世界初の海藻でできたタンポン! 地球にやさしい「KELPON」が気になる
海のプラスチック汚染問題などの「海の環境問題」について、ニュースなどで聞いたことのある人は多いかもしれません。このまま海洋汚染がすすめば、プラスチックを食べた魚介類を通じて、私たち人間にも健康リスクが及ぶだろうともいわれています・・・
そこで、今回は海の環境の保護に貢献するドイツ発の最先端生理用品をご紹介します!
画像出典:Vyld - Sustainable products made from seaweed | like cotton, just vylder
環境先進国ドイツで生まれた生理用品ブランド「Vyld(読み:ワイルド)」は、世界で初めて海藻(ケルプ)を原料にしたタンポン「Kelpon(読み:ケルポン)」の開発に成功。プラスチックでつくられることが当たり前な生理用品業界で、脱プラスチック化を目指しています。
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海を愛するドイツ人創業者から生まれたアイデア
「海藻からタンポンを作る」というこの斬新なアイデアの誕生は、Vyldの創業者のInes Schillerさんが、マリンガイドをしていた数年前にさかのぼります。
幼い頃から海に触れ海をこよなく愛してきた彼女。きれいな海を守っていくことは彼女の強い信念でもありました。
マリンガイドから映画プロデューサーまでー 異例なキャリアを経験し海藻に出会う
起業家やマリンガイド、脳科学者、哲学者、映画プロデューサーという多様なキャリアを積んできたInesさん。フェミニズムとバイオテクノロジーに関心を寄せさまざまな仕事に携わりながら、こんな考えを持っていたそう。
「海藻を使って何かをしたいという考えがいつもどこかにあったんです。(筆者翻訳)」(Inesさん)
引用:Algen Tampons: Die Vyld-Gründerin produziert Periodenprodukte aus Algen - Business Insider
海藻が自然界で最もパワフルな生き物の1つであり、世界を変えるような素晴らしい可能性を秘めていることに気付いた彼女。「食べ物以外にも海藻を原材料として活用できないか」と考えたそうです。
今ある“サステナブル”な生理用品に疑問を持つように
一般的に「サステナブル」だと言われる生理用品の選択肢が少なすぎると感じていたInesさん。 海を愛する人間として、また、生理がある人間として、「より環境に良い材料で信頼性のある生理用品がつくれないか」と思ったそうです。
「私たちは(海藻がもつ)素晴らしい可能性を生理用品に生かし(社会に)良い影響を与えようと考えました。そうすれば、商品のパフォーマンス性と本物のサステナビリティのどちらもかなえるユニークな解決策を、生理のある人たちに提供することができるはずです。(筆者翻訳)」(Inesさん)
そうして2021年「真にサステナブルでヘルシーな方法で生理用品業界に革命を起こす(筆者翻訳)」というミッションのもとVyldは誕生しました。Vyldがサステナビリティと公平性にこだわり抜いて完成したのが、海洋生分解性タンポンの「Kelpon」です。
引用:Vyld Closes a Pre-seed Round to Take Its Seaweed-Made Tampons Into Mass Production – Femtech Insider
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Inesさんが着目した海藻の魅力とは
Inesさんが見つけた海藻の可能性とは、どんなものだったのでしょうか。
「海藻」と聞くと、海苔やわかめなどの日常で食べるシーンを想像します。最近の欧米の食文化でも、スムージーや代替肉の材料として使われていることも。Inesさんによれば、その加工のしやすさから加工食品の多くに海藻の成分が使われているのだそうです。
少し意外ですが、食べ物以外にも海藻はすでに使われています。特に医療分野では長年幅広く使用され、歯型を採る印象材や医療用グルー、傷を保護するためのドレッシング材などさまざまな形で私たちの健康を支えています。
Inesさんは、海藻が医療現場でも評価されてきた「抗炎症作用や高い吸収力と低アレルギー性」に着目しヒントを得たそうです。
それらの優れた特徴を、多くのタンポンには欠かせない材料であるプラスチックやビスコース(レーヨン素材の一種)の代用にできないかと考えたのです。
従来のタンポンの材料や生産工程を見直し、海藻を「サステナブルな原料」として生まれ変わらせることについに成功。タンポン本体にはもちろん、パッケージすべてに海藻を使用したバイオプラスチックを開発し、空気中でも水中でも生分解可能なタンポンが出来上がりました。
参照:Vyld: This is how tampons made from algae work - Techzle
海藻を使う理由1:地球に優しい
海藻は森林と同様に二酸化炭素(CO2)を吸収するため、地球温暖化対策に欠かせない役割を持っています。森林によって吸収される炭素「グリーンカーボン」に対して、海藻などに吸収された炭素は「ブルーカーボン」と呼ばれ、環境保全への貢献する生物として近年注目が集まっています。
さらに海藻は、
- 陸生植物よりも10倍早いスピードで成長
- 肥料・殺虫剤・水やりが不要
- 水中の脱酸性化を促し、サンゴ礁などの生息地保護に貢献
- 地球上でもっとも大きなCO2吸収源
- 水中・空気中でも生分解可能、地球に還るサーキュラーエコノミー型
海藻を使う理由2:人にも優しい
海藻を生理用品に使うと、環境だけでなく、使う人にも嬉しいメリットが。
- 海由来だから吸収性が抜群
- 長年医療現場でも使用されてきた安心の素材
- 低アレルギー性と抗炎症作用
- 天然の白色なので漂白の必要がなく有害物質を含むリスクがない
その実力は、国連が世界的な貧困の解決策として海藻の利用を提案するほど!
