生理の日をずらすためにピルが役立つ!早める、遅らせる仕組みと適切な服用方法

公開日 2021-10-25 更新日 2021-10-25

記事監修医

フィデスレディースクリニック

松本智恵子先生

滋賀医科大学卒業。京都大学医学部婦人科学産科学教室に入局後、 大津赤十字病院、洛和会音羽病院などを経て、フィデスレディースクリニックで勤務。
産婦人科専門医、日本女性医学会会員。

スポーツの試合や試験など、大切な予定がある日にさけたいものと言えば、生理。生理がくると体調の変化や出血の不快感が気になり、当日の集中力や結果が大きく変わってしまうなんていうこともありますよね。

生理の移動にピルを使うと、生理を早めたり遅らせたりでき、そんな悩みを解消できることがあります。しかし、「聞いたことはあるけれど、飲むタイミングが難しいから、試していなかった」「薬で生理をコントロールしても、身体には影響がないの?」と使用を躊躇している方も多いのかもしれません。

今回の記事では、生理の移動に使うピルの働きや目的に合わせた服用方法、注意点について説明します。

生理の移動とは

生理の移動とは、文字通り生理がくる日を動かすことです。

生理の移動には、低用量ピルと中用量ピルが使用され、女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)、プロゲステロン(黄体ホルモン)が含まれています。飲み方やタイミングを調整することで、女性ホルモンの働きがコントロールされ、目的に合わせた生理の移動ができるようになります。

早める場合と遅らせる場合では、ピルで生理日が動く仕組みが異なります。

生理を早める仕組み

生理のときには、卵子を育てるためのホルモンが脳から分泌されます。卵子が育つ前に女性ホルモンを体内に取り込むと、脳は女性ホルモンを作らなくてもいいと勘違いするため、女性ホルモンを作る臓器である卵巣の活動は停止させられます。

そうすると、自分の身体の女性ホルモンには影響されずに、外からの女性ホルモンの影響だけを受けることになります。そのため、外からの女性ホルモンをやめたタイミングで、身体の中の女性ホルモンを下げることによって生理を起こすことができます。

生理を遅らせる仕組み

反対に、生理を遅らせる場合には子宮内膜に働きかけます。

生理前から生理時にかけて、体内では女性ホルモンにより、子宮内膜が作られます。妊娠に備えて子宮内膜が厚くなりますが、妊娠していないと女性ホルモンが下がってくるため生理が起こる、これが自然な流れです。

そこで、女性ホルモンを補うことで、子宮内膜を子宮につなぎ留めておきます。これによって、避けたい日よりも遅くくるようにコントロールできるようになります。

生理の移動でピルを服用しても、身体への影響は低い

「生理の移動をすると、身体に負担がかかる」と考えがちですが、身体への影響はそこまで大きくありません。目的に合わせて女性ホルモンを補うだけであり、また10〜14日間程度の移動であれば問題はありません。どちらの目的であっても生理自体はしっかりとくると考え、前向きに捉えるといいでしょう。

ただし、身体の反応には個人差があり、副作用が強く出る方もいるといわれています。「生理をずらすことはできるけれど、副作用による体調不良を避けたい」という場合には、最初の服用の際に医師に相談し、できる対処法をアドバイスしてもらいましょう。

生理の移動に使うピルは、医療機関で処方してもらえる

生理の移動に使用するピルは、医療機関での処方で手に入れることができます。状況によってピルを服用できないケースがあること、万が一副作用が出た場合には対応してもらえることを考えると、専門家による診断と処方が必要です。

ただ、次の項目で解説する通り、生理を早める場合と遅らせる場合ではピルの服用タイミングや期間が異なるため、時間に余裕をもって受診したほうが良いです。

早めに医療機関を受診し、適切な時期に生理の移動ができるよう、準備を整えましょう。

生理の移動のためのピルの服用方法

生理の移動に使用するピルの服用方法は、生理を早める場合と遅らせる場合で異なります。

生理を早める場合

生理が始まってから5日目までに飲み始めて、生理を起こしたい日の2〜3日前後まで服用します。基本的には10〜14日の服用が必要になると考えましょう。

10〜14日程度服用したら、そこで服用をやめます。これにより、服用をやめた2〜3日後に生理がやってきます。

具体的な例では、

  • 8月30日に生理がくる予定で、20日に早めたい場合
  • 7月30日の生理開始から5日後以内にピルの服用を始める
  • 8月17日までに服用し、8月17日に服用をやめると、8月20日ごろに生理がくる

