男性も子宮頸がんワクチンを接種すべき理由|HPVワクチンの効果

公開日 2022-04-21 更新日 2023-04-19

記事監修医

島袋朋乃先生

産婦人科医師。平成28年に旭川医科大学医学部を卒業後、函館五稜郭病院、釧路赤十字病院を経て、現在は産婦人科医として市中病院で臨床経験を重ねる。総合病院やクリニックで産科、婦人科、生殖医療に携わる。日本医師会認定産業医。日本産科婦人科学会、日本産科婦人科内視鏡学会、日本生殖医学会所属。

「子宮頸がんワクチンって女性が打つものでしょ?」そのような認識の方は多いと思います。

確かに、「子宮頸がん」は女性だけに発症する病気ですが、実は子宮頸がんワクチンは男性にも効果があるのです。

子宮頸がんワクチンは正式には「HPVワクチン」といい、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を予防するもの。そして、HPVが引き起こす病気には、子宮頸がんだけでなく男性もかかるいくつかの病気が含まれるのです。

【HPV感染によって引き起こされる主な病気】

  • 子宮頸がん
  • 外陰がん
  • 肛門がん
  • 中咽頭がん
  • 陰茎がん
  • 尖圭コンジローマ

つまり、HPVワクチンを打つことで、男性もこれらの病気の予防につながります。

この記事では、こうしたHPVワクチンの男性への効果やメリット、HPVワクチンの基礎知識などをご紹介します。
これまで男性への効果を知らなかったという方は、ぜひ参考にしてくださいね。

HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)とは

そもそも、HPVワクチンとはどのようなものかをご紹介します。

HPVワクチンとは、冒頭でも述べたとおり、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染を予防するものです。

主に性交渉(接触)によって感染するHPVは、性交渉を経験した男女のほとんどが感染するといわれるほど身近なウイルスです。
HPVには100~200もの種類があるとされ、そのうち15種類に発がん性があることがわかっています。

通常は感染後に自然治癒することがほとんどですが、ある発がんリスクの高いHPVに感染し治癒しなかった場合、そのまま数年間感染を維持し、数年~数十年後にがんへと移行してしまうのです。

なお、HPVワクチンはすでに感染したウイルスを排除することはできません。そのため、性交渉を経験する前にワクチンを接種することが、感染予防には重要とされています。
ですが性交渉の経験があっても、ワクチンでHPVへの新たな感染は予防することができます。

HPVワクチンの種類

HPVワクチンには現在、「2価」「4価」「9価」の3つの種類があります。
「〇価」は適応するウイルス型の数をあらわすもので、4価であれば4種類のHPV型の感染を予防できるということです。

HPVワクチンの適応は、これまで女性に限定されていました。しかし、2020年12月より、4価HPVワクチンに限り、9歳以上の男性への使用も承認されています。

以下に、それぞれのHPV型の概要を簡単にご紹介します。

ワクチンの種類特徴適応・定期接種の有無
2価HPVワクチン
(商品名:サーバリックス)
子宮頸がんの原因の60~70%を占めるHPV型2つ(16型・18型)を予防します。・9歳以上の女性のみ。
・定期接種の対象も女性のみ
4価HPVワクチン
(商品名:ガーダシル)
2価のウイルス型に加え、尖圭コンジローマの原因となる型2つが追加。・9歳以上の男女。
・定期接種の対象は女性のみ(男性は任意接種)
9価HPVワクチン
(商品名:シルガード/ガーダシル9)
4価のウイルス型に加え、さらに5つのハイリスク型を追加。・9歳以上の女性のみ。
・任意接種(自費)

先進国では、9つのウイルス型を予防できる9価HPVワクチンが標準であり、アメリカやオーストラリアでは男性にも9価のワクチン接種が推奨されています。

ただし、日本では現在、9価HPVワクチンの男性への接種は未承認となっており、男性への使用が承認されたHPVワクチンは4価のみです。また、承認済みの4価HPVワクチンも公費での定期接種の対象とはなっていないため、接種の際の費用は全額自己負担となります。

HPVワクチンの男性への効果

HPVワクチンを男性が接種することで、外陰がん、肛門がん、中咽頭がん、陰茎がん、尖圭コンジローマなどの発症リスクをおさえることができます。

なかでも、HPV感染が原因の中咽頭がんは、女性の子宮頸がんよりも多いとされる報告もあり、大きな予防効果が期待できます。

また、病気の予防だけでなく「集団免疫」を獲得する意味でも、男性のHPVワクチン接種は重要です。
集団免疫とは、人類としてウイルスへの耐性を獲得するということ。すなわち、自分だけでなく大切なパートナーをHPV感染から守ることにもつながるのです。

最近では、世界各国で男性のHPVワクチン接種が推奨されてきており、アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリアなどでは、男女両方の定期接種プログラムがすでに実施されています。

男性はまだ定期予防接種の対象ではない

日本では2020年から4価HPVワクチンのみ男性への使用が承認されましたが、公費での定期予防接種の対象ではないため、接種するとなると費用がかかります。

HPVワクチンは日本では3回接種が推奨されており、4価HPVワクチン(ガーダシル)の場合は1回2万円前後3回接種で5~6万円ほどの費用がかかります。

なお、より守備範囲が広い9価ワクチンは日本では男性に対し未承認であり、今後の承認が望まれます。
下記、日本産科婦人科学会でも、HPVワクチンの普及、定期接種化、男性への接種の承認を求める方向で動いています(2023年4月時点)

参考:日本産婦人科学会 子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために 6)日本産科婦人科学会のHPVワクチンに関する考え方について教えてください。

男性がHPVワクチンを接種する方法

9歳以上の男性であれば、任意接種で4価HPVワクチンを打つことができます。男性がHPVワクチンを接種したいときは、お近くの医療機関に直接問い合わせてください。

子宮頸がんワクチンというと産婦人科のイメージがあるかもしれませんが、内科小児科でも受けられます。
まずはお近くの内科・小児科に問い合わせ、もしも男性向けHPVワクチンの取り扱いがない場合は、産婦人科へ問い合わせてみてください。

なお、未承認の9価HPVワクチンを接種可能な病院もありますが、副反応等に対し公的な保障制度がないためその点には注意しておきましょう。

4価HPVワクチンについては承認済みのため、もしも副反応があらわれた場合には医薬品副作用被害救済制度の対象となります。

HPVワクチンは女性だけのワクチンではない

HPVワクチンは世界各国で臨床試験がおこなわれ、安全性と有効性が立証されたワクチンです。

現在、世界的に男性への接種が推奨されているHPVワクチン。日本ではまだまだ金銭的な負担が大きく、接種の敷居が高いものとなってしまっていますが、今後は男女ともに普及していくと考えられます。

女性・男性共に9価ワクチンを接種することが望ましいので、正しい知識をもって、接種を検討してみてくださいね。

【参考】

HPVワクチンについてのまとめ| 予防医療普及協会
ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~|厚生労働省
子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために|公益社団法人 日本産科婦人科学会
HPVワクチンは男性も接種するべき?効果や費用、日本と他国の状況も含めて解説 | みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト

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