井林雄太先生
内分泌代謝/糖尿病内科医師。平成20年大分大学医学部医学科卒業後、地元福岡の国立病院機構九州医療センターにて内科研修を積む。平成29年九州大学大学病院別府病院免疫・代謝学講座助教。現在は田川市立病院勤務しながら正しい医療知識の啓発活動も行っている(@drkotatsu)。日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医、日本内科認定医。日本内科学会、日本内分泌学会、日本糖尿病内科学会所属。
井林雄太先生
内分泌代謝/糖尿病内科医師。平成20年大分大学医学部医学科卒業後、地元福岡の国立病院機構九州医療センターにて内科研修を積む。平成29年九州大学大学病院別府病院免疫・代謝学講座助教。現在は田川市立病院勤務しながら正しい医療知識の啓発活動も行っている(@drkotatsu)。日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医、日本内科認定医。日本内科学会、日本内分泌学会、日本糖尿病内科学会所属。
過ごしやすい「秋」から、グッと寒い日が増え「冬」本番を迎えようとしているこの時期。なんだか調子が悪いな、と感じたり、手足の冷えを感じたりすることってありませんか。
もしかしたら、それは「自律神経」が関係しているのかもしれません。今回は「自律神経」の役割や整え方について紹介します。
季節が移り変わり寒くなってくると、なんとなく疲労感や頭痛などといった体調不良を感じる人もいるかもしれません。また、体の不調だけでなく、イライラする、やる気がないなどの心の不調を感じることも。
それは、気温の変化とともに、私たちの体にも変化が起こっていることが関係していると考えられています。
私たちの体の中には、「自律神経調節」という生きるために必要なさまざまな機能を調整する働きがあり、そのコントロールがうまくいかないと体調不良が起こってしまうことがあります。
「自律神経」とは、呼吸をする、体温を調整する、血液を全身に送る、内臓を動かす、食べたものを消化する、排便や排尿を調整する、など、生きるために必要な活動を、24時間自動的に調整してくれる働きを担っていて、主に脳の視床下部という場所によってコントロールされています。
「自律神経」には交感神経と副交感神経の2種類があり、交感神経は心や体を活動モードにする「アクセル」、副交感神経は心や体を休息モードにする「ブレーキ」の役割を持っており、これらの相反する2つの神経がバランスよく働くことで心と体の健康が保たれています。
交感神経は、体を「興奮」や「緊張」させる役割を持つ神経で、主に心と体を活発に動かすときに働きます。主に日中に優位になり、エネルギーを消費する働きを促します。
副交感神経は、体を「休息」や「リラックス」させる役割を持つ神経で、主に心と体を休息させるときに働きます。主に夜間に優位になり、エネルギーを確保する働きを促します。
極端な話、心や体を興奮させ活動モードにさせる「交感神経」が常に働いている状態では、体の休まる暇がないため緊張状態が続いて、頭痛や心臓がドキドキするなどの体調不良につながる可能性があります。
反対に「副交感神経」が常に働いている状態では、体が休息状態にあるため、朝起きられない、やる気が起きないなどの体調不良に繋がる可能性があります。
つまり、どちらかの神経が働き続けても、心や体に不調を感じてしまうため、やはり、交感神経と副交感神経がバランスよく働くよう、整えていく必要があります。
冬になると特に手先や足先など、体の「冷え」を感じる人もいるかもしれません。体が冷えるのは冬だけではありませんが、この時期の「冷え」はどうして起こるのでしょうか。
リモートワークなどで運動量が減ったり、普段なかなか運動をしない生活が続くと、筋肉量が減り、熱を作りにくくなるため、体が冷えやすくなります。
ほかにも「冷え性」の原因はさまざまありますが、実は「自律神経」も関わっているといわれています。
この季節、気温が下がり、思わず身震いすることもありますよね。体は冷えを感じると、内臓を冷やさないように自律神経が働いて、血液を内臓(体の中心部)に集めて体温を保ちます。
そのように血液が内臓に集まると、体の血のめぐりが悪くなり、末端まで血液が行き渡らなくなってしまうのです。その結果、手足が冷えてしまうというわけです。
さまざまな原因が考えられますが、中でも、ストレスと生活の乱れが「自律神経の乱れ」に大きく影響していると言われています。
ストレスがかかると、交感神経が優位になるといわれており、疲労が回復しにくくなったり、血圧や血糖値の上昇を起こすなど、なんとなく体調が悪い……というだけでなく、体に悪い影響を及ぼす可能性があるのです。
体の中で交感神経と副交感神経がうまく切り替わるように、日々の生活を見直してみましょう!
