【性病の種類一覧】発症までの日数と対処法

公開日 2021-10-27 更新日 2021-10-27

記事監修医

フィデスレディースクリニック

松本智恵子先生

滋賀医科大学卒業。京都大学医学部婦人科学産科学教室に入局後、 大津赤十字病院、洛和会音羽病院などを経て、フィデスレディースクリニックで勤務。
産婦人科専門医、日本女性医学会会員。

「パートナーのお願いを断れずに、避妊具なしで性交渉をしてしまった。もし性病になったらどうしよう……」
「性病ってどんな種類があるの?症状は?」

そんな不安を抱えた方もいるのではないでしょうか。性に関する悩みは人に相談しにくく、ひとりで悩んでしまう方も多いと思います。

もし、現在あなたが身体に何か違和感を感じているのなら、まずは婦人科のある病院に相談すべきです。理由は、性病は放置してしまうと治りにくくなったり、重症化するものもあるからです。性病かどうかがはっきりすれば、あなたも安心できるはず。
自覚症状がない方も、異変が出たときに焦らないよう、性病の正しい対処法を学んでおきましょう。

この記事では、性病の主な種類と特徴、性交渉から発症までの期間や症状を一覧でご紹介します。また、性病になったときの対処法と、周囲やパートナーに相談する方法もご紹介。

性病に対する不安な気持ちを少しでもなくせるよう、この記事を参考にしてくださいね。

性病の種類と特徴

性病は性感染症ともいい、主に感染者との性交渉によって感染する病気のことをいいます。

以下に、主な性病の種類と特徴をご紹介します。

クラミジア

クラミジアは、主に性交渉によってクラミジア・トラコマチスという細菌に感染する性病で、日本で最も多い性感染症です。子宮頸管(子宮の入口)や咽頭、直腸などに感染します。女性は症状が出にくいことが多く、約80%が無症状だといわれます。

性器に感染した場合の主な症状はおりものの増加や下腹部痛、外陰部のかゆみや腫れなど。クラミジアに効果のある抗菌剤(飲み薬)を服用することで治療できます。

治療せずに放置すると1年くらいで症状が消えることがありますが、卵管や骨盤内に感染が広がり、卵管の閉塞などの合併症につながることがあります。妊娠中の女性では、出産のときに赤ちゃんに感染する可能性もあるため注意が必要です。

淋病

性交渉を通して、子宮頸管(子宮の入口)や咽頭、直腸などに淋菌という細菌が感染することでおこる性病です。男性は尿道に感染するため痛みなどの自覚症状が出やすいといわれますが、女性の場合、症状が出ないことも多く、約80%が無症状といわれます。

無症状のまま感染が進行すると、卵管炎や卵巣炎、骨盤腹膜炎などに発展することがあります。また、感染による影響で卵管が狭くなると、通過排卵障害にもつながるため、不妊の原因となることがあります。

治療には抗菌剤を服用し、体内の淋菌を駆除していきます。

性器ヘルペス

単純ヘルペスウイルス2型の感染によって起こることが多い性病です。

女性の場合は外陰部や腟などの性器から感染します。感染初期は陰部のかゆみや違和感から始まり、次第に小さな水泡や潰瘍ができはじめます。水泡ができるとかなりの痛みを伴うのが特徴です。

一度感染するとウイルスを完全に排除できないため、免疫が低下したときなどに再発することがあります。治療には抗ウイルス薬(飲み薬)で対応。症状が強いときには注射剤を用いることもあります。

トリコモナス

トリコモナスと呼ばれる原虫(単細胞の微生物)に感染することでおこる病気です。性交渉だけでなく、タオルや便器、浴槽などから感染することもあります。女性の場合、膣や子宮頸管、尿道、膀胱から感染します。

強いかゆみや痛み、ニオイの強い泡状のおりものが特徴ですが、女性の20~50%は無症状とされます。放っておくと卵管まで炎症が広がり、不妊の原因となることがあります。治療には膣剤や飲み薬を用います。

尖圭コンジローマ

鳥のトサカ状やカリフラワー状の、痛みのないイボが出現する性病です。皮膚粘膜に生じた小さな傷からヒトパピローマウイルスが感染することによって起こります。

イボは痛みがなく、腟口、腟内部、小陰唇、大陰唇や肛門まわり、唇、口腔内などに出現し、次第に増えていきます。妊婦さんが出産するときに、赤ちゃんに感染する可能性があります。尖圭コンジローマの原因となるのは、低リスク型のヒトパピローマウイルスですが、高リスク型のヒトパピローマウイルスにも同時に感染している場合は、子宮頸癌のリスクになることがあります。

