性交渉がきっかけで感染?不安・心配な方へ【HIVを正しく知ろう】
「HIV感染症」「AIDS(エイズ)」という疾患を聞いたことがありますか?
命を落としてしまう可能性のある怖い病気、そのように思っていたりしませんか?
今は、HIV感染の状態で早めに気づき治療のための薬を服用開始することで、ウイルスが増えないよう抑制し、エイズを発症せずに寿命をまっとうできる慢性疾患の位置付けともされています。
ただし、予防と早期発見が鍵となりますので、この記事ではHIVを詳しくまとめていきます。
HIVとは
HIVとは、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)に感染した場合に、体の中にウイルスが存在している状態をいいます。 HIVの怖さは、自覚症状がほとんどない間に、徐々に免疫力が低下し、その結果本来なら疾患に繋がることのない弱い菌やカビ、ウイルスなどによる「日和見感染(ひよりみかんせん)」を起こしてしまうほど免疫がなくなってしまうことです。
HIV感染症ののち、正しく治療が開始されないと日和見感染症を起こし、=AIDS(acquired immunodeficiency syndrome:後天性免疫不全症候群)発症となります。エイズ発症と判断指標となる疾患が23種類あり、そのうちの1つでも発症するとエイズの診断となります。 このように、HIV感染とエイズの違いは、ウイルスに感染している状態と発症している状態といえます。
HIVは一度感染すると、ウイルスが体から排除されることはありません。ただし、早めに気づき薬剤服用を開始することによって、ウイルスの増殖を抑えエイズが発症しないようにすることができます。
HIV感染は性交渉による感染が多い
HIVは、血液、母乳、精液、腟分泌液に含まれており、粘膜や傷口などから人の体に入り、感染を引き起こします。 性交渉による感染が多く、性器・肛門・口腔などから感染が起こっていると考えられます。 コンドームを使用しない性交渉による感染確率は、約0.1%〜1%と言われています。 また、他の性感染症にすでに罹っている場合、感染確率は数倍上がってしまいます。性交渉の他に血液感染、母子感染などで感染するウイルスです。
一方で、HIVは唾液や尿からは感染せず、直接人の体に入っていないウイルスは熱や消毒にも弱いため、家庭や学校・職場などの日常生活では感染しません。
この記事を見ている人にオススメ
-
性感染症なのかな?調べて安心セット
初めて性感染症検査をする方におすすめ♢
初期症状は風邪に似ていてHIV感染に気づけないことも
HIVに感染して2〜4週間経つと、発熱・咽頭痛・筋肉痛・頭痛・下痢など、インフルエンザのような症状が出る場合がありますが、この症状は数日〜数週間で症状はなくなり、何の症状も出ない時期に移行します。症状が風邪やインフルエンザに似ており、軽度のためHIVだと気づかずに過ごしてしまうことも多いです。
その後、HIVであることに気づかずに数年経過してしまうと、その間にHIVが増殖し、免疫力が低下することで、本来なら病気になることはないような弱い菌やカビ、ウイルスなどによる感染症で様々な症状が起こります。これが最初に説明したように「日和見感染」といいます。
HIV感染を防ぐためにはコンドームが必須
HIV感染の最大の予防はコンドームを正しく使うことです。
不特定多数や、見知らぬ相手との性交渉はしないという「ノーセックス」も選択肢のひとつですが、今は特定の相手しかいなくとも過去の感染可能性を考え、「今は感染していない」ということをお互い確かめておくことも大切です。
その上で、コンドームを使用することが何よりも予防に有効です。
この記事を見ている人にオススメ
-
性感染症を自宅でチェックしてみよう!
