島袋朋乃先生
産婦人科医師。平成28年に旭川医科大学医学部を卒業後、函館五稜郭病院、釧路赤十字病院を経て、現在は産婦人科医として市中病院で臨床経験を重ねる。総合病院やクリニックで産科、婦人科、生殖医療に携わる。日本医師会認定産業医。日本産科婦人科学会、日本産科婦人科内視鏡学会、日本生殖医学会所属。
島袋朋乃先生
産婦人科医師。平成28年に旭川医科大学医学部を卒業後、函館五稜郭病院、釧路赤十字病院を経て、現在は産婦人科医として市中病院で臨床経験を重ねる。総合病院やクリニックで産科、婦人科、生殖医療に携わる。日本医師会認定産業医。日本産科婦人科学会、日本産科婦人科内視鏡学会、日本生殖医学会所属。
性交渉の際にコンドームを使ったり腟外射精をしたりと、避妊をおこなっている人は多くいますが、実際には妊娠してしまう人がたくさんいます。
その原因として、正しい避妊の方法を十分に理解できていないことが挙げられます。
我慢汁(がまんじる)とは何か、精液とどう違うのか、腟外射精で妊娠する確率や理由についても解説します。
「中出しはしないから大丈夫」などとコンドームを付けずに挿入された、されそうになったことがある方は、リスクについてもう一度考えてみましょう。
我慢汁とは、カウパー腺(尿道球腺)から分泌される液体で、カウパー腺液または、尿道球腺液と言います。
男性側が性的興奮によって分泌される液体で、性交渉の上で大きな2つの役割を持っています。1つめは性交渉によるペニスの挿入をスムースにさせること、2つめは精子が卵子に辿り着きやすい環境にすることです。
我慢汁の分泌量は個人差がありますが、ペニスが勃起してから射精まで分泌が続きます。いきなり男性器を挿入すると摩擦による痛みが生じることがあり、我慢汁が潤滑剤の働きをして挿入しやすくします。
我慢汁は弱アルカリ性です。腟内は細菌やウイルスから体を守るために、常に酸性の状態を保っています。酸性の環境では精子はうまく生命維持や活動ができないので、我慢汁で腟内を精子が活動しやすいアルカリ性に変えて、受精しやすいように環境を整えているのです。
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精液は液体部分の精漿(せいしょう)と精子でできています。我慢汁とは根本的な働きが異なるため、性質も異なります。
性交渉による男性器の変化の流れにそって、それぞれの性質や役割をみていきましょう。
性的興奮が始まると血液がペニスに集まって勃起し、我慢汁がにじみ出てきます。手や口などで男性器を刺激すると、さらに我慢汁は尿道から出続けます。
我慢汁は無色透明で無臭、少し粘度があります。基本的にカウパー腺液の中には精子はいません。
相手の同意があれば、カウパー腺液を利用してペニスを挿入します。性器同士の摩擦でペニスが興奮を抑えられなくなると、尿道括約筋や骨盤底筋などの働きで精液が尿道から放出され射精が起こります。
精液は前立腺からの分泌物などと精子が混ざりあったものです。少し白っぽく独特なニオイをもち、強い粘度があります。1ml中に1億程度の精子がいて、強い粘度のおかげで腟内に長くいられるようになっています。
射精が終わるとペニスに集まっていた血液が引いて勃起がおさまり、カウパー腺液の分泌など性交渉にともなう男性器の変化は終了です。
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カウパー腺液には精子がないので「腟内で射精さえしなければ妊娠しない」と安心している人もいますが、ほんの少しでも精子がカウパー腺液に混ざり込んでしまうと妊娠する可能性がかなり高まります。
確かにカウパー腺液の中には精子は含まれていませんが、カウパー腺液の分泌が始まってから射精するまでの間に、性的な興奮が高まって射精を我慢すると尿道へ精子が漏れてしまうことがあります。いくら腟の外で射精をしても、精子が腟内に入ることができれば妊娠してしまう可能性が出てしまうのです。
精子が腟内にはいらないよう完璧な腟外射精をおこなえれば、避妊失敗率は4%という数字が出ていますが、実際に精子を侵入させないように膣外射精ができることはほとんどないとされています。
男性は自分で射精をコントロールできない上に、最初にでてくる精液は精子濃度が高いため、腟外射精を試みても腟内に精子が入り込むリスクがかなり高いのです。
一般的に行われている腟外射精では微量な精子の侵入があり、避妊失敗率は20~30%と高くなります。妊娠するリスクの高さから、腟外射精は避妊方法としては認められていません。
そもそもなぜカウパー腺液に精子が混入してしまうのかは、男性の体の構造と射精までの過程が関係しています。
精子は脳の視床下部と下垂体から分泌されるホルモンによって精巣でつくられます。精子は精細管から精巣上体に集められて成熟を待ち、受精が可能になった精子は射精のために精管の膨大部という部分にためられています。
精嚢(せいのう)では、精液の液体部分である精漿(せいしょう)がつくられていて、前立腺の分泌液と精子が混ざり合ってから尿道へと射精されます。
