子宮頸がんワクチンの副作用は怖い?副作用にまつわる過去の報道と現状

公開日 2022-04-28 更新日 2024-10-03

記事監修医

島袋朋乃先生

産婦人科医師。平成28年に旭川医科大学医学部を卒業後、函館五稜郭病院、釧路赤十字病院を経て、現在は産婦人科医として市中病院で臨床経験を重ねる。総合病院やクリニックで産科、婦人科、生殖医療に携わる。日本医師会認定産業医。日本産科婦人科学会、日本産科婦人科内視鏡学会、日本生殖医学会所属。

子宮頸がんワクチンの接種は大切だと思うけど、副作用が心配。
体のためとは分かっていても、さまざまな情報があって、副作用による影響も気になりますよね。

この記事では、子宮頸がんワクチンの基本を説明したうえで、過去の副作用に関する情報と現在の対応について紹介します。

定期接種を受けていない1997年から2008年生まれの方は特に、ここで紹介する正しい知識をもってワクチンのメリットと副作用のリスクを比較し、ワクチン接種の判断をしましょう。

子宮頸がんワクチンとは

そもそも子宮頸がんワクチンは何のために接種するものなのか、まずは子宮頸がんワクチンの基本を説明します。

子宮頸がんワクチンの位置付け

子宮頸がんワクチンは、子宮頸がんを予防するためのワクチンです。
子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルスと呼ばれるウイルスの感染が原因となるケースが95%以上で、主に性交渉によって感染します。

女性が一生のなかでヒトパピローマウイルスに感染する確率は、性交渉の経験があれば50~80%と考えられています。
一方、子宮頸がんワクチンは、最適な時期に接種すれば子宮頸がんの原因ウイルスへの感染70~90%防げます。子宮頸がんになる前段階である、前がん病変を予防するだけでなく、子宮頸がん自体を予防するとの報告も徐々に増えてきています。

日本の子宮頸がんワクチン定期接種は、現在は小学校6年生から高校1年生までの女性を対象とし、3回無料で接種できます。
定期接種とは、国がワクチン接種を推奨し、市区町村が無償で接種を実施しているワクチンです。

子宮頸がんワクチンの種類

子宮頸がんワクチンには、2価ワクチン(サーバリックス)と4価ワクチン(ガーダシル)、9価ワクチン(シルガード9)と呼ばれる3種類があります。

実は、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルスにはいくつかの型があり、なかでも2価ワクチンと4価ワクチンは16型と18型に対するワクチンです。なぜ16型と18型に対するワクチンなのかというと、この2つの型による子宮頸がんの発症が多いからです。

4価ワクチンは、さらに尖形コンジローマの原因となるヒトパピローマウイルス6型と11型に対応しています。尖圭コンジローマは、生殖器や肛門周辺にできる褐色のイボのようなものです。基本的に、尖圭コンジローマは自然治癒する良性の病気ですが、悪性化する可能性もあるため子宮頸がんワクチンにも含まれています。

上記の2価ワクチンと4価ワクチンは、現在日本で定期接種の対象となっています。しかし9価ワクチンは、まだ厚生労働省の審議会で定期接種対象とするか検討中の状態です。

過去の子宮頸がんワクチン副作用に関する報道と現在の状況

子宮頸がんワクチンは、年間約1万人が発症して約2,800人が亡くなる子宮頸がんを予防するための大切なワクチンです。そのため、2013年より子宮頸がんワクチンは定期接種の対象となり、自治体から接種対象者に通知するなど積極的に推奨していました。

多様な症状を取り上げた報道があった過去

子宮頸がんワクチン接種後に慢性の痛みや記憶障害、失神、けいれん、不随意運動などの「多様な症状」が起こるとの報告が相次ぎました。

報告を受けて専門家の会議で医学的な分析が行われ、定期接種を中止するほどのリスクではないと判断されましたが、苦しむ少女たちを取り上げた報道で子宮頸がんワクチンの接種は敬遠される流れになってしまいました。

厚生労働省は、「多様な症状」が子宮頸がんワクチンの副作用であるかどうかを説明できるまで、対象者に対する積極的なワクチン接種の案内を差し控えました。この状態が約8年続きました。

その結果、子宮頸がんワクチンの接種率は1%未満まで下がり、若い子宮頸がん罹患者が増えたことが問題視されるようになりました。

現在はワクチンに問題があるとはいえないことが確認されている

2021年11月12日に開催された専門家会議では、子宮頸がんワクチンの安全性に問題があるとはいえないことが改めて確認されています。「多様な症状」はワクチンを接種しなくても起きることがあり、接種していない人の集団と接種している人の集団で比べても、発症率に差はありませんでした。