将来の私たちの暮らしを支えるためになくてはならない存在だと考えられています。
SDGsにも大きく貢献
Kelponは、日本でも最近聞く機会の多い「SDGs(持続可能な開発目標)」にも大きく貢献。全17個の目標のうち以下の12個の目標に貢献ができるそう!
1.貧困をなくそう
3.すべての人に健康と福祉を
4.質の高い教育をみんなに
5.ジェンダー平等を実現しよう
6.安全な水とトイレを世界中に
8.働きがいも経済成長も
9.産業と技術革新の基礎をつくろう
10.人や国の不平等をなくそう
12.つくる責任つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさも守ろう
参照:SDGs17の目標 | SDGsクラブ | 日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)
画像出典:Vyld Homepage
生涯に出る生理ゴミは1人1万個!
ところで、みなさんは生理用品が与える環境負荷について考えたことはあるでしょうか。
生理用品と環境問題は大きな関係があり、海に捨てられたプラスチックゴミのなかで5番目に多いゴミが生理用品だと言われます。生理用品の多くはプラスチックでできているため、海に捨てられた生理用品は、その後分解されずに何百年も残り続けてしまうのです。
生理のある人が生涯で使用する生理用品はおよそ5,000〜15,000個。 その9割は使い捨て商品であり、プラスチックやレーヨンといった環境への負荷が大きい素材からできています。
こういった背景があり、世界的により環境に負担の少ない生理用品を使おうと考える人が増えているようです。ナショナルグラフィックの調査によれば、生理がある人の60%近くが「よりサステナブルな生理用品に切り替えることに前向き」だと答え、20%は「すでに取り組んでいる」と回答しています。
生理は毎月経験しこれからも長く付き合っていくものだからこそ、なるべく環境に優しく生理期間を過ごせられればそれは理想的ですよね。Kelponのような環境へ配慮した生理用品を使って自分の体と向き合うことが、これからの時代の生理期間の過ごし方になるかもしれません。
Kelponを通して「生理のある人のために役立ちつつも、同時に環境を守ることができる」とVyldのチームは信じています。
参照:Vyld - Sustainable products made from seaweed | like cotton, just vylder
筆者から
今回は、ドイツ発の最先端生理用品「Kelpon」をご紹介しました。
海藻が「バイオマス海洋生分解素材」としてコットンやビスコースの代用になり、しかも、生理用品に生まれ変わるなんて!驚いた人も多かったのではないでしょうか。海藻にこんなにも可能性があることを知らなかったので、Kelponの登場にはとてもワクワクします。
海に優しいサステナブルな生理用品として、今欧米を中心に注目が集まる「Kelpon」。一般向けのクラウドファンディングが2022年9月に行われたばかりの、とてもホットな生理用品です。発売日の詳細はまだですが、着々と準備が進んでいる様子!
日本に比べてタンポン派の人が多いヨーロッパでは、イギリス発「Daye」のCBDタンポンや、タンポンとおりものシートが一つになったCallalyの「Tampliner」など新しいタンポンが次々と誕生しています。今回紹介したKelponを含め、生理用品に新しい選択肢が増えることはとても前向きなことだと思います。
ローンチまでもうすぐの海藻タンポンKelponからこれからも目が離せません!
この記事を書いた人
性教育・フェムテック領域に興味津々な20代のメンバーで構成される、ピルモット編集部による記事です。