女性の健康に役立てたい、腟内フローラの遺伝子を解析する技術を開発! 女性のための検査「フェムテスト」ができるまでを深堀り取材!
女性の体をまもる腟内フローラ(*細菌叢)のバランス。私たちの大切な体の健康を左右するにも関わらず目には見えません。
細菌を検査で見える化することで“生活習慣の見直しやセルフケアに活かせるのではないか”と、さまざまな研究や検査開発技術を応用して腟内フローラ検査キットの開発をされた、株式会社ビズジーン代表の開發さん、開発担当の中邨さんにお話を伺いました。
*細菌の集まりのこと
株式会社ビズジーン(VisGene)
大阪大学産業科学研究所発のベンチャー企業。2018年に「ミル・シル・カエル」を企業コンセプトとし、アルコールの遺伝子解析から事業をスタート。病原体(細菌・ウイルス)の遺伝子解析技術を基盤に、ヒトに対する病原体の検査試薬から、動物用の検査試薬や養殖・発酵に関わる遺伝子解析技術まで幅広く技術とサービスを提供。社会に健康と安心を提供することを目指し活躍されています。2023年腟内細菌に対する遺伝子解析技術を独自開発し、セルフチェックキットである「フェムテスト」を販売開始。
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フェムテスト(腟内フローラセルフ検査キット)
腟内フローラの善玉菌(ラクトバチルス)を調べられる 検査キット「フェムテスト」
ー「フェムテスト」はどのような製品でしょうか
ご自宅で手軽に、ご自身で腟内フローラをチェックできる検査キットです。
腟内フローラとは、腟内にいる細菌の集まりのことなのですが、健康な腟内には「ラクトバチルス」という善玉菌が多く存在していることが分かっています。このラクトバチルスがたくさんいることで、デリケートゾーンのかゆみやニオイなどのトラブルを引き起こす悪玉菌の増殖を抑制しています。
さらに、海外ではラクトバチルスが妊娠率に関わっているという研究もあり、ラクトバチルスがどのぐらい腟内にいるのかを調べることができれば、女性の健康に役立てていただけるのではないかと考えました。
一般的に腟内フローラの検査キットは、ラクトバチルス以外の細菌まで併せて調べるものが多く、販売価格が2~3万円台と高額になりがちでしたが、フェムテストは「ラクトバチルス」に焦点を絞ることで検査コストを抑え「少しでも多くの方に、手軽に健康状態を検査していただけるように」と想いを込めた製品です。
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デリケートゾーンのニオイの原因は菌のバランスのせい!?「腟内フローラ」とは
「腟内フローラ」という言葉を聞いたことはありますか?腸活や菌活を意識して生活をしている方は「腸内フローラ」や「スキンフローラ」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
ー製品誕生のきっかけについて教えてください
弊社は専門性が異なるメンバーが集まっておりまして、新製品のアイデアをそれぞれから提案されるのですが、そのうちのひとつが「女性の健康」に焦点をあてたものでした。
社内調査を進める中で、妊娠率・妊娠継続率・生児獲得率に「ラクトバチルス」という細菌が影響しているという研究結果に辿り着きました。
ラクトバチルスは自分自身がヒトの体内で生きていくために、そして他の菌を増やさないために酸性の状況を作っているんですが、これがヒトの生命誕生*の成り立ちに関わるというわけです。
*妊娠の始まり、受精
弊社はもともと病原体として細菌やウイルスを解析することに強みをもっていましたので、細菌が生命誕生に対して良い働きをしていることが非常に不思議であり、面白いなと探究心に繋がりました。
女性の健康、そして妊娠の成立に影響を及ぼす、ありとあらゆる要因について明らかになっていないこともまだまだ多いですよね。
我々の得意分野である細菌やウイルスの遺伝子解析と生命の成り立ちへの関心から、社会に向けてどういったご提案ができるかなと、検討を開始したのが製品誕生のきっかけです。
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フェムテスト(腟内フローラセルフ検査キット)
専門家や女性社員との意見交換を重ね、揺るがないお客様視点で製品づくりを追求
ー開発が開始されてから製品発売までにどのぐらい時間がかかるのでしょうか?
フェムテストの場合は半年で製品化しました。社内のメンバーがそれぞれ熟練の技術をもっているので、信用性・信頼性を保ちながら、方針ができあがるまでおおよそ2ヶ月ぐらいですね。
その後「お客様はどういうものが届いたら嬉しいのか」というのを考えながらパンフレットやレポートをつくったり、産婦人科、フェムテック分野で知見のある方と意見交換する時間は長くとりましたね。
ー開発する際に一番大変だったところはどのようなところですか?
検査結果について、定量性を担保するのが一番大変でしたね。定量性というのは90%なら90%、50%なら50%と検査結果が数値ででるようにすることで、その数字がどれだけ信頼できる数字を出せるのか、という部分が難しいんです。
また、お客様にお返しするテキストやイラストなど、個人で案を固めて社内で会議に出し、女性社員からの率直な意見をもらって修正するというのを何度も重ねました。女性の手元に届いて喜ばれるという視点を大切にしていたので、納得がいくまで追求しました。
ーどのような方が購入されていますか?
