ピルの休薬期間は「避妊なし」でOK?休薬期間の避妊効果と注意点

公開日 2021-11-29 更新日 2021-11-29

記事監修医

フィデスレディースクリニック

松本智恵子先生

滋賀医科大学卒業。京都大学医学部婦人科学産科学教室に入局後、 大津赤十字病院、洛和会音羽病院などを経て、フィデスレディースクリニックで勤務。
産婦人科専門医、日本女性医学会会員。

「ピルの休薬期間はコンドームを着用しなくてOK?」

そんな疑問はありませんか?

結論から言うと、ピルの休薬期間は基本的には「コンドームなし」でもOKです。
正しくピルを飲めている方であれば、休薬期間にピル以外の方法で避妊をしなかったとしても妊娠することはありません。
ただし、ピルの飲み忘れがあるケースや、服用中に下痢や嘔吐があるケースでは、注意が必要です。

この記事では、ピルの休薬期間に妊娠をしない理由、妊娠の可能性があるケースを詳しくご紹介します。ピル服用中に妊娠してしまうのが不安な方は、ぜひ参考にしてください。

休薬期間に妊娠しない2つの理由

ピルイメージ

出典:PexelsのAnna Shvetsによる写真

ピルの休薬期間に妊娠しない大きな理由としては、「ピルは卵胞の成長を抑えるため排卵が起こらないこと」と、「子宮内膜が剥がれる時期のため着床しないこと」があげられます。

この2つについて、それぞれご紹介します。

ピルは卵胞の成長を抑えるため排卵が起こらない

ピルが避妊に大きな効果を示す理由に、「排卵の抑制」があります。

ピルを飲んで女性ホルモンを取り込むと、ホルモンを感知した脳は「女性ホルモンは十分にある」と勘違いします。
女性ホルモンが十分にある状態では、女性ホルモンの分泌を促す必要がないため、脳から卵巣を刺激するホルモンは分泌されません。
すると、卵巣内の卵胞が育たず、排卵が抑制されるのです。

そもそも排卵がなければ妊娠できないため、休薬期間であろうとも妊娠する心配はありません。

子宮内膜が剥がれる時期のため着床しない

基本的には、休薬期間(もしくは偽薬期間)に入ると生理のような出血があります。
ピル服用中の出血は、排卵を起こしていないため、厳密には生理とは呼ばず、消退出血と呼びます。

生理では卵巣から分泌されるホルモンのはたらきによって排卵に向けて子宮内膜が厚くなりますが、ピル服用中は卵巣からのホルモン分泌がストップし、低用量の女性ホルモンだけで内膜が形成されるため、子宮内膜はほとんど厚くなりません。
そのため、消退出血は通常の生理より軽くなるケースがほとんどです。

休薬期間(もしくは偽薬期間)には子宮内膜を維持する女性ホルモンがなくなるため、子宮内膜を維持できなくなり消退出血がおこります。
そのため、生理のときのように排卵はしないですが、生理と同様に子宮内膜が剥がれる時期であり、着床が難しい状況にあります。

さらに、ピルを正しく飲んでいれば次の排卵も抑制されるため、仮に精子が子宮内で生き残っていたとしても妊娠することはありません。
まれに消退出血が起こらない人もいますが、全体の1%ほどとかなり少なく、ほとんどの人は休薬期間中に消退出血が起こります
消退出血が起こるのは、休薬期間に入ってから2~3日目が多いといわれます。休薬期間中に消退出血があれば、妊娠している可能性もありません。

そもそも休薬期間の意味とは

休薬期間とは、一定期間、服用をお休みする期間です。通常は28日周期のうち7日間、ピルを飲まない期間を設けます。

ピルには21錠タイプと28錠タイプがあります。
21錠タイプでは、飲み終わったあとに7日間の休薬期間を設けます。
28錠タイプでは、最後の7錠がプラセボと呼ばれる偽薬になっています。薬剤成分を含まない偽薬を飲むことによって、飲み忘れを防止できるようになっています。

ピルに休薬期間がある理由は、「妊娠していないことを確認するため」です。

休薬期間で妊娠しているかどうかの確認ができる

消退出血があることで、妊娠しているかどうかを確認することができます。

ピルを飲み続けていた場合、もしも飲み忘れなどがあって妊娠していたとしても、妊娠していることに気が付かないケースがあります。
しかし、休薬期間に消退出血を確認できれば、妊娠していないことの確認にもなるのです。

ピルを飲んでいても妊娠する可能性があるケース3つ

ピルを正しく飲めていれば、休薬期間中に妊娠する可能性は極めて低いです。ただし、飲み忘れなどがあると妊娠する可能性が高まります。

ここでは、特に注意すべきケースを3つご紹介します。

休薬期間明けの1日以上の飲み忘れは妊娠の可能性が高まる

排卵が起こるのは、通常、次の生理開始予定日の約2週間前です。卵胞は生理開始日から少しずつ大きくなっていきます。
つまり、休薬期間中にも卵胞は少しずつ大きくなっているのです。
休薬期間明けにピルを正しく飲み始めれば、卵胞の成長は再び止まり排卵も抑制されますが、ここで飲み忘れた場合は注意が必要です。