また、年間1万人もの人が子宮頸がんを発症している現状や、副作用の十分な情報提供ができるようになったことから、2021年11月26日にワクチン接種のお知らせを控えることを終了。2022年4月から順次、自治体から接種対象者へお知らせを発送する運びとなっています。

1997年〜2008年生まれは注意!子宮頸がんワクチンの定期接種を受けていない人への対応

過去の子宮頸がんワクチン接種の案内差し控えにより、1997年(平成9年)4月2日〜2008年(平成18年)4月1日生まれの女性は、定期接種できていない可能性があります。定期接種の機会を逃してしまった人は、キャッチアップ接種を利用できます。

キャッチアップ接種とは、上記の期間に生まれて定期接種を逃した人を対象とする子宮頸がんワクチン接種です。子宮頸がんワクチンは3回接種が推奨されているため、1回または2回しか接種していない人も対象になります。

自分が子宮頸がんワクチンの定期接種を受けたかどうかは、母子健康手帳や予防接種済証で確認できます。3回未接種の場合は3回分の費用が、2回未接種は2回分、1回未接種は1回分のワクチン接種費用が無料です。

また、1997年4月2日~2008年4月1日生まれで、定期接種を逃し自費で子宮頸がんワクチンを接種した方は、領収書などを自治体に提示することで、費用の払い戻しを受けられることがあります。該当する方は、お住まいの自治体へお問い合わせください。

キャッチアップ接種の対象者が接種可能な時期は、2022年4月〜2025年3月の3年間です。3回接種の場合は、それぞれの接種の間に一定期間を置かなくてはならないため、余裕をもって接種しましょう。

万が一、子宮頸がんワクチンで副作用が出てしまったらどうなる?

そもそも副作用とは、ワクチンや医薬品の使用、手術や治療などの医療行為によって引き起こされる体によくない作用のことです。
ワクチン接種による症状は、正しくは副反応と呼びます。

現在報告されている副反応

子宮頸がんワクチンの接種後の副反応として報告されている症状は、主に接種部位の腫れ、痛み、筋肉痛などです。いずれの症状も、1~2週間以内にほとんどが改善します。
接種部位の症状は、2価ワクチンでは54〜85%、4価ワクチンでは68〜87%の方に出現します。4価ワクチンの方が、症状の出現頻度はやや高い傾向にあります。

1%~10%未満の頻度で、蕁麻疹やめまい、発熱、頭痛が起きることがあります。また、1%未満ではありますが、注射への痛みや恐怖による脱力や失神などの副反応も報告されています。

重篤な有害事象の発生率は1万人あたり5人で、そのうち9割は回復しています。子宮頸がんは1万人あたり132人発症するとされており、そのうち9割が子宮摘出など体に大きな負担がかかる治療が必要となるため、HPVワクチン接種のメリットは、デメリットを上回ると考えられます。

予防接種健康被害救済制度

子宮頸がんワクチンの副反応は軽度の症状が多く、重度の副反応は頻度が少ないことが分かっています。とはいえ、必ずしも副反応が起こらないとはいえません。

万が一、子宮頸がんワクチンの接種による副反応で入院や通院が必要になった場合は、予防接種健康被害救済制度を利用できます。予防接種健康被害救済制度とは、ワクチン接種と健康被害の因果関係が認められた場合に、医療費や医療手当、障害年金、死亡一時金などを給付する制度です。
この制度は子宮頸がんワクチンに限らず、日本国内で承認されているすべてのワクチンに適用されるものです。

給付があるから安心とはいえませんが、子宮頸がんワクチン接種で万が一のことがあっても、迅速に救済される仕組みがあることは知っておくとよいでしょう。

まとめ

子宮頸がんワクチンは、子宮頸がんや尖圭コンジローマの予防効果が実証されているワクチンです。現在は、小学6年生〜高校1年生の間に3回の定期接種が推奨されています。

過去の誤った報道により、「子宮頸がんワクチンは怖いもの」と認識してしまっている人も少なくないでしょう。しかし専門家会議によって、子宮頸がんワクチンの定期接種を中止するほどリスクは高くないと評価されています。2022年4月より順次、定期接種の通知を再開しています。

ただし、子宮頸がんワクチンによる副作用がまったくないわけではありません。正しい副作用の知識をもって、まだ3回接種が済んでいない人は定期接種を検討してみてください。また、子宮頸がんワクチンについて不安がある人は、かかりつけの小児科や婦人科でよく相談して接種を受けるかどうかの判断をするとよいでしょう。

【参考】

9価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン(シルガード9)について
ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~|厚生労働省
HPVワクチンの接種を逃した方へ~キャッチアップ接種のご案内~|厚生労働省
尖圭コンジローマとは
子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために|公益社団法人 日本産科婦人科学会

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