生理前の異常な食欲を我慢しないとどうなる?食事で気を付けるポイント

公開日 2022-03-28 更新日 2022-03-28

記事監修医

島袋朋乃先生

産婦人科医師。平成28年に旭川医科大学医学部を卒業後、函館五稜郭病院、釧路赤十字病院を経て、現在は産婦人科医として市中病院で臨床経験を重ねる。総合病院やクリニックで産科、婦人科、生殖医療に携わる。日本医師会認定産業医。日本産科婦人科学会、日本産科婦人科内視鏡学会、日本生殖医学会所属。

生理前になるとなんだかすごくお腹が空いてしまいますよね。
食欲に負けて食べ過ぎてしまう人もいると思いますが、生理前の食欲を我慢しないとどうなるのか考えたことはありませんか?

今回は食欲が止まらなくなる原因から食欲を我慢せずにコントロールする方法、さらには進んで食べてもらいたい食べ物を紹介します。
生理前に食べ過ぎて体調を崩してしまう方や、ダイエットしたい方にもおすすめの情報です。

生理前に食欲が止まらなくなる理由

月経前症候群(PMS)のひとつの可能性

生理前に感じる心や体の異変は、月経前症候群(PMS)の症状のひとつかもしれません。
生理前や生理中に食欲が増すと感じている女性は多く、旺盛な食欲に悩まされている方も少なくありません。多くの女性がPMSの症状を感じているにもかかわらず、生理前の変調をPMSだと知っている女性は意外にも少ないのです。

PMSの症状はイライラする・肌が荒れる・下腹部が張る・腰が痛い・体がだるい・胸が痛い・憂鬱になるなど個人差はもちろんですが、その月の状態によっても症状に大きく違いがでます。ただし、症状が生理周期と関係がない場合には別に原因があるかもしれないので、経過をよく観察しておきましょう。

ホルモンが大きく変動する

PMSの異常な食欲は、排卵後に卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)が大きく変動することによって起こります。
エストロゲンは食欲を抑えてくれる働きがありますが、生理前になるとエストロゲンが減って食欲を抑えるのが難しくなります。

生理前はプロゲステロンが増加して、血糖値を下げる「インスリン」の作用が低下している状態です。食事をとると血糖値が急激に高くなりやすく、体では血糖値を下げるためにいつもよりもインスリンがたくさん分泌されています。
血糖値は普段でも食事によって大きく変動しますが、とくに生理前には血糖値の変動が大きくなり、食欲が止まらなくなったり異常に甘いものを欲しくなったりします。
お腹が空くのは下がった血糖値を上げ、生命を維持するための生理的欲求です。食後に血糖値が上がった状態からインスリンが作用して急降下することで食欲のスイッチが入ってしまうのです。

生理前の食欲を我慢しないとどうなる?

生理前の異常な食欲を抑えられずに食べてしまう方の体の中では、血糖値の乱れによってさまざまな異変が起こります。

お腹が空いたからと一気に食べてしまうと、血糖値が急激に上がってインスリンがたくさん分泌されます。急激に上がった血糖値がインスリンによって下がってお腹が空いて食べるを繰り返し、食欲が止まらなくなるのです。
そのまま食欲にまかせて食べ続けていると、血液中のブドウ糖が大量に余ってしまい、インスリンによって中性脂肪へと変わって痩せにくくなってしまいます。

もともと生理前は、体が水分を溜め込もうとするため体重が増えやすい状態です。体が一時的にむくんでいるだけであれば、生理後にホルモンバランスが戻れば体重も戻るので気にしなくていいでしょう。

血糖値の急上昇・急降下は「血糖値スパイク」といって、体のだるさや眠気につながります。この状態を続けていると、動脈硬化や認知症、がんの可能性をも高めてしまいます。

生理前の食欲をコントロールするカギは血糖値

血糖値が急上昇すると、インスリンが大量に分泌されて今度は急激に下がります。血糖値の下降に伴って体が空腹を感じるようになり、血糖値の変動が異常な食欲を繰り返し引き起こしてしまいます。