どんな治療を行っても15~30%は再発するといわれるため、定期的に検査をしながら治療を続ける必要があります。治療にはイボを取る手術や軟膏などが用いられます。

梅毒

主に性交渉によって、梅毒トレポネーマという細菌の感染しておこる性病です。治療せずに放置して症状が進行すると、死に至ることもあります。

主に陰部、肛門、口唇、口腔内に感染し、感染初期では感染部位にしこりが生じたり、リンパ節が腫れたりといった症状が現れます。放置していると、数カ月後には体にバラの花のような赤い発疹が現れ、さらに数年後には心臓、血管、脳など全身に感染が広がっていきます。

また梅毒に感染したまま妊娠すると、胎盤を通して赤ちゃんに感染し、死産、早産、新生児死亡、奇形を引き起こす可能性があります。 治療は抗菌薬(飲み薬)で行いますが、進行期の部位によっては入院して点滴治療を行うこともあります。

エイズ(AIDS・HIV)

エイズは日本語では後天性免疫不全症候群と呼ばれます。エイズはHIVというウイルスに感染して、適切な治療が行われない場合に、重篤な免疫不全によって日和見感染症(ひよりみかんせんしょう)などを引き起こす状態です。HIVは主に性交渉によって感染します。

まれに、感染初期(性交渉から1~2カ月ごろ)にインフルエンザのような症状が現れることもありますが、ほとんどが無症状のまま何年も無症状期間が続くことが特徴です。

現在の治療法では、HIVを完全に排除する薬はありません。ただし、副作用はありますが、3種類の抗HIV薬を一生涯飲み続けることで、エイズの発症を予防することは可能です。

性病ではないが性器が炎症を起こす病気

カンジダ

カンジダはカビの仲間です。常在菌(じょうざいきん)といって、口の中や消化管、膣などに常に生息しています。性交渉にかかわらず、免疫が低下したとき衛生状態が悪いときなどに過剰に増殖してしまい、カンジダ症を発症します。

大きな特徴は「陰部のかゆみ」「ポロポロとしたおりもの」です。発症してしまったら、陰部を清潔にし、膣剤(膣内に入れる錠剤)や塗り薬、飲み薬で治療を行います。

【発病までの日数一覧】性交渉から性病の症状が現れるまで

次に、性交渉から発病までの期間を一覧でご紹介します。
現在、何かしらの症状があり、思い当たる行為がある方は、今出ている症状が行為によるものなのか、性病の可能性があるのかを判断するために、参考にしてみてください。

とくに症状がない方も、それぞれの性病が性交渉後どの程度の日数で、どのような症状が現れるのかをチェックしておきましょう。

性病による症状が現れるまでの期間一覧

性病ごとの症状一覧

カンジダ
  • 外陰部の腫れ
  • かゆみ
  • チーズ状の白いかす
  • 排尿痛
  • 性交痛
淋病
  • おりものの増加
  • 黄緑色の濃いおりもの
  • 外陰部のかゆみ、腫れ
  • 不正出血
  • 頻尿
  • 排尿痛
性器ヘルペス

【初期】

  • 1~2mmのかゆみのある水疱が多数出現

【3〜5日後】

  • 水疱が潰れて潰瘍化、強い痛みを伴う(※再発しやすい)
トリコモナス
  • 泡状で悪臭のある褐色・黄緑色のおりもの
  • 外陰部・膣の猛烈なかゆみ
  • 刺激感
  • 膣の発赤
クラミジア
  • おりものの増加
  • 下腹部痛
  • 不正出血
エイズ(AIDS・HIV)

【初期:感染後約3週間】

  • インフルエンザに似た発熱
  • のどの痛みや腫れ
  • 倦怠感
  • 筋肉痛
  • リンパの腫れ

【中期:感染後約3週間】

  • 帯状疱疹

【エイズ発症期:数年〜15年】

  • あざ、内出血、できものなど
梅毒

【第Ⅰ期:感染後約3週間】

  • 陰部や肛門、口腔内、唇などにしこり
  • 鼠径部のリンパの腫れ

【第Ⅱ期:感染後約3週間】

  • 手や足の裏、身体全体にうっすらと発疹

【晩期顕性梅毒:感染後数年】

  • 皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍
  • 心臓、血管、脳などの臓器に病変が生じ、場合によっては死に至る
  • 性器や肛門まわり、唇、口腔内などに痛みのないイボが出現
  • おりものの増加(※トリコモナス腟炎やカンジダ外陰・腟炎、淋菌感染などを伴うことも多い)
B型肝炎

