生理前の便秘はなぜ起こるの?お腹の張りがつらいときの対処法も紹介

公開日 2022-03-14 更新日 2022-03-14

記事監修医

島袋朋乃先生

産婦人科医師。平成28年に旭川医科大学医学部を卒業後、函館五稜郭病院、釧路赤十字病院を経て、現在は産婦人科医として市中病院で臨床経験を重ねる。総合病院やクリニックで産科、婦人科、生殖医療に携わる。日本医師会認定産業医。日本産科婦人科学会、日本産科婦人科内視鏡学会、日本生殖医学会所属。

生理前の便秘、つらいですよね?
なかには生理前に便秘が起こらない人もいますし、便秘の話は周囲に話しにくいものです。

しかし、お腹が張るだけでなく、吐き気や腹痛を起こすこともあります。便秘に悩まされず過ごすためは、今すぐにできる対策ピルによる予防など、普段からできる対策を知っておくと役立つでしょう。
この記事では、まず生理前に便秘が起こる理由を説明してから、便秘の対策法を紹介します。つらい便秘に悩まされている方は参考にしてみてくださいね。

生理前に便秘が起こる理由

「なぜ生理前に便秘が起こるの?」と疑問に思うかもしれません。実は、生理前の便秘は女性ホルモンと深い関係があります。

女性ホルモンは2種類あり、1つはプロゲステロン(黄体ホルモン)、2つめがエストロゲン(卵胞ホルモン)です。生理は主に、プロゲステロンとエストロゲンの分泌量によってコントロールされています。
プロゲステロンは、特に排卵直後から生理前に分泌量が増加し、妊娠しやすく子宮環境を整える働きのある女性ホルモンです。基礎体温を上げたり、子宮内膜の環境を整えたりします。

女性の体に必要なプロゲステロンですが、腸の運動を抑える働きがあり、結果として腸内の水分を体内へ吸収させます。本来、腸内の水分が便をやわらかくするはずが、プロゲステロンの働きで便の水分が失われてカチカチに硬くなってしまうのです。
生理前にむくみやすくなるのも、プロゲステロンによって体内に水がたくさん吸収されるためです。

生理前のつらいお腹の張りや便秘の対策法

生理前の便秘は、女性ホルモンのバランス変化による自然な現象です。とはいえ、お腹の張りや吐き気などはつらいものですよね。
お腹の張りや便秘を解消するために、便秘薬を飲んだりすることもできますが、購入費用がかかってしまいます。

そこで、ここでは生理前のつらいお腹の張りや便秘対策として、費用をかけずに、すぐにできる対策法を紹介します。

水分を多く摂る

生理前の便秘対策として、水分を多く摂ることが重要です。プロゲステロンによって腸内の水分が失われているため、普段よりも意識して水分を摂取しましょう。

一般的な人が1日に必要な水分量は2.5リットルです。2.5リットルのうち、1.0リットルは食事から摂取し、0.3リットルは体内で作られます。
そのため飲料水として摂る必要があるのは、残りの1.2リットルです。冬や室内にいるときは喉がかわきにくく、水が足りてないことに気付かない場合もあります。

生理前に便秘になってしまったら、1日1.2リットルを目安に水を飲むようにしましょう。ただし、砂糖が多く含まれる飲料の飲み過ぎに注意してください。

お腹を温める

すぐにできる生理前の便秘対策として、お腹を温めるのもおすすめです。

腸内の温度が下がると腸の動きが鈍くなって、便が腸内に停滞してしまいます。お腹を温めると腸の動きが活発になるため、便秘解消に働きかけます
湯たんぽやカイロ、電気毛布でじっくりと温めていきましょう。湯たんぽを使うときは、沸騰した水でなく60℃くらいのお湯を使うと低温火傷を防げます。また、低温火傷防止のために湯たんぽはタオルでくるんで使用しましょう。

カイロを使うときは、肌に直接触れないように服の上から温めます。お腹を温めるときは貼るタイプのカイロが便利です。
湯たんぽやカイロ、電気毛布を持っていない場合は、蒸しタオルを使いましょう。フェイスタオルを水で濡らして軽く絞ってラップに包み、電子レンジで1分程度温めます。
温めた直後のタオルは高温になっている可能性があるため、やけどに注意して取り出し、服の上からお腹に当てます。

ストレッチや軽い運動をする

水分を摂って、お腹を温めても効果を感じられないときは、ストレッチや軽い運動を試してみましょう。

床に仰向けに寝て、両膝を揃えて立てます。ゆっくりと息を吐きながら両膝を合わせて左に倒し、もとに戻します。続けて右に倒し、また元に戻すという動作を繰り返しましょう。
もし横になれない状況なら、イスに座ったまま上半身を左右にひねってストレッチします。

少し動ける状況の場合は、その場でできる運動を試すのがおすすめです。
まず、立ち上がって壁やイスの背に手をつきます。お腹をへこましながらつま先立ちになり、1分間キープしましょう。これを何度か繰り返します。

ピルで生理前の便秘は予防できる?

ピルで生理前の便秘を予防できると聞いたことはありませんか?

低用量ピルは、プロゲステロンとエストロゲンを少量含み、女性ホルモンのバランスを調節します。体はプロゲステロンが十分に分泌されていると勘違いし、プロゲステロンの分泌量が減少するため、便秘が起こりにくくなるメカニズムです。

ただし、ピルを飲めば必ず生理前の便秘が解消されるわけではありません。女性ホルモンのバランスが調節され、反対に便秘になりやすくなる可能性もあります。
そのため、生理前の便秘を予防するために、安易にピルを飲み始めるのはおすすめできません

普段からできる生理前の便秘対策

最後に、「いつも生理前に便秘になる」という場合に、普段からできる対策法を紹介します。
便秘が起こる理由には、生活習慣や食事のバランスも大きく影響します。普段から、ここで紹介する対策を取っておくとよいでしょう。

食事のバランス

便秘解消には食生活の改善も重要です。野菜と肉、魚、乳製品など食事のバランスに気を付けましょう。
また、3食規則正しい時間に食べることも大切です。

特に便秘解消に働きかける栄養素は、野菜や海藻、芋類に豊富に含まれる食物繊維です。食物繊維には、便を軟らかくしたり、便の量を増やして大腸を刺激したりして排便を促す働きがあります。
食物繊維の多い食品は、わかめやさつまいも、じゃがいも、しいたけ、しめじ、キャベツ、大豆、バナナなどです。
毎朝バナナを1本食べるところから始めるだけでも、お通じによい影響を与えるでしょう。

生活習慣

快便になるには、食事のほかに睡眠と運動も大切だと考えられています。睡眠を十分に取り、毎日適度な運動を取り入れます。

運動といっても、ランニングやスイミングなどハードな運動は必要ありません。お腹周りを動かす腹筋や「すぐにできる便秘対策」で紹介した、お腹ねじりのストレッチから始めてみましょう。

まとめ

生理前には女性ホルモンのバランスが変化し、プロゲステロンの分泌が増加することで、便秘が起こりやすくなります。
すぐできる対処法は、水分を多く摂ること、お腹を温めること、ストレッチや軽い運動などです。水を多く飲むと便が軟らかくなり、お腹を温めてストレッチすることで腸を刺激して排便を促します。

ピルの服用は便秘を解消することもありますが、反対に便秘を引き起こす可能性もあります。そのため、生活習慣や食生活の改善で普段から便秘になりにくい環境を整えておくとよいでしょう。

参考

便秘と食習慣 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
食物繊維の必要性と健康 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
「健康のため水を飲もう」推進運動
日本産科婦人科学会「低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤ガイドライン」

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