性感染症の基礎知識をまとめています。検査を受けようか迷っている方、不安な方はご一読ください。
「抗HIV薬PrEP/PEP」でHIV感染を予防する
PrEP(Pre exposure prophylaxis:曝露前予防服用)とは、HIV感染リスクのある行為に備え、予防薬としてHIVの薬を服用することでリスクを減らすという予防方法です。
服用方法は、①1日1回1錠服用する方法、②性交渉の前後に服用する方法があります。きちんとスケジュールを守って服用をすると、性交渉によるHIV感染が99%防げるといわれています。
①1日1回1錠服用する方法
②性交渉の前後に服用する方法(男性のみ)
*②の方法は主な調査が肛門性交を対象としていることや、直腸と腟内では薬剤の効果が出る時間に差があることから女性は推奨されていません。また、使用する薬剤はB型肝炎の治療薬でもあるため性行為の前後のみなどの不規則な服用の仕方では体調悪化のリスクがあるため推奨されていません。
紹介した予防方法は、性交渉する相手が不特定多数、パートナーがHIVに感染しているが適切な治療を受けていない、最近性感染症にかかったことがある、コンドームを使用しないことがある方などに推奨されています。
PEP(Post exposure prophylaxis:曝露後予防)とは、HIV感染リスクのある行為があった後、HIVの薬を服用する緊急的な予防方法です。72時間以内の服用開始が必要とされ、ウイルスが増殖するのを防ぐためにも、服用開始は早ければ早いほど良いとされています。
HIVに感染していないか確認する方法
HIVに感染しているかどうか確認するには、最初にスクリーニング検査を行い、もしスクリーニング検査で陽性だった場合は、確認検査を受けることとなります。HIVの検査は血液検査となります。
医療機関で調べることもできますし、全国のほとんどの保健所では、無料&匿名で検査をうけることができます。
こちらのサイトから検査・相談施設を探せます。
ただ、HIVは感染して1~3ヶ月のあいだは、検査で陰性と出てしまう時期があります。そのため、正しい結果を得るためには、感染したと考えられる性交渉から3ヶ月以降経過したタイミングで検査をすることが望ましいとされます。
医療機関や保健所で検査をうける時間がなかなかとれない方向けに、ピルモットでは郵送検査を販売しています。
この記事を読んでいる人におすすめ商品
-
HIV・梅毒セット
ご自宅で手軽にチェックしたい方におすすめ♢
ちなみに、通常の健康診断でHIVの検査を行うことは基本的にありません。
保健所の検査や郵送検査等でHIV陽性だとわかったら、専門の医師がいる病院で治療を開始します。こちらのサイトから病院を検索することができます。
薬を正しく服用してHIVウイルスを増やさない治療法
現在はまだHIVを体からすべてなくす治療法はありません。
しかし、治療薬を正しく継続して服用することによって、ウイルスが増えることを防ぎ、長期間にわたって普通の日常生活を送ることができるようになりました。寿命も、HIVに感染していない方と同じぐらいの長さが期待できます。この服用薬は、現在では1日1回1錠の服用になっています。
ただし、一度服用を始めると薬剤をやめることはできません。きちんと飲み続けないと、HIVが薬剤に対して耐性をもってしまい、効かなくなってしまうのです。服用の治療を開始したら、継続して治療をする必要があります。
治療が開始したあとも、特別に生活が変わることはなく、今まで通りの日常生活でお仕事、食事、運動などの制限はありません。
HIVに感染した際の生活における注意点とは
日常生活について
HIV陽性になったからといって、日常生活が大きく変わることはありません。通常の生活と同様に、食事、睡眠・休息、適度な運動、ストレス発散などをして自分の健康づくりを行います。やや異なる点としては、感染症予防にはより力を入れた方が良い点です。
ワクチン接種などもガイドラインによって推奨されているものが多くあります。かかりつけとなる専門の医師に、自身の状態や環境に合わせて接種したほうが良いワクチンなども相談していきましょう。また、医師以外にも相談窓口も上手に利用し支援団体との繋がりをもつことで、さまざまな悩みの解決や情報交換が行えます。
性交渉について
感染していても、性交渉(オーラルセックスなど粘膜同士の接触がある行為を含む)するときに注意を払えばパートナーへの感染は防げます。
性交渉をする相手に感染させない・自分が他の感染症に感染しないようにするには、どのような行為で感染するのかを理解することが大切です。
最近では、HIVの治療によりウイルスが検出できない状態を6か月以上維持できている場合、性交渉では相手へ感染しないことがわかっています。抗HIV薬の確実な服用を続けることも感染予防行動の1つとされます。
HIV陽性かどうかにかかわらず、他の性感染症を予防するためにもコンドームを使用したセーファーセックスは大切です。
まとめ
性感染症は、性交渉の経験があれば誰にでも起こりうるものです。
HIVは、今では適切に治療が開始できれば命を落としてしまうような感染症ではありませんが、治療を開始するには感染したことに早く気づくことが重要です。
また予防についても、HIVワクチンの研究は長いこと世界中で行われていますが、まだ有効性の確認ができたワクチンはありません。今回ご紹介したPrEP/PEPといった方法は状況に応じて選択肢のひとつと考えていただければと思います。 一般的で誰もが予防をできる方法としては、コンドームを使用した性交渉です。 HIVだけでなく性感染症全般とともに予防を行いつつ、万が一の感染に備えて定期的な検査で早めに気づくことが大切です。
【参照】
HIV検査相談マップ拠点病院診療案内
PrEPの基礎知識-国立国際医療研究センター
この記事を書いた人
助産師。1992年生まれ、東京都出身。 大学卒業後、国立系の病院で5年間助産師として勤務。その後、内科のクリニックグループにて運営・新規開院、ピルオンライン診療立ち上げに携わる。現在は(株)つばめLaboにて女性の健康をサポートするためのサービス開発に従事。