ミレーナは保険適用される?生理痛や避妊対策に使うときの料金と効果を紹介

公開日 2022-02-07 更新日 2022-02-07

記事監修医

フィデスレディースクリニック

松本智恵子先生

滋賀医科大学卒業。京都大学医学部婦人科学産科学教室に入局後、 大津赤十字病院、洛和会音羽病院などを経て、フィデスレディースクリニックで勤務。
産婦人科専門医、日本女性医学会会員。

避妊の方法は、低用量ピルやコンドームだけではありません。
ミレーナと呼ばれる避妊リングを子宮内に装着すると、5年間の妊娠率が0.1〜0.8%と極めて低くなります。

しかし、「子宮内に装着って痛くないの?」「費用が高そう」と装着を諦めてしまうケースもあるかもしれません。

この記事では、避妊リングの装着に保険適用されるのか、低用量ピルとの違いはどこなのかを解説します。また、装着の注意点への疑問にもお答えします。

ミレーナは症状によって保険適用が可能

ミレーナの装着は、生理の症状によって保険適用されるケースがあります。保険が適用される症状は、過多月経月経困難症です。

過多月経とは、通常よりも生理に伴う出血の量が多い状態です。
また月経困難症とは、生理の際に下腹部痛や頭痛、腰痛などが起こる病的症状です。月経困難症は、初経後閉経前の女性の25%以上に認められるとの報告もあります。
主な月経困難症の症状は、下腹部痛や腰痛、頭痛、吐き気などです。過多月経や月経困難症の症状があれば、ミレーナの装着費用は保険適用となります。

ただし、症状がなく避妊目的の場合は保険適用外となり、費用はクリニックによって値段が異なります。保険適用外となる条件は、低用量ピルと同様と覚えておきましょう。

ミレーナの仕組みと効果

ミレーナには、過多月経や月経困難症の症状緩和、避妊の効果が期待されます。
ここでは、ミレーナの仕組みを解説したうえで、その効果を説明します。

ミレーナの避妊効果とその仕組み

ミレーナは避妊リング(子宮内避妊具:IUD)の一種で、T字の形をした合成樹脂でできています。女性ホルモンの一種である黄体ホルモン52mgを含んでおり、5年間持続して黄体ホルモンの放出が行われる仕組みです。
これを子宮内に装着することで、子宮内膜を薄く保ち、妊娠しにくい状態を保ちます。また、子宮内への精子の侵入を抑制して避妊します。万が一、受精してしまっても受精卵の着床を抑制します。

過多月経・月経困難症への効果

ミレーナには、過多月経や月経困難症の症状を和らげる効果があります。

ミレーナを挿入することで、黄体ホルモンが子宮内膜の増殖を抑え、子宮内膜を薄くすることによって経血量を減らし、生理痛を軽くする効果があります。過多月経や月経困難症では、子宮内膜が過剰に増殖することで、生理の際に出血量が増えたり脱落しにくくなって炎症を起こしたりします。

ミレーナと低用量ピルの違い

ピルイメージ画像

ミレーナと低用量ピルは、どちらも避妊や月経困難症に用いられる方法です。効果は同じと勘違いされがちですが、実は避妊率や避妊のメカニズムに違いがあります。

大きな違いは、低用量ピルは排卵自体を抑制する効果がある点です。ミレーナは、排卵は通常通り行われ、万が一受精が起こったときに子宮内膜への受精卵の着床を防ぎます。

それぞれの違いを表にまとめてみました。

《ミレーナと低用量ピルの比較》

避妊方法の種類ミレーナ低用量ピル
妊娠率※0.1〜0.8%8%
方法避妊リングの装着内服薬
継続期間5年間服用期間中
メカニズム物理的に着床を防ぐ、子宮内膜を薄くする、精子の侵入を防ぐ女性ホルモン分泌抑制による排卵抑制、子宮内膜を薄くする、精子の侵入を防ぐ

※飲み忘れを含めた一般的な使用による使用開始1年間の失敗率(妊娠率)
日本産婦人科学会「低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン」より著者作成