という計算です。

生理を遅らせる場合

生理の予定日の5〜7日前からピルを飲み始めます。生理を早める場合と同様に、服用をやめると、2~3日後に生理がやってきます。

具体的な例では、

  • 7月30日に生理が来る予定で、8月7日以降に遅らせたい場合
  • 7月30日の5日前、25日からピルの服用を始める
  • 8月7日までに服用し、8月8日に服用をやめると、8月9〜10日に生理がくる

せっかくのピルの効用を半減させないためにも、普段目につく場所にピルを置くなどの工夫をし、服用を忘れないように気をつけましょう。

「早める」「遅らせる」それぞれのメリット・デメリット

生理を早める場合のメリット・デメリット

ピルによって生理を早められると、生理を避けたい日にピルを飲まなくてもいいというメリットが生まれます。ピルの飲み忘れを心配する方やピルの副作用を心配する方にとっては、安心材料となるでしょう。

生理を遅らせる場合のメリット・デメリット

生理を遅らせる方法は、生理予定日に近い日程で受診した場合でも使えるというメリットがあります。しかし同時に、ずらしたい日までずっとピルを服用しなければならない遅らせる場合には、少量の出血が起こってしまうことがあるというデメリットがあることも否めません。

生理の移動でピルを利用するときに、気をつけるべきこと

生理の移動でピルを服用するときには、ほかにも事前に知っておくべきポイントがあります。

副作用が出るケースがある

ピルの副作用によって吐き気やだるさ、頭痛、乳房の痛みなどの副作用が出ることがあります。これらは時間がたてば緩和されていきますが、嘔吐がした場合、ピルの成分が体内に吸収されないというリスクが高まってしまいます。

このような問題を避けるためにも、副作用に備えて薬を用意しておきましょう。特に吐き気止めの薬を常備しておくと、気分が悪くなっても落ち着いて過ごせるようになります。

血栓症を疑う症状が出た場合には、服用を中止する

血栓症は、生理の移動のピルによる副作用の一つで、もっとも深刻な症状でもあります。 血栓症とは、静脈や動脈に血液のかたまり(血栓)ができ、血管の詰まりが起こる病気です。
例えばふくらはぎにできると、ふくらはぎの腫れやむくみなどの症状が起こります。それだけでなく、脳梗塞や心筋梗塞など、命の危険にかかわる病気の原因にもなります。

ピルによって痛みやむくみ、しびれ、または胸の痛みや頭痛、めまいなどの症状が出ている場合、血栓症の可能性が考えられます。このような場合にはすぐに服用を中止し、医療機関で医師の診断と検査を受けましょう。

服用を忘れると生理のタイミングが変わる

生理を早める場合でも遅らせる場合でも、毎日の服用が必要となりますが、時に忘れてしまうこともあります。

1、2錠なら問題ないこともありますが、3日以上間が空くと不正出血の原因になったり、そのタイミングで生理が起こってしまうことがあります。
そのため、飲み忘れには十分に注意しましょう。忘れた場合は、気づいた時点で飲み忘れた薬を服用し、その後は予定通り服用を継続するようにしましょう。

まとめ

生理の移動にピルを用いる方法は、女性にとって悩みの種である生理の日をコントロールできる、非常に優れた薬剤です。楽しみにしていた予定のある日大切な日に生理がくるという精神的なストレスが大幅に軽減されることで、日常生活での余裕も生まれてくるでしょう。

ピルを適切かつ落ち着いて活用するためにも、今回の記事でお伝えしたポイントを参考に、事前準備を進めておきましょう。
なお、副作用が出る場合もあるため、はじめての使用を考えている方は、早めに医師に相談することも覚えておきましょう。

【参照】

月経移動|花小金井レディースクリニック 婦人科 産婦人科 小平市 不妊・不育相談 女性医師による診察
ピルを使った月経(生理)の移動について - 銀座まいにちクリニック 内科・皮膚科・泌尿器科
月経(生理)の移動 | ジャスミンレディースクリニック渋谷・新宿・池袋
ピルで生理をずらす方法【生理日移動ピル】正しい飲み方や注意点を解説|イースト駅前クリニック女性外来
生理の移動について | 札幌・石狩市の産婦人科「エナレディースクリニック」

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