、「サブスクリプション型で毎月家に届けてくれるので、生理が来たときに焦ってお店に買いに行く手間が無くなって嬉しい」というコメントでした。
ユーザーはCallalyに登録していれば、経血量や生理周期に合わせてカスタマイズされたセットを受け取ることができます。突然訪れる生理にも安心して準備できる点が人気の特徴のようです。
筆者の感想
90年近くもの間、タンポンには本質的な変化がないまま、現在まで使われていたという事実にはとても驚きでした。日本でも吸水ショーツや月経カップなどの新しい生理用品の選択肢が受け入れられていますが、タンポンに関しては革新的な商品がなかったことに気づかされます。最近ではいろんな生理用品がでできているので、多様な生理ケアの中からその人にあった生理用品を選べるようになってきていることがわかります。
ほかに印象的だったのが、Callaryはさまざまなインタビューの中で、ユーザーをついて話すときに「women(女性)」と言わずに「people with periods (生理のある人)」と呼んでいることでした。たしかに、避妊中、閉経中である場合や、その人がトランスジェンダー男性、インターセックス、ノンバイナリーの人であることを考慮すると、決して全ての女性に生理があるわけではありません。生理がある人を、単純に「女性」と決めつけずに「生理のある人」と呼ぶことで、Tamplinerを使用する全ての人を尊重しているのですね。ユーザーの呼び方一つにも、Callaryのユーザーを思う気持ちが伝わってきます。
Tamplinerのような、長い歴史を変える商品の誕生は革新的でとてもワクワクします。残念ながら日本での展開はまだ未定ですが、心待ちにしたいですね!先日開催された「femtech fes! 2021」ではTamplinerの展示もあり、訪れた人のなかにはTamplinerを実際に手にとってサイズや触っている姿も見られ、関心を持っている人も多い様子でした。
私も月経カップを使用する前は、使い捨てのタンポンを使っていて、やはり小さめのナプキンかおりものショーツを併用していたことがほとんどでした。1つで2役のTamplinerはゴミを減らすことができますし、タンポンユーザーには嬉しい商品ですよね。将来、Tamplinerが日本に上陸した際には、一度使ってみたいと思いました。
【参考】
Callaly — イギリスで「爆発的な人気商品となった」タンプライナーをご紹介しますRed Dot Design Award: Tampliner®
Callaly Tampliner: The 100 Best Inventions of 2020 | TIME
How the tampon industry is finally being disrupted, according to Callaly co-founder Thang Vo-Ta
Ep 1: Callaly's Tampliner Founder Thang Vo-Ta - Business of the V (podcast) | Listen Notes
Tampiliner Honored By Time Magazine - Nonwovens Industry Magazine - News, Markets & Analysis for the Nonwovens Industry
この記事を書いた人
性教育・フェムテック領域に興味津々な20代のメンバーで構成される、ピルモット編集部による記事です。