フィデスレディースクリニック
松本智恵子先生
滋賀医科大学卒業。京都大学医学部婦人科学産科学教室に入局後、
大津赤十字病院、洛和会音羽病院などを経て、フィデスレディースクリニックで勤務。
産婦人科専門医、日本女性医学会会員。
フィデスレディースクリニック
松本智恵子先生
滋賀医科大学卒業。京都大学医学部婦人科学産科学教室に入局後、
大津赤十字病院、洛和会音羽病院などを経て、フィデスレディースクリニックで勤務。
産婦人科専門医、日本女性医学会会員。
「生理前の気分の落ち込みがひどい……」
そのように感じている方はいませんか? 生理前になるたび自分を否定してしまったり、身近な人や大切な人を傷つけてしまったり……気持ちがコントロールできない状態は本当につらいですよね。
PMS症状において、特に精神面の症状がひどいと感じる場合、PMDD(月経前不快気分障害)に該当する可能性があります。
PMDDとは、PMSの諸症状のうち「イライラ」「気分の落ち込み」「不安感の増大」といった精神症状が特に強くあらわれる状態のこと。DSM-5という日本精神神経学会の診断基準では、2013年から抑うつ症状群のひとつと捉えられるようになっています。
つらいPMDDの症状を治すには、きちんと医療機関で診断を受け、適切な治療を行う必要があります。ただ、医療機関を受診するのは不安……という方も多いはず。
そこでこの記事では、婦人科の診断で用いられる診断基準をもとに「PMDDのチェックリスト」をご紹介します。
加えて「PMDDとPMSの違い」「PMDDの治療法・セルフケア方法」などもご紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
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PMS自体は生理に伴う一般症状と捉えられる傾向があり、生理がある女性の8割がその基準を満たすともいわれています。対して、PMDDはPMSの重症例ともいわれ、割合は生理がある女性のうち3~8%程度と考えられています。
まずは、自分がPMSのうちPMDDに該当するのかどうか、チェックしてみましょう。
PMDDかどうかをチェックするうえで、まず大きなチェックポイントは2つ。
1つめは、生理周期に関連があること。PMDDの場合、主に排卵後から症状があらわれ、生理の開始とともに軽快していきます。生理に関係なく症状が続く場合は別の精神疾患の可能性があるため注意しましょう。
2つめは、生理前の精神症状が日常・社会生活に支障をきたすレベルであること。学校や会社を休む必要があったり、感情のコントロールができずに対人関係に問題が生じたりする場合、日常・社会生活に支障をきたしているといえます。
この2つに該当した方は、PMDDである可能性が高いため、以下のチェックリストでさらに細かく症状をチェックしてみてください。
PMDDのチェックリスト
①直近1年間、ほぼ毎回の生理でイライラや落ち込みの症状がある
②生理が開始すると症状が和らぎ、生理が終わるころには消失する
③生理の2週間前から生理開始までに、以下のような精神症状が1つ以上みられる
④生理の2週間前から生理開始までに、以下のような状態が1つ以上みられる
⑤「③と④」を合わせて、5つ以上の症状に該当する
⑥生理前の精神症状によって、仕事や学校、日常生活などに支障をきたしている
⑦生理前の精神症状によって、他人との関係に問題が生じることがある
参考:月経前不快気分障害の診断基準(DSM-5)
いかがでしたか? すべての質問に該当した場合、PMDDである可能性はかなり高いといえるでしょう。
ただし、PMDDの確定診断は医療機関でないとできません。上記のチェックリストをきっかけに、ぜひ婦人科などの医療機関への受診を検討してみてください。
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次に、PMDDがPMSと異なる点や、PMDDとうつ病との違いをご紹介します。
PMSとPMDDの大きな違いは、精神症状がメインかどうかにあります。PMSで起こる症状は、大きく身体症状と精神症状に分けられます。
身体症状は、のぼせ、下腹部膨満感、下腹痛、腰痛、頭重感、頭痛、乳房痛など。対して、精神症状はイライラする、泣きたくなる、不安になるといった心の症状です。
このうち、精神症状が特に強くあらわれる状態を、PMDDと呼びます。
ただし、PMDDだからといってその他の症状がないわけではありません。そもそもPMDDはPMSの中に分類されるため、PMDDでも身体症状がでる場合もあるのです。
