島袋朋乃先生
産婦人科医師。平成28年に旭川医科大学医学部を卒業後、函館五稜郭病院、釧路赤十字病院を経て、現在は産婦人科医として市中病院で臨床経験を重ねる。総合病院やクリニックで産科、婦人科、生殖医療に携わる。日本医師会認定産業医。日本産科婦人科学会、日本産科婦人科内視鏡学会、日本生殖医学会所属。
島袋朋乃先生
産婦人科医師。平成28年に旭川医科大学医学部を卒業後、函館五稜郭病院、釧路赤十字病院を経て、現在は産婦人科医として市中病院で臨床経験を重ねる。総合病院やクリニックで産科、婦人科、生殖医療に携わる。日本医師会認定産業医。日本産科婦人科学会、日本産科婦人科内視鏡学会、日本生殖医学会所属。
最近、梅毒(ばいどく)という病気にかかる若い女性が増えています。
梅毒とは感染している人との性交渉やキス、箸・コップの使いまわしでうつったりしてしまう可能性がある性感染症です。この記事を読んで、梅毒に感染しないための予防方法を知りましょう。
また、梅毒は早期発見と早期治療が重要な病気です。梅毒の症状・治療方法についても詳しくまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
梅毒(ばいどく)は、おもに性交渉によってうつる性感染症の一種で、梅毒トレポネーマという細菌に感染して発症します。
梅毒は、梅毒にかかっている人との性交渉、キスやコップ・箸の使いまわしなど粘膜や皮膚の接触から感染する可能性がある病気です。
また、妊娠可能年齢の女性が梅毒にかかったまま妊娠すると、胎児にも梅毒が感染してしまう「先天梅毒」のおそれもあります。先天梅毒は骨や鼻、耳、皮膚、目、脳や脊髄に様々な病変を作り、お腹の中の赤ちゃんにも数々の影響をもたらしてしまうことがあります。
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梅毒に感染した直後に症状を自覚することはありません。しかし、感染したことに気付かず適切な治療を受けないまま時間が経ってしまうと、全身にさまざまな症状があらわれます。
梅毒の症状は時間の経過で4つの時期に分類されています。最初は、陰部のしこりや体の発疹などから始まり、一時的に症状の改善がみられることから、ときに治ったと勘違いしてしまうこともあるので症状の経過をあらかじめ把握しておくことが必要です。
梅毒に感染して数週間経つと、陰部や口・乳房・唇にしこりやできものができたり、体に発疹が現れたり、太ももの付け根のリンパ節が腫れたりします。さらに数週間たつと症状は自然によくなるため「もう病気は治った」と勘違いしてしまう人も少なくありません。この期間を第1期梅毒と呼んでいます。
第1期から3カ月くらいたつと、また体中に赤い小さな発疹が現れます。手足にはイラストのような発疹が現れたり、口の中には白っぽいできものができたりします。
これらの症状も数週間すると自然によくなるため「病院に行かなくても大丈夫だった」と思ってしまう人も少なくありません。この期間を第2期梅毒と呼んでいます。
自覚症状のないまま数年〜数十年が経過しても、約30%の人が血管や脳や神経・心臓などにさまざまな病気を発症します。具体的には以下の病気です。
これらの病気は心臓の血管にこぶができたり炎症をおこしたり、体が麻痺したり、歩くことや走ることが難しくなったり、記憶力が低下したりなど日常生活にさまざまな影響を与えます。晩期顕性梅毒の症状が現れてから治療を始めても、症状の完治は困難です。
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近年、梅毒の患者数が急増しています。どうして梅毒の患者数が急に増えているのか、その原因を探るためにさまざまな調査・研究が行われています。
インターネット上には「マッチングアプリが発達して、性交渉を気軽に不特定多数の人とする機会が増えた」「インバウンドなどで海外から持ち込まれた」などのウワサがありますが、本当の原因はまだよくわかっていません。
2022年は9月の時点で、2021年の1年間に報告された梅毒の患者数を上回っています。とくに、都市部の患者数が群を抜いて多いことが、今回の流行の大きな特徴です。
こちらを参考に編集部でグラフを作成:感染症発生動向調査で届け出られた梅毒の概要
また男女別の患者報告数を年齢別にみると、男性は20〜40歳代の患者数が多いのですが、女性は20歳代の患者数が突出しています。梅毒は20歳代の女性にとって、とくに注意すべき病気といえるでしょう。
引用:梅毒|東京都性感染症ナビ
では梅毒かどうかというのはどのように分かり、どのように治療していくのでしょうか。梅毒に関する一般的な診断・治療を紹介します。
梅毒は医師の診察と採血結果で診断されます。梅毒に感染してから3週間〜3カ月ごろには、特徴的な発疹やできものができます。問診と医師の診察だけで梅毒だと推測し、治療を開始するケースも少なくありません。
しかし、患者さんによってはアトピーや蕁麻疹、ヘルペスなどとよく似た発疹が出ることもあります。
本当に梅毒になっているかを正確に診断するためには、採血で梅毒トレポネーマ抗体と、梅毒に感染したときに上昇する抗カルジオリピン抗体の有無をそれぞれチェックする必要があります。
この2つの抗体がどちらも陽性の場合に、現在梅毒にかかっていると診断が確定されるのです。
