腟がどんなところなのかを知ろう

公開日 2022-12-16 更新日 2022-12-16

記事監修医

RN先生

産婦人科医として産科・不妊症・婦人科がんまで幅広く診療に従事。「ゆりかごから墓場まで」をモットーに様々な年代の女性に寄り添った診療を心がけています。 多数の臨床・研究の経験を活かして、医療ライターとしても活動中。

前回は「骨盤底筋群」が鍛えられるのかについて、筋肉の特徴を学びながら考えてみました。
今回は骨盤底筋と腟の関係について理解を深めていきます。

腟は赤ちゃんや経血の通り道

前回、医学的には腟がゆるんでいるという状態というのは定義されていないということを新たに知りました。
でも、実際に自分の体で「腟がしまる」ような感覚はあります。そこで、今回は腟がどういうものなのかを学んでいきたいと思います。

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それではゆるむ、ゆるまないという話題に入る前に、まず腟のかたちと基本的な役割を考えてみましょう。腟はどんな形をしていると思いますか?

筒状ですよね?女性器と子宮をつないでいる通り道というか。

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そうですね。基本的に腟は腟粘膜で覆われた筒のような形状をしています。

腟の形状イメージ画像
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出産の際に赤ちゃんの通り道になる、すなわち産道を形成するというのは腟の大事な役割のひとつですね。
ところで、生理の仕組みについては理解できていますか?

排卵した後に妊娠しなかったら、赤ちゃんのベッドとして準備していた血が出てくるんでしたっけ?

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女性の体には生まれた時から卵巣のなかに卵子があり、毎月ひとつ排出されます。これが「排卵」です。排卵された卵子は子宮の方へと移動します。
排卵期に性交渉をすると、精子が腟から子宮口を通って子宮の中に侵入し、卵子と出会います。

排卵前後は危険日といったりしますね。

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運良く受精し、受精卵が着床すると、妊娠が成立します。受精しなかった場合には、妊娠に備えて厚くなった子宮内膜が剥がれ落ちます。これが経血に変わり、子宮が収縮する力で体外に押し出されます。

妊娠に備えていたけれど要らなくなった血が出てくるのが生理ということですね。妊娠していなくても腟は通り道として使われているんですね。

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よく誤解されていることがあるのですが、処女膜は腟の蓋ではありません
処女膜には元から真ん中のところに小さな孔が空いています。これがないと、月経の際に経血が出せずに子宮に溜まってしまい、ひどい腹痛などの障害が生じます。

処女膜とは

初めてのセックスで、腟が開通するということではないのですね。

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女性器はお母さんのお腹にいる女の子の赤ちゃんにもあり、腟の入口は処女膜でふさがれています。
生まれた赤ちゃんが成長して初経を迎える頃には自然と処女膜に隙間ができ、経血を通せるように入口を不完全にふさいだ状態になります。

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生理があるということは経血の通る穴が空いているということで、腟の入口は閉じていないのが普通なのです。

腟はそもそも筒状で、経血が通れるようにツーツーになっているのが普通の状態なんですね。

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腟のかたちも年のとり方も人それぞれ

月経カップやタンポンが出てくるのは、腟がゆるんでいるサインといわれることがあります。腟の入口は空いているのが普通とのことですが、筒のサイズが変わることはあるのですか?
性交渉の頻度が多くてゆるくなる、逆に少なくてきつくなると聞くこともありますが、都市伝説ですよね?

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イラストでは空洞のように描かれますが、腟の内部は押し広げられない限りは、隙間がない状態になっています。
伸び縮みはしますが、腟の内部に隙間ができたり、成長した女性の腟のサイズが変わったりすることはありません

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ただ、体格や顔つきが生まれつき人によって異なるように、女性器の形や大きさも一人ひとり違います。処女膜が厚い人、腟が狭い人など、人それぞれです。

尿失禁時の体の構造

腟がゆるんで隙間ができるわけではないんですね。そうすると、月経カップやタンポンが出てくるのは正しい入れ方をしていないか、サイズが合っていないのかもしれないですね。

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ところで、生理が始まる頃、経血を出せるように穴ができて通り道になるわけですよね?
閉経したら、入口がふさがるなど、腟に変化が起きることはないのですか?

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「入口がふさがることはありませんが、閉経によって変わる部分はあります。
粘膜と皮膚の違いは分かりますか?

