フィデスレディースクリニック
松本智恵子先生
滋賀医科大学卒業。京都大学医学部婦人科学産科学教室に入局後、
大津赤十字病院、洛和会音羽病院などを経て、フィデスレディースクリニックで勤務。
産婦人科専門医、日本女性医学会会員。
フィデスレディースクリニック
松本智恵子先生
滋賀医科大学卒業。京都大学医学部婦人科学産科学教室に入局後、
大津赤十字病院、洛和会音羽病院などを経て、フィデスレディースクリニックで勤務。
産婦人科専門医、日本女性医学会会員。
ピルは生理痛の緩和をしながら避妊ができるアイテムです。しかし、ピルは継続することで避妊効果が得られるので、ランニングコストも気になります。
ピルの処方に保険が適用されれば安く手に入れられるかもしれません。
今回は、ピルが保険適用になる条件や一般的なピルの種類と値段について解説します。ピル服用で年間にどれだけコストがかかるのかも合わせてみていきましょう。
生理に関して何らかのトラブルを抱えている女性は多く、保険適用になればいくらかコストが抑えられます。しかし、自覚症状に関しては個人差が大きく、症状によっては保険適用外になることもあります。
保険適用といった場合の「保険」は健康保険(公的医療保険)を指します。健康保険は社会保険の仕組みの一つで、誰もが公平に医療を受けられるよう、加入者は保険料を支払い、ケガや病気などのに対して一時的に給付が受けられるようになっています。70歳未満の成人女性の場合、治療の自己負担額は全額の3割です。
ピルを保険適用で処方してもらうための条件は、ピルの服用が「月経困難症などの治療」になるかどうかです。つまり、問診や検査結果から医師が治療や症状改善のために「ピルの服用が必要だ」と判断した場合に保険適用になります。
患者が日常生活が送れないほどの激しい痛みや、子宮に疾患があり異常な量の出血を引き起こしている場合の治療の選択肢のひとつとして、ピルによる治療がを提示されする場合があります。
ただし、保険適用で処方してもらえるピルは決まっていて、ピルをホルモン薬として投与したときに疾患や症状に対して効果が認められているものだけです。保険適用で処方される場合には、自費診療で処方されるものとは違うピルが用いられます。
治療のためにピルが処方される病気は、主に「激しい生理痛(月経困難症)」です。
月経困難症を起こす病気にはいくつかありますので、それぞれ、どういった症状の病気なのか、ピルの処方が保険適用となるのはどのようなケースなのか、詳しくみていきましょう。
激しい生理痛を起こす子宮の病気には「子宮内膜症」「子宮筋腫」「子宮腺筋症線維症」などがあります。こういった病気が原因の生理痛の場合は、ピルを服用することで病気や症状が改善することが認められています。
症状と保険適用となる条件身体症状:ひどい生理痛、性交痛、経血過多による貧血症状、不妊など
検査や症状の結果、医師により治療が必要と判断された場合に中用量もしくは低用量ピルが治療に用いられ、保険が適用されます。
機能性月経困難症とは、痛みの原因を引き起こす子宮や卵巣の病気がないにもかかわらず、生理痛がひどい状態をいいます。
思春期以降の女性に多くみられます。なかには、検査した時点では原因となる疾患がなくても、将来的に子宮内膜症を起こすリスクがありますが見つかることもあります。
症状と保険適用となる条件
精神的症状:抑うつ、脱力感、疲労感、イライラなど
身体的症状:下腹部痛、腰痛、頭痛、吐き気、下痢など
生理痛(下腹部痛、腰痛など)が強くて一日の行動が大幅に制限されるような場合に、低用量や中用量のピルが用いられます。痛み止めを使用しても痛みが改善されないケースでは保険適用です。
一般的に避妊や生理の日をずらす場合、ニキビやPMSの改善が目的の場合には保険適用応外となります。ピルの代金は全額自費で支払うことになります。
避妊が目的の場合には、自費でピルを使用することになります。もし保険が適用されるピルを希望する場合には、全額負担になるため、かなり高額になります。
避妊するときには生理初日~5日の間にピルを飲みはじめ、できるだけ毎日決まった時間に続けます。ピル(1シート21日分)を飲み切ると、そのあと1週間で少量の生理出血が起こります。
治療目的で処方される保険適用のピルは、残念ながら避妊目的では処方されません。ただし、避妊の効果も期待できます。
お泊りや大切なイベントに合わせて生理をコントロールしたい場合は、自費での購入になります。
生理を遅らせるには生理がくる5〜7日前から、生理を早めるには生理が来てから5日以内にピルを飲み始めます。服用中は生理がこない状態が続き、ピルをやめると2~3日で生理がきます。
一時的な排卵コントロールであれば、必要な期間に服用するだけで飲み続ける必要はありません。
PMS(月経前症候群)とは、排卵で女性ホルモンが変動することで心身にさまざまな症状が起こり、生理が始まるとこれらの症状が改善するものです。
主な症状は下記の通りです。
精神症状:情緒不安定、イライラ、抑うつなど
自律神経症状:のぼせ、めまい、倦怠感など
身体症状:腹痛、頭痛、むくみ、お腹の張りなど
症状は生理の前(3~10日ほど)にあらわれ、生活に支障を感じる人は5.4%程度とされています。
ピルにはたくさんの種類があり、それぞれに扱うクリニックでも値段が異なります。種類ごとによって、自費診療と保険診療で、どの程度費用の差がでてくるのか見てみましょう。