自然周期における生理開始日から8日目の卵胞は、約10㎜。その後、1日あたり2㎜ずつ大きくなり、約20㎜で排出されます1)。休薬期間中にも同じように卵胞発育は再開するため、早ければ休薬7日目に卵胞径が12mmに達するという報告もあります。
ピル服用開始日に卵胞径が10mmの場合には、排卵した女性が0%と報告されています。しかし、卵胞径が14㎜では36%、18㎜では93%が排卵することが分かっています2) 3)。卵胞発育が進んでからピル服用を開始しても、排卵は抑制できない可能性があるのです。

つまり、休薬期間後に1日以上飲み忘れてしまうと卵胞が育ちすぎてしまい、その後ピルを正しく服用したとしても、排卵してしまう可能性が高くなるのです。
また、休薬期間前の飲み忘れによっても卵胞の成長が始まるため、休薬期間が7日以上にならないように注意が必要です。

休薬期間前後に飲み忘れがあった方は、排卵の可能性が高まるため、その月はコンドームを併用したほうがいいでしょう。

服用期間中に嘔吐や下痢があった場合

ピルを服用してから3時間以内に、嘔吐や下痢があった場合も注意が必要です。経口でホルモンを摂取するピルは、嘔吐や下痢があると成分が吸収されない可能性が高まります。
結果として飲み忘れと同じ状態となり、卵胞が育ちすぎて排卵する可能性が高まります。

特に、休薬期間前後の嘔吐・下痢症状には注意しましょう。休薬期間中からの排卵の成長を抑えられなくなり、排卵してしまう可能性が高まります。
ピルを服用してから3時間以内に嘔吐してしまった場合には、飲み忘れたときと同じように、できる限り速やかにもう一度服用し、さらに翌日も定時に服用するようにしましょう。

24時間以上嘔吐または重度の下痢が続いている場合は、一旦服用を中止して、回復してから飲み忘れたときと同じように対応するといいですね。

休薬期間の後半に避妊なしで性交渉をした場合

休薬期間の後半には、避妊をしたほうがいいでしょう。精子は最長1週間ほど子宮内で生きられるといわれるため、もしも飲み忘れなどによって排卵が起こってしまった場合には妊娠の可能性が高まります。
ピルには排卵の抑制以外にも、精子を子宮内に侵入しづらくしたり、子宮内膜が厚くならなくなったりと、複合的な効果で妊娠を予防しますが、排卵が起こると妊娠の可能性も高まります。

飲み忘れが続いてしまった場合には、排卵してしまうことがありますので、コンドームなどの避妊ができていなかった場合には、ピル内服中であったとしても緊急避妊ピルの服用も考慮しましょう。

休薬期間に生理(消退出血)がない場合は妊娠の可能性も

基本的には、休薬期間中に消退出血があれば妊娠の可能性はありません。休薬期間中に避妊なしで行為をしたとしても、ピルを飲み忘れなく服用できている場合には、妊娠する可能性はほとんどないといえます。

ただし、消退出血がない場合には注意が必要です。
消退出血がなくなるケースは全体の1%ほどとかなり少ないため、正しく飲めていない可能性があるときは妊娠を疑いましょう。
妊娠の可能性がある場合は市販の妊娠検査薬で妊娠の有無を確認しましょう。妊娠していない場合は、今まで通りピルの服用を続けて問題ありません。

休薬期間にもコンドームを使おう

コンドームイメージ

出典:Pexelsのcottonbroによる写真

ピルを飲んでいるからといって、コンドームを使用しないのはおすすめできません。ピルは妊娠を防ぐことはできても、性病は防ぐことはできないからです。
また、飲み忘れによる妊娠の可能性を避けるためにも、日頃からコンドームを使用しておくのが安心です。

休薬期間中は出血もあるため、コンドームなしの性交渉では感染のリスクも高まります。出血のある休薬期間にはなるべく性交渉を避け、コンドームを使用するようにしましょう。

休薬期間は妊娠確率が低い!

休薬期間は、避妊なしでも基本的に妊娠する可能性は低いといえます。
ただし、飲み忘れがある場合は排卵してしまう可能性があるため注意しましょう。特に、休薬期間明けの飲み忘れや嘔吐・下痢には注意が必要です。
飲み忘れに対処するためにも、休薬期間には避妊をしておいたほうが安心といえるでしょう。

もしも妊娠が心配な場合は、お近くの医療機関へ受診し相談するようにしてくださいね。

【参照】

1)​​古井辰郎, 寺澤恵子, 森重健一郎. やさしくわかる 産科婦人科検査マスターブック 第3章 生殖内分泌分野 超音波による卵胞発育、排卵検査. 産科と婦人科 (87):253-256, 2020
2)低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤ガイドライン
3)Baerwald AR, Olatunbosun OA, Pierson RA.: Effects of oral contraceptives administered at defined stages of ovarian follicular development. Fertil Steril 2006, 86:27-35 (II)

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