30代後半の女性に一番多くご利用頂いております。2ヶ月に1回などと定期的に繰り返して検査を受けられている方もいらっしゃいますね。
またお客様アンケートを検査前に任意でお送りいただけるのですが、そこからご意見をいただいて、今後の研究や製品に活かせたらと思っています。
研究の成果がワンストップでお客様の手元に届くように
ー医療に関する分野は試験に時間がかかることが多いように思いますが、半年で作り上げられたのはすごいスピードのように思います。他にも製品や事業が同時並行に進む中でもこのようなスピードでできる秘訣はあるのでしょうか?
(代表:開發さん)
開発のスピードが早いかどうか、どこかと比べたわけでないのでわからないですが、もし早いとするなら必要なときにメンバーが集まって方向性を決める、順序立てて進めていく計画性と、それぞれの技術や知見の部分が大きく影響しているんですかね。メンバーのみなさんは弊社の宝だなあと思っています。
また、専門が違うメンバーがいるからこそ、一歩引いてみることができる。会議ではいろんな意見がでますね。
(開発担当:中邨さん)
仕事していて本当に楽しいんですよね。みんな何か必要なことがあればパッと集まって、それぞれ進めます。新しいアイデアはお風呂つかっているときやぼーっとしている時間に浮かんだりしますね。
もちろん、夜に良いアイデアだと思っていたことが、翌朝考え直すと、ダメだなとなることもあります。
(代表:開發さん)
研究をやっていると各々の興味がある分野を追求していくのは得意なんですが、その次にそれが世の中に必要とされるという段階までを構築するのは難しかったんです。
今ある製品のように、研究の技術がお客様の手元まで届いて、お客様の声が弊社に届く、正の循環ができてくるとやりがいがありますよね。
社会にもとめられているものを作りたいー 研究技術の点と点が繋がって製品化に至る
ー今後の展望を教えてください
今回フェムテストの製品化にあたり、産婦人科の医師からは、将来的にラクトバチルスの種類をさらに詳細に知れたら良いというご意見を頂きました。お客様からは、悪玉菌の中でも悪さをする主要な菌がわかると良いという声も届いています。明確に病原菌といわれているものも複数ありますから、それを全て検査するとなるとどうしても費用が高くなってしまいます。その折り合いをどこでつけるかという点で検討を重ねています。
またフェムテストは女性の健康に関わるものなので、個人のお客様だけでなく、会社などで社員の方にお配りいただくような福利厚生でご利用頂いたり、健康経営に向けた取り組みのサポートも行えたらと考えております。
弊社の理念が「ミル・シル・カエル」なのですが、見る・知るが迅速にできることは楽しく、技術が中心となり、なおかつ一般の方に反響をいただけるところはやりがいがあります。今後も社会からのニーズを把握し、解決に向けて提案を続けられたらと思っています。
まとめ
研究を専門に行われていたメンバーが集う株式会社ビズジーン。代表の開發さん、開発担当の中邨さんおふたりの優しいお人柄、社内の穏やかな雰囲気が印象的でした。それぞれの専門性が活かされ「お客様が必要とすること」を追求し、研究の成果が手元に届くまで、道を切り開いて開発を進められています。
大変な工程さえも楽しまれる度量に、確かな知見と専門性に裏付けられた信頼性、そしてお客様が必要とすることに研究を活かしたいという熱いお気持ちが次々と製品が生まれていく秘訣なのではないかと感じました。
これからも進化をし続けるビズジーンさんから目が離せません。
今回ご紹介した「フェムテスト」はピルモットECサイトでご購入頂けます。ぜひご自身の腟内状態をチェックして、今後のセルフケアにお役立てください。
開發さんプロフィール
2001年博士(理学)取得。2001年、博士研究員として米国テキサス大学サウスウェスタン・メディカルセンターにてがん細胞の遺伝子制御に関する研究に従事。2004年、英国オックスフォード大学にてウイルス遺伝子に関する研究に従事。2005年から2018年まで、大阪大学産業科学研究所の助手、特任准教授として在籍し、「ウイルス不活化分子」や「ウイルス検出技術」の設計に関する研究に従事。2010年、大学発ベンチャー企業として株式会社プロテクティアを起業して技術取締役を兼務。2018年、大学発ベンチャー企業として株式会社ビズジーンを設立し、代表取締役に就任。
中邨さんプロフィール
1999年博士(地球環境科学)取得。名古屋大学遺伝子実験施設にて助手として勤務したのち、博士研究員として名古屋市立大学等にて植物や微生物の遺伝子研究に従事。2015年より同志社大学で非常勤講師として教鞭をとりつつ、高学歴難民の道を真っ直ぐ進む。2020年より株式会社ビズジーンに勤務し、難民生活から脱却。
この記事を書いた人
性教育・フェムテック領域に興味津々な20代のメンバーで構成される、ピルモット編集部による記事です。