自律神経を整えるには、「規則正しい生活」「適度な運動」「ストレスを溜めないこと」「体を温める」「リラックスする」など、日々私たちにもできることがあります。
規則正しい生活の中でまず大切なのは睡眠と食事です。
睡眠については、朝起きる時間を一定にすることが大切。体内時計が乱れてしまうと、昼夜逆転になってしまったり、昼間にスッキリしない状態になることも。朝起きて朝日を浴びると体内時計がリセットされます。
適切な睡眠時間については、人によるので、5~9時間の間で自分にとって心地よい時間を心がけるとよさそうです。食事については、1日3食、バランスの良い食事をとることが大切です。
本来、消化・吸収は副交感神経優位のもの、つまりリラックスできる時間となりますので、ゆったりとした気持ちで食事をして、心や体が休まる時間になるよう心がけたいですね!
自律神経のバランスを保つためには適度に体を動かすことも必要です。
手首や肩をまわしたり伸ばしたりする手軽なストレッチやラジオ体操などゆっくりとした動きを続け、筋肉をほぐし、血流をよくすることを意識しましょう。ウォーキングは一定のリズムで15~30分ほど行うのも効果的です。
「ストレス」を溜めてしまうと、交感神経が優位となり、活動的な状態が続いて心も体も休まりません。
趣味など好きなことをしたり、アロマやマッサージなどで癒されたり、自分なりのストレス発散、リラックス方法を見つけておきましょう。
家では、38〜40℃のぬるめのお湯を浴槽に張り、15~30分浸かって、体を伸ばしましょう。体がゆっくり温まり、リラックスすることで、副交感神経が優位に働き、疲労回復効果が期待できます。
また、「温泉」に入ることも有効です。
温泉に入ると体を温める温熱効果、浮力や水圧によるマッサージ効果、温泉に含まれる成分による効果などが合わさってこれらが総合的に働くと、血流が増え、血管が拡張するため、血のめぐりがよくなり、疲労回復のみならず、鎮痛効果や代謝の促進などを促すとされています。
昔から、病気やけが、不調などを温泉で治す「湯治」という方法があるように、「温泉」は、心や身体をリラックスさせるだけではなく、自律神経を、ひいては体調を整えることができる方法の1つです。
今回、ご紹介したように「自律神経」である交感神経と副交感神経がバランスよく働くことで、心と体の健康を保つことができます。自律神経自体は環境に合わせて体内で自動的に調節されるもので、自分でコントロールできるものではありません。
でも、そのバランスを保つため、そして、きちんと機能してもらうためには、規則正しい生活やストレスを溜めないなど、自分でできることもあります。
寒い季節は体が縮こまりがちで、なかなかお布団から出たくないものですが、スッキリ目覚め、その日一日の活動をこころよく、心地よく行うために「自律神経」が整うような生活を心がけましょう。
あまりにも冷えやだるさなどの体の不調ややる気が起きない、イライラするなどの心の不調が改善されない時には、医師に相談しながら、体調を整えていきたいですね!
この記事を書いた人
FMラジオ放送局、IT系企業での仕事人生活を経て、フリーランスライター。
生理を扱う地上波番組やがんサバイバーの女性の暮らしをサポートするアイテムに関する記事執筆、
フェムテック関連の記事の制作を担当するなど、「誰もが自分らしく輝く」ことができるような情報発信を
心がけています。そのほか、メディア媒体、企業のオウンドメディア、 企業サイトのコンテンツ制作など、
さまざまな分野のライティングに携わっています。