ここでは、日本の病院で取り扱われている代表的なピルの種類と値段の相場、そして1年間でかかるコスト(自費診療の場合と保険適用の場合)を表にまとめました。
※診察、検査にかかる費用は別です。
低用量ピルは「トリキュラー」「ラベルフィーユ(トリキュラーのジェネリック)」「アンジュ(トリキュラーのジェネリック)」「マーベロン」「ファボワール(マーベロンのジェネリック)」などが使われます。
避妊や生理痛の緩和に広く用いられ、これらは保険適用外となるため、ピルの購入費用は全額(1シートあたり2,000~3,000円)支払うことになります。
月経困難症の治療の場合には保険適用となるピルが使用されることが多く、薬代としては月々800〜2000円程度です。(これに加えて初診料や再診料といった費用がかかります)
種類 | 約1カ月分(1シート)の値段 | 年間費用(12カ月分) | 保険適用の有無(適用時の自己負担額) |
---|---|---|---|
トリキュラー | 2,500〜3,500円 | 3万〜4万2,000円 | 適用不可 |
マーベロン | 2,500〜3,500円 | 3万〜4万2,000円 | 適用不可 |
ファボワール | 2,000〜3,500円 | 2万4,000〜4万2,000円 | 適用不可 |
ラベルフィーユ | 2,500~3,500円 | 3万〜4万2,000円 | 適用不可 |
ルナベルULD | 5,000〜6,700円 | 6万〜8万円 | 治療の場合は適用可 |
ヤーズフレックス | 6,700〜8,400円 | 8万円〜10万円 | 治療の場合は適用可 |
現在、使用されている国産の中用量ピルは「プラノバール」の1種類のみです。
月経困難症や子宮内膜症、月経異常(経血過多など)の症状改善、月経周期異常に用いられる場合に保険適用となります。この治療による服用でも避妊効果が得られます。
避妊や月経コントロールに対して使われる中用量ピルは自費になります。
ただし、避妊や月経コントロールを目的とする場合には、副作用なども考慮して中用量ピルではなく、低用量ピルや超低用量ピルを用いることが多いでしょう。
(適用時の自己負担額) | |||
---|---|---|---|
プラバノール | 4,000〜8,000円 | 4万8,000〜9万6,000円 | 治療の場合は適用可 |
アフターピルは緊急避妊薬として使用されるピルで、主に「ノルレボ」が使われます。
避妊目的のためすべて自費となります。取り扱っているクリニックが少ないこともあり、値段は8,000~2万円と大きな差があります。
性交渉後、12時間以内の服用で99%の避妊ができるため、できるだけ早い服用が望まれます。もしも休日診療で処方してもらう場合、追加費用がかかるクリニックもあります。
種類 | 1回分 | 保険適用の有無 |
---|---|---|
ノルレボ | 1万〜2万円 | 適用不可 |
レボノルゲストレル(ノルレボのジェネリック) | 8,000〜1万1,000円 | 適用不可 |
エラワン(海外産) | 1万3,000〜2万5,000円 | 適用不可 |
日本ではピルを服用しようとしても、市販されていないため病院で処方してもらう方法が一般的です。
しかし、避妊目的となると受診へのハードルが高く、オンライン薬局を介した「個人輸入」という形で気軽にピルを購入する人もいます。確かに通販だとセールやまとめ買い、ポイント還元などもあり、自費の処方よりも安く手に入れられます。
ですが、通販で流通しているピルには偽物やホルモンの配合量が不明なものも多く、避妊効果に確証がありません。
ピルはホルモンバランスを左右する薬です。体質や生活習慣、持病によっては副作用などのリスクも高まるため、コストだけにとらわれず安全性にも十分に注意を払いましょう。
ピルが保険適用となる条件は、月経困難症や生理に伴う症状の改善として医師が処方することです。医師が処方のため診察する際に服用する人の体質や症状に合わせて、服用するピルの種類を決めていきます。
コストも気になるところですが、副作用など身体への負担を抑えながら、安全に使用することが第一優先です。避妊や生理の日をずらす目的であれば保険適用外となりますが、もしも生理期間や経血量に不安があるようなら、まずはクリニックで相談してみるといいでしょう。
【参照】
月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)|公益社団法人 日本産科婦人科学会この記事を書いた人
美容医療に関する記事の執筆や監修を手がけている。
総合病院で婦人科や外科系病棟で勤務し、多くの経験を積むも出産・育児のため退職。訪問看護ステーションと美容皮膚科・形成外科クリニックとのダブルワークを経て、5人目の出産を機に看護師の資格と経験を活かして美容・医療ライターとして活動の幅を広げている。
【実績】
・医療・美容・健康系から子育てまで多数の分野で執筆
・男性美容メディア「BiDAN」で美容の専門家に認定
・マイナビ「おすすめナビ」のエキスパートに認定
・脱毛サイト「ダツモウ.com」の監修者
・男性美容メディア「DAN LEAD」の記事監修
・子育て相談サイト「子育て相談ドットコム」では豊富な経験からQ&Aに回答中