梅毒の治療ではペニシリン系抗菌薬を1日3回服用します。治療期間の目安は以下のとおりです。
治療費の目安は2週間で1万円前後ですが、治療方針や医療機関によって異なります。場合によっては入院して治療をおこなう場合もあります。
2021年9月には、日本国内でもペニシリン系抗菌薬の注射薬が認可され、梅毒の進行度合いにより1〜3回の注射で治療を行うことも可能となりました。早期の梅毒であれば1回の注射で治療が完了することもあり、今後は梅毒の治療に注射薬を使用する機会が増えていくと考えられます。
一番大切なのは、飲み薬を使うか、注射薬を使うかではなく、ちゃんと治療が効いているかを確かめるためにも通院を続けることです。「薬をもらった、注射をしたからもう病院に行かなくていいや」では、梅毒が十分に治療できていない可能性があるので、医師に治療が終了したと言われるまでは必ず通院を続けましょう。
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梅毒は梅毒に感染している人との、皮膚や粘膜の接触で感染します。
具体的には腟(ちつ)性交や肛門性交(アナルセックス)だけでなく、口腔セックス(オーラルセックス)などがあげられます。
しかし、性交渉をしなくても梅毒になったという報告もあります。それは、梅毒のできものが唇や口の中にできているケースです。
できものからは梅毒の細菌が排出され、他の人に梅毒をうつしやすくなっています。感染者の唾液中にも梅毒トレポネーマが含まれるため、口の中などに小さなキズがあると、キスや箸・コップの回し使いなどが原因で、知らず知らずのうちに梅毒にかかってしまうケースもあるため注意が必要です。
もしも梅毒かもしれないと思ったら、まずは梅毒の検査を受けてみましょう。梅毒の検査・診断は以下の方法で受けられます。ただし、皮膚や陰部に発疹ができたなど症状がすでに出ているときは、市販の検査キットではなく医師の診察を受けましょう。
梅毒の検査キットは薬局では購入できないため、信頼できるインターネットショップなどで入手します。自分で検査をして結果を確認する方法と、検体を郵送して結果を調べてもらう方法があります。
保険証などは不要ですが、自宅に検査キットが郵送されてくる点と費用が数千円~1万円前後必要な点に注意が必要です。陽性の場合はあらためて医療機関を受診する必要があります。
梅毒の診断・治療もオンライン診療で受けられます。オンライン診療の流れの一例を紹介します。受診の際の参考にしてください。
自治体の保健所や保健センターでは、匿名・無料・予約制で梅毒の検査を受けられます。時間があるけどお金がない人や、誰にも知られたくない人、まずは梅毒かどうかを知りたい人に自治体の検査制度はおすすめです。
東京都の場合はほぼ毎日検査をおこなっており、検査1週間後に自分で結果を聞きに行きます。詳しくは各自治体のホームページを参考にしてください。
病院で梅毒の診断を受けるためには、泌尿器科・産婦人科・性感染症内科・皮膚科などを受診してください。診察・採血などをおこない、梅毒陽性の場合には薬を服用します。
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梅毒にかからないためには、自分だけでなくパートナーにも梅毒にかからないように注意してもらう必要があります。普段から性交渉の時にはコンドームを使用しましょう。
また、梅毒の感染を疑う場合には適切な診断・治療を受けましょう。梅毒の検査中、治療中はキスや性交渉は控えましょう。
また、梅毒は不特定多数の人との性交渉やキスなどをしていなくても、箸やコップの回し使いから感染する可能性がある病気です。いつ・どこから・誰から感染するかわかりませんから、感染の心配があるときにはパートナーにも検査を受けてもらうようにしたいですね。
パートナーに検査を受けるように勧めるときは「ニュースで梅毒が流行ってるって見たんだ。感染していないか心配だから、一緒に受けよう?」など、と伝えてみるとよいでしょう。
自治体などの検査はパートナーと一緒に予約できます。大切な人と一緒に梅毒の検査を受けるようにしましょう。
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コンドームを持つのは性別関係ない
梅毒にかかる患者さんは近年急激に増えており、なかでも女性は20歳台の患者数が感染者の大半を占めています。
梅毒は性感染症の一種で、感染者との粘膜や皮膚の接触が主な感染経路です。梅毒の感染を100%予防できるわけではありませんが、コンドームの装着は梅毒などの性感染症の予防効果が期待できると報告されています。
あなた自身と大切なパートナーを梅毒から守るために、コンドームの使用や定期的な性病検査をおすすめします。
参考
日本の梅毒症例の動向について Notification Trends Among Syphilis Cases in Japan 国立感染症研究所 感染症疫学センター・細菌第一部この記事を書いた人
看護師 保健師
大学看護学部卒業後、小児科・腎臓内科・循環器科で勤務。現在は看護師として働きながら、知識と経験を活かし、医療ライター・監修者として精力的に活動を続ける。モットーは~看護師の視点で「正しい知識」を「わかりやすく届ける」~