PMDDの診断基準から考えると、精神症状による深刻度合いが強いものが、PMDDといえるでしょう。
冒頭で、PMDDは抑うつ症状群のひとつと捉えられているとご紹介しましたが、うつ病とPMDDは同じカテゴリーではあるものの、まったく同じ病気ではありません。
PMDDとうつ病との違いは、生理周期と精神症状が連動しているかどうかです。PMDDは生理が始まると軽快し、生理後には一旦、症状が消失するのに対し、うつ病は生理に関係なく症状が続きます。
ただし、うつ病もPMDDも起こる症状は同じ。
「気分が落ち込む」「やる気がでない」「突然悲しくなる」「死んでしまいたくなる」といった精神症状が続き、日常生活に支障をきたしてしまいます。
自分の症状がうつ病なのか、生理によるPMDDなのかを見分けるためには、生理周期と自分の心の状態をしっかり観察する必要があるといえます。
なお、生理後も精神症状が続く場合は他の精神疾患である可能性が高いため、一度、精神科の受診をおすすめします。
次に、PMDDの主な治療法をご紹介します。医療機関を受診した場合には、主にホルモン療法(主にピルを使用)や抗うつ薬による治療が行われます。
まず、多くの医療機関ですすめられるのはピルによるホルモン治療です。
ピルとは、女性ホルモンのプロゲステロン(黄体ホルモン)と、エストロゲン(卵胞ホルモン)が含まれた薬のこと。毎日決まった時間に服用することで、ホルモンバランスを一定に保つことができます。
PMSやPMDDの諸症状はホルモンバランスの乱れや変動から生じるため、ピルを服用することで、精神症状を含むPMSの諸症状に対し治療効果が期待できるのです。
ただし、ピルを選ぶ際はPMSに効果のある種類を選ぶことが重要です。
ピルには「PMS改善に向くもの」「ニキビ治療に向くもの」など、いくつか種類があり、種類によって含まれる黄体ホルモンの種類が異なります。 自己判断では購入せず、必ず婦人科を受診し、適したピルを医師に処方してもらいましょう。
PMDDの治療として、抗うつ剤が処方される場合もあります。PMDDに用いられる抗うつ剤は、主に選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と呼ばれるもの。
PMDDの原因の詳細は不明ですが、GABA受容体やセロトニンが関連しているのではないかと考えられています。そのため、脳に作用するSSRIを服用することで、イライラや不安などの症状を和らげてくれることが期待されます。
その他、漢方薬や認知行動療法、カウンセリングなどをすすめられる場合もあります。治療法については医師と相談しながら、不安なく取り入れられる方法を選択していくことが大切です。
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PMSやPMDDの症状を悪化させないためには、日々のセルフケアも大切です。生活習慣の乱れなどからホルモンバランスが乱れると、PMSやPMDDの症状も悪化してしまう可能性があります。
セルフケアといっても、特別なことが必要なわけではありません。生活リズムを整えたり、バランスのいい食事を意識したりするだけで、人の体のバランスは整っていきます。運動や体を温めることも大切です。
加えて、ストレスのケアも意識できるとなおいいでしょう。
ストレスは体や心のバランスを乱すため、PMSやPMDDの症状にも影響してしまいます。
ゆっくりお風呂に入るなど、自分なりのストレス解消法を見つけられるといいですね。
ただし、PMDDの治療はセルフケアだけでは難しい可能性もあります。PMDDの可能性があるのであれば、なるべく医療機関を受診し適切な治療を受けることをおすすめします。
PMDDとは、PMS症状のなかで特に心の症状が強くあらわれる状態のこと。ご紹介したチェックリストのすべての項目に当てはまるようなら、PMDDである可能性は高いでしょう。
もしもPMDDなら、ピルなどの治療法によって、あなたのつらい症状を改善できるかもしれません。
ぜひ適切な治療を受け、苦しい心の症状の解消を目指してくださいね。
【参照】
「DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル」この記事を書いた人
三児の母・ライター。もともと教育関係の仕事に従事していたが、第三子出産を機にフリーライターとして活動開始。中学・高校の教員免許(保健体育)、幼稚園教諭免許、保育士など教育関係の資格を持つ他、メンタル心理カウンセラー資格を保持。教育や健康分野の記事執筆、絵本脚本の執筆など幅広く執筆活動を行う。
著書:「ある日突然、障害児の母となったあなたへ」