骨盤底筋について正しく知ろう

公開日 2022-11-25 更新日 2022-11-25

記事監修医

RN先生

産婦人科医として産科・不妊症・婦人科がんまで幅広く診療に従事。「ゆりかごから墓場まで」をモットーに様々な年代の女性に寄り添った診療を心がけています。 多数の臨床・研究の経験を活かして、医療ライターとしても活動中。

前回は女性の体を知る上でとても大切な「骨盤」をとりあげました。
今回は骨盤のなかでも「骨盤底筋」についてとりあげます。

骨盤底筋という名前の筋肉もない?

前回は「骨盤」について学びました。骨盤は「骨と筋肉でできた内臓を入れておくための入れ物」とイメージするといいんでしたよね。

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そうですね。骨盤底筋は骨盤の底で内臓を支えている筋肉だと、紹介しました。
では、次の図のなかのどこが骨盤底筋だと思いますか?

骨盤底筋を下から見た図

骨盤の底にたくさんの筋肉がはしっていますが、骨盤底筋という名前がありませんね。

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骨盤底筋というのは肛門挙筋、尾骨筋、深会陰横筋、球海綿体筋、坐骨海綿体筋、尿道括約筋などの筋肉の総称で、骨盤底筋群と呼ばれることもあります。

前回、骨盤という名前の骨はないと学びましたが、骨盤底筋という名前の筋肉もないんですね。

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その通りです。骨盤の底の部分で内臓を支える役割をしている筋肉をまとめて、骨盤底筋と呼んでいます。
骨盤底筋が実際どのようになっているのか、解剖学的には結論がでていませんが、一説には、次のように3層に分かれるとも言われています。

骨盤底筋の3層

いろんな筋肉が集まって、内臓を支えているんですね。

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骨盤底筋のもっている2つの役割とは?

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骨盤底筋には内臓を支えるという役割のほかに、もう一つ大事な役割があります。どういう役割かわかりますか?

「骨盤底筋」は尿漏れの話とセットで出てくるイメージがあります。

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骨盤底筋には他にもさまざまな機能があり、重要な役割のひとつに排泄のコントロールがあります。尿道括約筋や肛門括約筋には尿道や肛門を閉じておく役割をもっています。
話を簡単にするために、排尿を例にとって考えてみましょう。排尿時には、尿道括約筋のなかの一部の筋肉が弛緩(しかん)することで、尿が尿道に排出されます。

トイレで筋肉を使っているという意識はあまりなかったのですが、骨盤底筋の一部をゆるめて、おしっこを出しているんですね。

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骨盤底筋が弱ってしまう原因は?

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骨盤の骨の形には男女で違いがありましたが、骨盤底筋にも男性と女性では大きな違いがあります。図を見て考えてみましょう。

男女の骨盤底筋

女性は骨盤の骨の隙間が広くて、ふさぐべきスペースが大きいですね。穴も男性は尿道と肛門部分の2つしかありませんが、女性はそれにプラスして腟もあるので、3つ穴が空いています。
これが内臓を支えるための筋肉だと思うと、女性は支えるべき内臓が大きいのに、支える筋肉に穴が多いのはちょっと頼りない気がします。

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男女の骨盤底筋
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男女とも骨盤底筋の機能は同じですが、女性の骨盤底筋の方が傷ついたり、弱ったりしやすい特徴があります。
出産は骨盤底筋が負荷を受ける原因のひとつで、出産回数が多いと尿漏れなどの骨盤周りのトラブルに悩む方の割合も増える傾向にあります。妊娠中の体の変化も骨盤底筋にダメージを与えます。

逆にいうと、妊娠・出産しなければ骨盤底筋は弱らないということですか?

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妊娠・出産のほかにも、骨盤底筋が弱ることは考えられます。
まず、加齢や閉経による影響が挙げられます。年をとると全身の筋肉量は減り、筋力が低下していきますが、骨盤底筋も筋肉ですから、他の筋肉と同じように弱っていきます。 また、肥満や腹圧のかかる運動なども骨盤底筋に負荷がかかります

腹圧のかかる運動?

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簡単にいうと、お腹に力が入るような動作です。たとえば、重いものを持ち上げる時や前かがみの姿勢は腹圧を高めます。便秘でいきんでいる時もそうですね。
このような動作をすると骨盤底筋を下に押し下げる力がかかるのです。

腹圧とは

上から押さえつけられると、中身が重たくなったのと同じ、ということですね。

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骨盤底筋が弱るとどうなる?

骨盤底筋を長年ハードに使ったり、骨盤底筋自体が古くなったりすることで、妊娠・出産をしていなくても弱ってしまうんですね
自分は大丈夫だと思うのですが、妊娠・出産をしていなくても骨盤底筋が弱る可能性があるのだとしたら、少し心配です。骨盤底筋が弱るとどうなるのでしょうか?

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産婦人科で扱う疾患で代表的なものを挙げると「腹圧性尿失禁」いわゆる尿漏れと、「骨盤臓器脱」があります。

くしゃみをしたり笑ったりすると、尿が漏れるというのは出産した人から聞くことがあります。これは色々ある骨盤底筋のうち、尿道を締める筋肉が弱っているということですね。
「骨盤臓器脱」というのはどういうものですか?

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出産や加齢によって骨盤が傷つき、内臓を支える力が衰えると、子宮や膀胱、直腸などが垂れ下がってきます。ときには、これらの臓器が腟のなかに飛び出してきてしまうこともあり、こうしたトラブルをまとめて「骨盤臓器脱」と呼びます。
高齢の女性や多産の方に多い病気で、下腹部や腟に何かが挟まったような違和感が生じるほか、排泄に影響も出てきます。

骨盤臓器脱とは

病気で内臓が垂れ下がってくるとはショッキングな話です。
最近よく骨盤底筋を鍛えた方がいいという情報を目にします。そこまで弱っていないと思うのですが、友達からも聞いたことがあって気になっています。
女性の骨盤底筋は男性に比べてダメージを受けやすいとのことなので、次回は骨盤底筋のトレーニングについて考えていきたいです!

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今回学んだこと

■骨盤底筋は「内臓を支える」と「排泄のコントロール」の2つの役割がある
■女性の「骨盤底筋」はダメージを受けやすい

【参照】

骨盤臓器脱の治療について | 医療法人社団實理会 東京国際大堀病院
骨盤臓器脱 | 亀田メディカルセンター ウロギネ・女性排尿機能センター
病気がみえる - チーム医療を担う医療人共通のテキスト

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