なんというか、イメージ的には質感が違うと思います。粘膜の方が濡れている感じというか。

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大雑把にいうと皮膚は体表にあり、粘膜は体の内側にあるという点が違います。
皮膚は空気や雑菌に触れるために角質で守られており、粘膜は表面が粘液で湿っています。濡れている感じというのはこのことですね。

腟は体のなかにあるものだから、皮膚ではなく粘膜で覆われているというわけですね。

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閉経すると女性ホルモンの量が激減しますが、その際に腟の細胞が減り、粘膜が萎縮します。
腟の蓋は閉じませんが、腟の壁は薄くなり乾燥するので、思春期・青年期とはまた違ったトラブルが増えてきます。

年をとると、ハリがなくなって潤いがなくなるのは、体の見える部分だけではないんですね。

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腟内はさまざまな常在菌のバランスで酸性に保たれています。
これは腟を通じて細菌が入ってこないようにするためですが、閉経後はこの細菌のバランスも崩れやすくなると言われています。

誕生前後 思春期 青年期 更年期
卵子の数が多い 生理が始まる
女性ホルモンの量が増える
処女膜に小さな孔
人により妊娠・出産 生理が終わる
女性ホルモンの量が減る
腟が乾燥

経血やおりものなど腟を通っていくものが少なくなると、腟にも変化があるわけですね。
ここまで聞いてくると、生理の始まりや生理周期、生理痛の重さや症状が人それぞれ違うように、腟のかたちや成長・加齢などでの状態の変化も人それぞれなんだなと思います。

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腟は閉じられないってどういうこと?

腟は通り道で形も人それぞれということですが、変形させることはできないのでしょうか?自分でも締まる感覚があるのですが、腟には筋肉はないのですか?

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腟を自力で閉じられると考える人がいますが、そのようなことはありません
もし仮に自力で閉じられるなら、性暴力を受けた際に挿入されることも防げるはずですが、できないですよね。

そうですね。閉じて拒否するのは不可能ですね。

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腟の壁には筋肉の層がありますが、これは多くが不随意筋で、動かすことはできません。
また、腟周辺の骨盤底筋のなかには自分の意思で収縮できる筋肉もありますが、その筋肉の力がどれほど強くても閉じることまではできないはずです。

骨盤底筋を鍛えると、おしっこを我慢するように、経血も溜めておけるという話を聞きます
なんとなく出るものを我慢するなんて体に悪そうな気もしますが、そういったことは可能なのでしょうか。

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腟は、受精卵が成長して女の子の体をつくっていく時に、腟のもとになる組織が変化してできます。
この時、腟の上3分の2と下3分の1は違う種類の組織からできるため、上下で少し構造が異なっています。骨盤底筋などがあるのは腟の下3分の1のあたりまでです。

腟が上下で違うなんて、初めて聞きました!

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骨盤底筋のうち、自分で動かせるのは尿道括約筋の一部と肛門括約筋などの一部です。そのおかげで、便や尿をためることができます。
しかし、直腸や膀胱の内圧が一定の水準を上回ると、尿道括約筋や肛門括約筋のうちの不随意筋が弛緩(しかん)するため、いつまでも我慢することはできず、いずれはお漏らしすることになります。

限界までたまると、強制的に出すような仕組みになっているんですね。

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腟の下3分の1のところには、尿道括約筋や肛門括約筋の腟バージョンにあたる、球海綿体筋(きゅうかいめんたいきん)があります。
これは自分の力である程度は動かすことができる筋肉なので、もしかしたら腟を締めることができる人もいるのかもしれません

すると、経血も多少は溜められるということでしょうか。

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もし、腟周辺の筋肉のトレーニングというものがあるならば、鍛える対象は球海綿体筋ではないかと推測します。
ただ、球海綿体筋をいくら鍛えたとしても、腟の入口を完全に締めて、経血を漏らさないようにすることは難しいでしょう。そもそも腟がそのような解剖構造になっていないからです。

処女膜とは

やっぱり経血は出てくるのが自然な体のしくみですよね。
生理がダラダラ続くのは、腟周りの筋肉が弱くて血が押し出せないせいではないんですね。

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経血を押し出しているのは子宮で、腟はあくまでも通り道です

腟は閉じないものだけれど、腟周りに鍛えられる筋肉はあるだろうということなので、次回は腟トレグッズについて、考えてみたいと思います。

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今回学んだこと

■腟は赤ちゃんや経血の通り道
■締められる人もいるかもしれないけど完全には閉じられない

【参照】

処女膜形成 | ゆかりレディースクリニック 神戸市三宮にある婦人科
閉経後の膣乾燥感、性交痛、頻繁な尿意 – 兵庫県医師会
女と男のディクショナリー HUMAN+
女性の内性器 - 22. 女性の健康上の問題 - MSDマニュアル家庭版
腟 - 1年生の解剖学辞典Wiki

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