【第Ⅰ期:感染後約3週間】

  • 褐色尿、黄疸(急性肝炎)
  • 全身倦怠感
  • 吐き気や食欲不振
  • 発熱
  • 蕁麻疹様の皮疹
  • 関節痛

性病になったときの正しい対処法

性病の可能性があるときには、まずは「婦人科」を受診する必要があります。

ただ、若い女性はなかなか婦人科を受診する機会がないので不安かもしれませんね。
しかし、性病は自然治癒を待っていては治らず、種類によっては不妊などのリスクが高まります。不安な方は、まずは病院に電話やメールで相談してみるといいでしょう。

ここでは、性病になったときの正しい対処法をお伝えします。

性病は専用の治療薬で治療する

性病はウィルスや細菌の感染がもとになっているため、原因菌に対処する薬剤を用いれば、数日から数週間で治る場合がほとんどです。何もせずに放置していると感染が広がってしまう可能性もあるので、早めに病院を受診し薬を処方してもらいましょう。

病院に行くのが心配だからといって、自己判断で薬剤を購入することは絶対にやめましょう。

パートナーも検査をする

もしも性病が発覚したら、パートナーも検査をしましょう。自分が治ったとしてもパートナーも感染していれば、再び感染してしまう可能性があります。

パートナーに言いにくい場合には病院で相談してみてください。2人で一緒に話を聞けるようにしてくれたり、病院側から上手にパートナーに伝えてくれたりします。

性病を保護者やパートナーに相談する方法

性病の可能性があったとしても、人には相談しにくいもの。若い女性の場合は特に、保護者やパートナーにはなかなか相談できませんよね。

しかし、性病の検査や治療にはお金がかかり、保険診療を受けるには保険証を使う必要があります。保険証を使うと、毎年届く「医療費のお知らせ」で保護者がに通知がいくため、受診に気付く可能性が高いでしょう。

治療費の目安

中学生以下の場合、一人で受診はできず、基本的に保護者の同伴が必要になります。また、性病とわかったときにはパートナーにも検査をしてもらわなければなりません。

そこで、ここでは保護者やパートナーに、上手に伝える方法をご紹介します。

未成年(中学生・高校生)が保護者に相談する方法

中学生以下は原則、保護者同伴としている病院がほとんどです。
高校生以上であれば、ひとりでの受診OKとしている病院もあります。病院によって対応が異なる場合があります。

自分からは保護者に言い出しにくい場合は、まずは婦人科のある病院に電話やメールをし、相談してみてください。病院側は未成年の性病ケースも経験してきていますので、保護者への伝え方について相談に乗ってくれます。

未成年が病院へ相談しても、本人の許可なく保護者に受診を伝えることはないので、安心して相談してくださいね。

また、保護者同伴と聞くと恥ずかしいと思うかもしれませんが、診察室では保護者に席を外してもらうことも可能です。将来、妊娠・出産をしたい方には特に大切なことですので、必ず保護者に相談し、婦人科を受診するようにしましょう。

性病と診断されたらパートナーも検査が必要

検査後、もしも性病とわかった場合にはパートナーにも検査を受けてもらわなければなりません。自分だけ治療をしても、パートナーも感染していれば、再び感染してしまう可能性があるからです。

しかし、性病はデリケートな話題のため、「関係が悪くなってしまうのでは……」などと考えてしまうと、パートナーに性病のことは伝えにくいですよね。 この場合も、まずは産婦人科で相談してみましょう。病院側から上手に伝えてくれることもありますし、伝え方も相談に乗ってくれます。

また「生理痛がひどくて受診したら、性病と言われた」と別の理由をつくっておくと、パートナーに伝えやすくなりますよ。

性病かなと思ったら…すぐに病院へ相談を

性病にはさまざまな種類がありますが、発病までの期間にはかなり差があります。

カンジダ、淋病、性器ヘルペス、トリコモナスは性交渉から1~2週間以内と比較的早く症状が現れますが、1カ月以上かけてじわじわと感染が進むものもあります。 そのため、症状があっても、必ずしも最近の性交渉が原因とは限らないのです。

性病は放置すれば治るものではありません。感染が広がれば、最悪の場合、命にかかわる可能性もあります。性病かもと思う症状があれば、必ず病院を受診しましょう。

受診には勇気がいるかもしれませんが、不安な方はまずは病院に問い合わせてみるなどしてみてくださいね。

【参照】

性病の種類一覧|新橋・新宿の性病医院「あおぞらクリニック」
主な性感染症一覧 | 性の健康医学財団
性病(性感染症)の種類とその原因を徹底解説!女性は特に要注意
性病の種類 | パーソナルヘルスクリニック | 性病専門 | 東京・上野御徒町
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