一方、カウパー腺液は前立腺のすぐ近くで分泌され、精液と同じ通り道の尿道へと流れています。精子のいる精管膨大部が近く、尿道までの間に蓋となるものがないので射精をしなくても精子が尿道の方に移動してしまっていることがあり、カウパー腺液にも精子が混入してしまうのです。
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コンドームを持つのは性別関係ない
中出しをしなくてもコンドームをつけずに挿入すれば、カウパー腺液の中に精子がどうしても混ざってしまうため、妊娠する可能性は必ずあります。少しでも妊娠するリスクを減らして性交渉を行うためには、正しい避妊方法をおこなうことです。
それほど多額な費用がなくても比較的手軽にできる避妊方法は、コンドームの装着もしくはピルの服用です。どちらか一方を正しく行うことも大切ですが、それぞれを組み合わせて行うことで、より効果的な避妊ができるようになります。
女性も正しい避妊のために、男性がコンドームを正しく使えているかどうかをチェックしましょう。性交渉の流れに沿って説明します。
コンドームの高い避妊効果を得るためには、腟内にペニスを挿入する前につけることが最も重要です。勃起してカウパー腺液が分泌されたばかりでは妊娠する可能性は少ないのですが、精子がいつ漏れてくるか分からない状況で挿入をしてしまうのはリスクがあります。
また、勃起が不十分だと外れやすいので、装着するときには十分に勃起していることを確認してからおこないます。
コンドームを袋の中央で破ると、コンドームが破れる可能性があります。コンドームをつける際に裏表を間違えると、装着のしにくさや外れやすさにつながります。また、コンドームの先端には精液の溜まるふくらみがあります。ふくらみを軽く抑えて空気が入らないように装着しましょう。
射精した後もそのまま挿入し続けると、腟内にコンドームの精液が漏れてしまう可能性があるため、射精後はすぐにペニスを抜いて、コンドームを外して捨てましょう。
コンドームは洗って繰り返し使うなどせず、必ず挿入のたびに替えましょう。正しく使用すれば97%程度、一般的な使用の場合85%程度の避妊率です。また、コンドームを使用することで性感染症を防ぐこともできます。
女性が進んでできる避妊方法のひとつで、低用量ピルの服用があります。ピルに含まれている女性ホルモンを体に取り込むことで、妊娠している状態と近いホルモンバランスになり、排卵をストップさせる仕組みです。
毎日同じ時間に飲み続ければ避妊確率は99%以上と高い避妊効果がありますが、飲み始めのうちは吐き気や気分不良などの副作用をしばらく感じる方もいます。
また、ピルを服用することにより、頻度は低いものの血栓症を発症するリスクが上がるため、医師と十分に相談して服用を開始するようにしましょう。また、ピルには性感染症の予防効果はありません。
毎日服用するだけとはいえ、100%飲み忘れないようにはできません。もし飲み忘れた場合には、避妊効果が得られない可能性が高く、コンドームなどの避妊具を一緒に使用していれば、失敗する確率を下げられます。
後で飲み忘れに気づいた場合でも、緊急避妊薬を使用すれば妊娠を回避することは可能です。
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低用量ピルには副作用がある!?正しい知識と対処法
生理痛やPMS(月経前症候群)の緩和のために役立つと言われている、低用量ピル。試してみたいけれども「副作用が心配」と躊躇してしまう方も多いでしょう。
カウパー腺液には精子は含まれていませんが、興奮が高まることで精子がカウパー腺液に混入して妊娠する可能性が高くなります。中出ししない腟外射精は正しい避妊方法ではありません。コンドームは挿入前に必ず着用してもらいましょう。
コンドームの装着により、性病を防ぐこともできます。意図しない妊娠を避けるためには、避妊を男性に任せるのではなく女性もピルを服用するなど、女性自身が妊娠の可能性と避妊方法についてしっかりと理解し行動することです。
【参考】
我慢汁でも妊娠する?カウパー腺液と精子の違いや対処方法を解説 | メディオンクリニックこの記事を書いた人
美容医療に関する記事の執筆や監修を手がけている。
総合病院で婦人科や外科系病棟で勤務し、多くの経験を積むも出産・育児のため退職。訪問看護ステーションと美容皮膚科・形成外科クリニックとのダブルワークを経て、5人目の出産を機に看護師の資格と経験を活かして美容・医療ライターとして活動の幅を広げている。
【実績】
・医療・美容・健康系から子育てまで多数の分野で執筆
・男性美容メディア「BiDAN」で美容の専門家に認定
・マイナビ「おすすめナビ」のエキスパートに認定
・脱毛サイト「ダツモウ.com」の監修者
・男性美容メディア「DAN LEAD」の記事監修
・子育て相談サイト「子育て相談ドットコム」では豊富な経験からQ&Aに回答中