体の変化を元に戻そうと食欲が増しているので、自分で食欲をコントロールするのはとても難しいです。

食欲をコントロールするために、また太りやすい体にしないようにするには、できるだけ血糖を変動させないことが重要です。血糖値が急激に上がらないようにするには、欠食しない・食事の回数を分ける・野菜から食べるなど食事の取り方で工夫ができます。

摂取カロリーを減らそうと食事の回数を減らす方がいますが、食事と食事の間隔が空き過ぎると血糖値が下がりきって次の食事から一気に血糖を吸収してしまい食欲のスイッチをいれてしまいます。

血糖値を安定させることがポイント

食欲をコントロールするには、血糖値を安定させた食生活にすることです。

食事の合間に間食をとって、1日に4~6回食事をすると血糖の変動を防げます。しかし、血糖が上がりやすいジュースやお菓子など「甘いもの」や、分解されてブドウ糖になる「炭水化物」は間食に選ばないようにしましょう。

生理前の食欲を我慢しないでもいい食べ物

PMSが起こるのは生理の3~10日前くらいからです。生理がくると食欲も落ち着いていきますが、食欲が強い時期は、血糖値が上がりにくい食べ物などを選んで食べるようにすると気持ちが楽に過ごせるでしょう。

生理前は体がむくんでいると体の不調が起こるため、塩分を減らして水分を体から出す「カリウム」をとるようにしましょう。カリウムを豊富に含むのは、海藻類や乾物、果物です。
また、食物繊維の中でも海藻や麦類に含まれる「水溶性の食物繊維」は、お腹がすきにくくなり糖質の吸収をゆっくりにして血糖値の変動を抑えてくれます。「炭水化物」を選ぶときも、白米よりも雑穀米やソバ、ライ麦パンなどにしてみるのもひとつの方法です。

【カリウムや水溶性食物繊維を含む食べ物】

  • アボカド
  • キウイ
  • いちご
  • 乾燥わかめ
  • ひじき
  • 削り昆布
  • 岩のり
  • 豆類
  • 切り干し大根
  • 干しシイタケ

生理に向けて体調を整えておこう

生理前に食事や生活が乱れると、PMSの症状を悪化させてしまいます。
逆に言えば、食事や生活が改善されるとPMSによる不調も和らげるようになります。生理前の症状が起こるリズムに合わせて、食事や生活で対処して体調を整えていきましょう。

生理では血液を失うため、貧血を予防するために「鉄分」の豊富な緑黄色野菜や肉・魚をとりましょう。また、PMSの症状を悪化させる可能性がある「カフェイン」や「アルコール」の摂取は控えるようにします。玄米やおから、キノコなどの「不溶性食物繊維」は鉄の吸収を阻害するので、食物繊維の種類も意識して偏り過ぎないようにしましょう。

疲れやストレスは血糖値を上げるホルモンがつくられるため、血糖値の変動が起こりやすくなります。イライラしているときに甘いものが食べたくなるのはそのためです。疲れやストレスを解消しながら、リラックスして生活できるようにストレッチや散歩などを取り入れて血糖値をコントロールしましょう。

まとめ

生理前の異常な食欲はPMSの症状かもしれません。自分で我慢するのは難しいので、食事や生活で血糖値を安定させて食欲をうまくコントロールしましょう。無理に我慢するのではなく食欲をコントロールしつつ体の調子を整えられると、ほかのPMS症状も和らげられるようになります。
もしPMSの症状が強く日常生活がつらいと感じる場合には、症状に合わせて薬を処方してもらえます。体質に合わせた漢方薬も使用できるので、婦人科に相談してみましょう。

【参考】

カリウムを豊富に含む食べ物は?効果と摂取基準も解説│MediPalette(メディパレット)
月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)|公益社団法人 日本産科婦人科学会
血糖値の急上昇を防ぐ!つらくない食事法でゆる痩せする方法|リポビタン スポーツコラム|大正製薬
血糖値スパイク 食後の眠気や疲れとの関係 | POWER PRODUCTION MAGAZINE(パワープロダクションマガジン)
産婦人科医に聞く! 生理前になると「お腹が減る理由」とは|「マイナビウーマン」
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