「ミレーナ」って知ってる? 新しい避妊方法のメリット・デメリット

公開日 2021-11-22 更新日 2021-11-22

記事監修医

フィデスレディースクリニック

松本智恵子先生

滋賀医科大学卒業。京都大学医学部婦人科学産科学教室に入局後、 大津赤十字病院、洛和会音羽病院などを経て、フィデスレディースクリニックで勤務。
産婦人科専門医、日本女性医学会会員。

避妊については、疑問があっても、まわりに相談するのはハードルが高いかもしれません。
避妊の方法はいくつもあり、それぞれにメリットもデメリットもあるものです。自分自身で身体や未来を守る選択をするためにもまずは、どんな方法があるのか知ることが大切です。

今回注目するのは、月経困難症などの治療にも使われる「ミレーナ」です。ミレーナの基礎知識やメリット、デメリットなどをまとめてみました。

ミレーナとは?

世界各地で使われている避妊器具

1990年に、フィンランドで開発された子宮内避妊システム(避妊器具)で、避妊以外にも月経困難症や過多月経の治療などにも使われます。やわらかいプラスチック製のT字型のリングになっており、それを子宮内に入れます。ミレーナは自分では装着できず、必ず医師による装着が必要です。

現在では世界約130カ国で、延べ約3,900万人の女性が使用し、使用者の約8割が「満足」だと答えています。日本では比較的新しい避妊法ですが、世界では妊娠や生理の不安や不調を改善するための選択肢の1つとして一般的なものになっています。

高い避妊効果が長く続くのが特徴

一般的な避妊方法である、コンドームの避妊成功率が98%程なのに対して、ピルは99.7%、ミレーナは99.8%となっています。ただし、コンドームやピルでは、正しく使用できない場合に避妊成功率がそれぞれ、コンドームで87%、ピルで93%と下がってしまいます。

ミレーナでは飲み忘れなどが生じないことから、一般的な使用でも99.8%程度の高い避妊成功率であることがメリットですね。
また、一度装着すれば、約5年という長期間にわたって効果が期待できるのも特徴です。

月経困難症や過多月経の治療方法にも使われる

ミレーナは、避妊だけでなく、月経困難症や過多月経などの症状を改善する治療にも使われています。 月経困難症、過多月経の治療の場合には保険適用となりますが、避妊目的では保険適用にはなりません。

保険適用になるかどうか知りたい方は、医師に相談してみましょう。

ミレーナによる避妊の仕組み

器具の仕組み

子宮に装着すると、緊急避妊薬として用いられる「レボノルゲストレル」という黄体ホルモンが子宮内に持続的に放出されるため、避妊ができるという仕組みです。また、装着すればすぐに避妊効果が出ます。

薬剤成分の作用

レボノルゲストレルの作用には、以下2つがあります。

(1)子宮の入口の粘液を変化させる
精子が入りにくい状態をつくって、子宮の中に精子が進入するのを妨ぐ

(2)子宮の内膜を薄い状態に保つ
仮に入り込んだ精子が受精しても受精卵が子宮の内膜に着床しづらい状態をつくる

ミレーナを装着すると、このように2段階で妊娠しやすい状況を回避することができます。

ミレーナの副作用

ミレーナを使用する際には、以下の副作用が起こる可能性があります

主な副作用

  • 生理周期の変化
  • 生理が長引く
  • 生理時期以外の出血
  • 腹痛
  • 卵巣のう胞

重大な副作用

  • ミレーナがいつの間にか抜けてしまう脱出
  • ミレーナが子宮の壁に入り込んでしまう穿孔(せんこう)
  • 骨盤内炎症性疾患や異所性妊娠(子宮外妊娠)

ミレーナ使用上の注意点

ミレーナを装着すると、通常、日数の経過とともに生理の回数が減っていきます。そして、1年後には約20%の人には生理が起こらなくなるといわれています。

しかし、生理が起こらなくなった場合でも排卵はあります。そのため、妊娠する可能性はゼロではありませんので、いつもの周期より大幅に生理が遅れている場合(具体的には前の生理から6週間以内に生理がこない場合など)や、吐き気や食欲不振などの妊娠初期に似たような症状が見られる場合は、医師に相談をしましょう。

また、重大な副作用もあるので、異常を感じたらすぐに医療機関を受診しましょう。

ミレーナによる避妊のメリット

■一度の装着で高い避妊効果が続く

挿入後1年の妊娠確率は0.2%と低く、一度ミレーナを装着したら約5年、高い避妊効果が続きます。常に入っている状態なので、ピルやコンドームのように飲み忘れや付け忘れが起こりません。

■ピル服用が困難な人も使用可能

以下に当てはまる方はピルを服用すると、血栓を形成しやすい状況になります。

  • 40歳以上
  • 肥満
  • ヘビースモーカー
  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 乳がんのある方
  • 肝機能障害や腎臓の病気を持っている方

ピルには高用量エストロゲンが含まれており、エストロゲンは血栓症の原因となります。
ミレーナには、血栓の原因となるエストロゲンが含まれていないため、血栓リスクが高い人でも使用が可能といえます。

■成分は局所のみに作用

子宮内に留置するので成分が作用するのは局所のみで、全身への大きな副作用はありません
また、ミレーナの装着で痩せたり、太ったりといった体型の変化の心配もありません。

■取り外せば妊娠も可能

妊娠を希望する場合は、医療機関でミレーナを取り出してもらうと妊娠が可能です。

■性交渉への影響なし

女性が主体的に避妊することができ、行為の際に触れて違和感があるといったこともありません。性交渉に直接的な支障がでることはないといえます。

■避妊以外のメリットも

経血量が減る、生理痛が軽減するなど、避妊以外のメリットもあります。

ミレーナによる避妊のデメリット

■病院受診の必要がある

必ず医師による装着が必要です。また、装着後も、定期的な検診が必要となります。検診のタイミングは病院により異なるので、医師の指示に従いましょう。

■装着時・装着後に痛みを伴う場合がある

出産経験がない場合や帝王切開で分娩した方は、ミレーナ挿入時に痛みを感じる可能性があります。

■副作用がある

薬剤を使うため、副作用が起こる可能性はあります。

■一度にかかる費用は高い

病院によって異なりますが、避妊が目的の場合は保険が適用されず、3〜10万円ほどかかります。月経困難症、過多月経の治療で保険適用された場合も3割負担で、費用は約1万円です。
低用量ピルやホルモン製剤を5年間飲む場合と比較すると、トータルで見れば安くなりますが、一度にかかる費用は高額になります。

■性病(性感染症)は予防できない

性病を予防するものではないので、性交渉の際は必ずコンドームをつけましょう。

まとめ

ミレーナはピルに並んで、高い効果のある避妊方法です。ピルを使用できない方でも使うことができ、一度装着すればその効果が長続きするという特徴があります。
もし、自分の人生設計の中で、妊娠を望まない時期が来たら、ミレーナも選択肢の1つにしてみてはいかがでしょうか。

【参照】

子宮内黄体ホルモン放出システム ミレーナ®52mg
ミレーナをご使用中のみなさまへ
妊娠のしくみ|東京都の妊娠支援ポータルサイト|東京都妊活課

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