低用量ピルは毎日服用しなくてはなりませんが、ミレーナは装着後5年間有効です。妊娠率もミレーナのほうが低く、避妊効果の高いことがわかります。

ただし、ミレーナは子宮内膜で受精卵の着床を抑制するため、子宮外妊娠は回避できません。子宮外妊娠とは、子宮内膜ではない場所に受精卵が着床して妊娠する病態です。
例外的な妊娠ですが、ミレーナを装着していても妊娠率が0%ではないことに注意しましょう。

ミレーナを使うときの副作用と注意点

ミレーナは、過多月経や月経困難症の症状を緩和するだけでなく、避妊効果も高いことがメリットです。
一方で、副作用や注意点もあります。ミレーナ装着の前に知っておきたい注意点を解説します。

装着後に一時的な副作用が起こる可能性もある

ミレーナの装着後、数日間は出血や下腹部痛、腰痛、おりものの増加などの症状が現れる可能性もあります。
ただし、必ずしも上記の症状が起こるわけではありません。体質や体調によって、症状の現れ方に違いがあります。

また、ミレーナ装着によって、生理期間の延長や生理期間外の出血、生理周期の変化、腹痛などの副作用が見られるケースもあります。
一般的には、副作用の症状は一時的です。しかし症状が続く場合や、症状がひどい場合は医療機関を受診しましょう。

装着後に数回診察が必要

ミレーナ装着後、効果の切れる5年後まで放置してよいわけではありません。ミレーナは、気付かないうちに位置がずれてしまうことがあります。
装着後すぐは、医師の指示に従って数カ月に一度、安定したら1年に一度の受診が必要です。

また、抜去糸をひっぱらないように注意し、違和感がある場合はすぐに医療機関を受診しましょう。子宮腺筋症や子宮筋腫がある場合、ミレーナが自然脱出して効果が十分に現れないケースもあります。

5年に1回の頻度で入れ替えが必要

ミレーナの効果は約5年ですが、必ずしも5年間効果が持続するものではありません。そのため、装着して5年経つ前に交換または抜去が必要です。
ただし、妊娠を希望する場合や低用量ピルへ切り替えたい場合には、いつでもミレーナを抜去できます。

「ミレーナの装着や抜去って大掛かりなのでは?」と思われるかもしれませんが、装着は5分程度、抜去も短時間で実施可能です。

ミレーナの料金・費用

ミレーナの費用は、保険が適用される場合と自費診療の場合で大きく異なります。

そもそもミレーナ装着には、ミレーナの料金を含む装着費用と定期検診の費用がかかります。ミレーナは装着したら終わりでなく、定期的な検診が必要です。医師がずれや脱出がないかを確認します。
おおよそのミレーナ装着の費用は、以下のとおりです。

保険適用の有無保険適用自費診療
装着費用1万円程度5万円〜10万円
定期検診2千円程度/回3千円程度/回
抜去千円程度5.5千円程度

過多月経や月経困難症の症状がある場合は、3割負担で受診できます。定期検診も保険が適用されるため、診察やミレーナ装着、定期検診など全体の費用は2万円以下が一般的です。

避妊目的でミレーナを装着する場合は、保険適用されずに自費診療となります。
保険適用の場合よりも費用負担は大きくなりますが、ジェネリックで比較的費用の安い低用量ピル、ファボワールを5年間服用すると12万円です。低用量ピルを服用するより、ミレーナのほうがトータルコストを抑えられます。

まとめ

ミレーナとは、子宮内膜の増殖抑制や、精子の侵入や受精卵の着床を防ぐ器具です。子宮内にT字の器具を装着して使用します。

避妊目的の場合は保険適用外ですが、過多月経や月経困難症などの症状があるケースでは保険適用の範囲となります。

診察やミレーナ装着、定期検診を含む全体の費用は、自費診療でおおよそ6〜10万円。保険適用なら、3割負担で2万円弱です。
同期間ミレーナを装着、または低用量ピルを服用した場合、ミレーナのほうがトータルコストを安く抑えられます。

注意点は、装着後は一時的に副作用が現れたり、定期的な検診が必要だったりすることです。

副作用や注意点などのデメリットを理解し、正しい知識をもってミレーナを利用しましょう。

【参考】

日本女性心身医学会「女性の病気について」
日本産婦人科医「月経困難症」
日本産婦人科学会「低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン」

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